被災現場を上空から視察する菅直人首相=2011年3月12日午前[内閣広報室提供]【時事通信社】
こうした事態に苦悩を深めた菅首相は、事務次官会議を事実上復活させた。これは民主党が政権の座に就いた際に、「政治主導」の名のもとに廃止した会議である。ようやく官僚の知恵を使わねば、この危機を克服できないと思い至ったのかもしれない。また、苦し紛れに自民党に連立を打診したほか、次から次へと有識者を首相官邸に呼び込み、その一部の人材は内閣官房参与として登用した。
しかし、多くのマスコミが指摘しているように、すでに菅首相は限界ぎりぎりの状態である。東京電力本店に直接乗り込んだほか、原子力安全委員会の班目春樹委員長を呼び出して叱責したり、首相周辺によれば、閣僚や官僚を怒鳴りつけたりしているのだという。これでは、危機にあたって冷静で的確な対応など、望むべくもない。
こうした菅首相の言行に対しては、野党の自民党からさえ、「私どもは、むしろ菅首相しっかりせよ、と言うことが今一番必要なのではないかと思っている」(小池百合子総務会長)と心配する声が上がっている。
もはや、今回の国家的危機への対応は菅首相の能力を超えている。菅首相には早々に退いてもらい、国民新党の亀井静香代表が提唱しているような与野党を幅広く糾合した「救国内閣」を樹立して、国難を乗り切る――そのための方法を考え始めなければならないのかもしれない。
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