八笑多製作所

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書評「雲居、お酒やめるってよ」

作者:雲海 さん
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=49442185

仏教には「五戒」という、信者が守るべき物事があります。

・不殺生戒:生き物を殺してはいけない
・不偸盗戒:他人のものを盗んではいけない
・不邪淫戒:乱れた性行為を行ってはならない
・不妄語戒:嘘をついてはいけない
・不飲酒戒:酒を飲んではいけない

当然、命蓮寺でも五戒は守られているはずです。
……はずなのですが、ここは幻想郷。
年がら年中、宴会を開き、酒を飲み交わす輩が集う場です。
当然、五戒の一つ、不飲酒戒を守っていない仏教ともいるわけで……。
この話は、我を忘れるほど酒を飲んでしまった仏教徒、雲居一輪の物語です。


我を忘れるほど飲み明かして、気がついたら布団の中。
隣には、素っ裸の、白蓮と神子。
これには一輪もパニック!!
次いで起きた神子に、説明を求めます。

そして明らかになる、一輪の恥の数々!!
この一輪、飲酒以外にも、不妄語戒、不邪淫戒はやらかしています。
不殺生戒もちょっと怪しい。
あと少しで五戒を全て破る乱れっぷりでした。

でも、お酒を飲まなければ、白蓮に甘えられなかったのはあるんじゃないかな、と。
基本的には真面目で、融通の利かない所がありますし。
人間だった頃の話もまた然り。
元人間だとされていますが、人間だった頃の話があまり出てこないのは、彼女にとって何かしらトラウマがあるかもしれませんしね。

一輪に昨夜の出来事を語る、神子もいい性格をしていました。
演技がかった口調で語り、話す度にビシッとポーズを決める。
それでいて雄大な包容力も合わせ持っています。
この神子、「全ての女性は私の嫁」とか言い出してもおかしくはありません。

読み返してみると、神子がしきりに「胸」の話を振っていましたね。
一輪の最大の罪を、自力で思い出させようとしたのでしょう。
自分の胸の話を一度もされなかった腹いせかもしれませんけどね。


全編ギャグ調で、オチもしっかり。
楽しんで読ませていただきました。


最後に、一輪の悪行を語りに語った神子には、これだけは言いたい。
可及的。
迅速に。
服を着ろ。服を。

東方 雲居一輪 豊聡耳神子 東方版深夜の真剣書評60分一本勝負

書評「Super Speed Starters」

作者:からあげ太郎 さん
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=47408575


「幻想郷最速」といわれる射命丸文。
人間最速の霧雨魔理沙は、「幻想郷最速」を倒すべく文に挑みます。
しかし、その最中に河城にとり宅に墜落してしまい、勝負は中断。
すったもんだがあった後、「幻想郷最速」に、今度は魔理沙とにとりがコンビを組んで挑戦します。


文は「幻想郷最速」について、淡白な考えを持っています。
本気で飛べば誰も追いつけない。
だから、本気を出す必要はない。
「幻想郷最速」という称号にすら、こだわっている様子は見られません。

では、文は本気になれず腐ってしまったのか。
文は「新聞作り」という別の事に、本気になって取り組むようになりました。
びっしりと書き込んだ取材手帳が、それを証明しています。
しかし、それでも「本気で飛んでも意味がない」といういらだちは、文を蝕んでいるようで……。


一方、にとりは本気になって発明に取り組んでいます。
「幻想郷最速」に自分の発明が通用するか試したい。
そんな思いから魔理沙とコンビを組み、「幻想郷最速」に挑みます。

食事の暇も惜しんで、研究に没頭して。
とんでもない発想にも敬意を表して、様々な技術を取り込んで。
遂には、箒と呼べるかどうか怪しい、滅茶苦茶な箒を完成させます。

にとりの手帳といわれた、漫画の途中で出てくる謎の物体。
これは「ML500」という、リニアモーターカーの実験車です。
人間が本気になって最速を目指した乗物であり、実験では最高速度時速517kmを叩き出したそうです。

あとがきでも触れられていますが、この車両は実験を終えた後、交通科学博物館に収蔵されました。
しかし、2014年4月6日に交通科学博物館は閉館。
ML500も、所在知れずとなりました。
取り壊されたか、幻想入りしたか……。
新設される鉄道博物館があるようなので、そちらに転置されているといいですね。


再戦当日。

文は当然ながら本気を出そうとしません。
それどころか、速さの源である天狗の扇すら手放してしまいます。

魔理沙とにとりは本気も本気。
無茶苦茶な箒に、事前準備も万全で、文に挑みます。

余裕の文、本気の魔理沙とにとり。
はたして勝負の結果はどうなるのか。
読んで、確かめてください。


この本のテーマは「本気」だと思います。
本気になって取り組むことがどんなに素晴らしい事なのか、教えていただきました。
魔理沙も、にとりも、文だって、本気で物事に取り組んでいます。
本気になった物事の結果には、自らが助けられる、自らの救いになる事だってあります。
特に、最後の魔理沙とにとりの志、最後の文の表情に心を打たれました。


自分も、制作者の一人です。
本気になって、制作に取り組んでいこうと思います。

東方版深夜の真剣書評60分一本勝負 東方 射命丸文 河城にとり 霧雨魔理沙

書評「椛ノリノリ」

作者:久々さん
http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/163/1330792841

射命丸文と犬走椛は仲が悪い。
そんな設定が出た時は物議を醸しましたが、それを逆手に取った掌編です。

この椛。とにかく文が嫌いで嫌いでたまりません。
白狼天狗と烏天狗。
下っ端である椛と、上司の文。
排他的な天狗社会を甘んじて受け入れる椛と、天狗社会に縛られつつも自由を謳歌する文。
対照的な二人は、顔を合わせる毎に喧嘩腰になります。

椛は、事ある毎に突っかかってくる文を拒絶しようと、口八丁手八丁で言いくるめようとします。
理にかなう意見を並べ、文が反撃する余地など無いよう、まくしたてて言い負かそうとする。

しかし、椛がそんな言動を取るのは、文も熟知しています。
椛が好む事を、言葉も少なく、最速で実行する。

悪友、腐れ縁、そんな関係が似合う二人でした。
不仲だといわれていますが、喧嘩するほど仲がいいというように、実際はそれほど嫌っていないのかもしれませんね。
弾幕アマノジャクでも、文、椛、はたてと、三人そろって正邪を追っかけていましたし。

さて、いろいろと書きましたが、ここで一番伝えたいことは何かというと。
ノリツッコミする椛かわいい。

東方版深夜の真剣書評60分一本勝負 東方 犬走椛 射命丸文

書評「ひゃっはーの気持ち」

作者:真四角ボトムさん
http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_p/92/1352402535


幻想郷には、外の世界では忘れ去られた、様々な物が流れ着きます。
漫画もその一つで、某世紀末救世主伝説が幻想入りしてもおかしくないわけで。
タイトルでわかる方もいると思いますが、その漫画を読んでしまった、鍵山雛の小話です。

鍵山雛は、人間から厄を集める厄神様です。
厄を集めるのが生業といってもいいでしょう。

そして、某世紀末救世主伝説。
秩序が滅び暴力が支配する世紀末において、弱者を襲い災厄をばらまく悪漢が、これでもかと登場します。
彼らは何故厄をばらまくのか。
彼らは何故「ヒャッハー!」と叫ぶのか。
雛が、それらを理解して厄集めに役立てたいと思ってしまったのが始まりでした。


「ヒャッハー!」を理解しようと努力する雛が、もうかわいくてかわいくて。
どうしてこんな叫び声をあげるのか理解しようと、声真似を始めます。

最初は小声で、周囲を気にしながら細々と。
恥ずかしがりながら、厄集めに必要な事だと自分に言い聞かせて。

次第に声を荒げていき、漫画の迫力に近づいていきます。
気持ちも高ぶっていき、まわりも見えなくなり、遂には……。


文章量は少なく、サクッと読めますよ。
雛の健気さに、思わず頬も緩んでしまいます。
パロディものが苦手でなければ、某世紀末救世主伝説をご存じならば、是非に。

東方版深夜の真剣書評60分一本勝負 東方 鍵山雛

書評「源平創想話」

作者:平安座さん
http://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/191/1386167275


九十九姉妹は、平家物語をモチーフにしたスペルカードをいくつか使います。
平曲「祇園精舎の鐘の音」、琴符「諸行無常の琴の音」が代表的ですね。
当然本人たちも平家物語を熟知しているのですが、幻想郷ではいまいち平家物語が認知されていないようで。

「平家物語ってのは知らないけど、平家は源氏に負けたんでしょ? だったら源氏物語の方が強いって事じゃない。負け犬に用は無いわ」
こんな意見を受けて憤慨するかと思ったら、姉妹は姉妹で源氏物語を知らなかった。
源氏物語に興味を持った二人は、早速源氏物語を読みふけります。

そして始まる暴走劇。
源氏物語から明らかになる九十九姉妹の真実!
本来の姉妹のあり方を求めて迷走する八橋!
それに対してボケとツッコミで切り抜ける弁々!
この二人の暴走を止められるのは、やっぱり紅白が眩しいアイツなのか!?


源氏・平家物語からの引用が随所に出てくるのですが、それを知らなくてもすらすらと読めてしまう文章には感動しました。

ギャグテイストの文章に加え、パロディネタの数々も読みやすさに一役買っています。
その数は、大小含めて把握しきれないほどありますが。
ブロントさん、あまちゃん、某ハイスピードメカアクション等々。
元ネタが全部わかる人、いるのでしょうか。

それでいて、キャラクターの個性をとても大切にしているのが素晴らしい所。
九十九姉妹だけでも、義理の姉妹、八橋の妙な口調、本体の楽器、音符弾幕。
それ以外にも東方ネタを、これでもかと突っ込んでいます。
このSS、東方への愛にあふれています。

あとがきにもありますが、源氏・平家物語に興味を持つ切欠になりそうな作品でした。
ただし、物語を読もうとすると、暴走する九十九姉妹が強制的に連想されてしまう破壊力にもあふれていますが。
当然ですが、九十九姉妹に興味を持つ切欠にもなりますよ。

細かいことは抜きにして、おもしろおかしく読めるのに、随所に小ネタが散りばめられている。
そんな作品でした。


最後に。
タグに「パルスィ」とありますが、一見関係の無さそうなこの方、実はこの物語の最重要人物です。
どう重要なのかは実際に読んで確かめてみてください。

東方版深夜の真剣書評60分一本勝負 東方 書評 九十九姉妹 九十九弁々 九十九八橋 水橋パルスィ