SIer社員はいくら稼げばよいか

次の2つのエントリを読み、香川晋平氏の書籍も読んでみたいと思い、購入。

  1. 「デキるつもり」の自称・黒字社員に身につけさせたい「絶対黒字感覚」 (1/2) - ITmedia エグゼクティブ
  2. 黒字社員、赤字社員を見抜く方法 | ブクペ

1番目のエントリの内容は、この書籍の“導入”というよりも“骨格”(かなり荒っぽくまとめてある)。で、前々から、自分はいくら稼げばよいのかを数値で知りたかったので、この機会に算出しておく。

1. 準委任の場合

システムを(準)委任契約(いわゆる期間売り)で開発していて、年収が600万円の社員の場合を考える。書籍によると固定費がよくわからない場合には、年収の3倍で考えればよいとあるので(実際に2〜3倍だし、よく聞く話だし、違和感もないし)、次のようになる。

  損益分岐点売上高=固定費=年収600万円×3=1,800万円

年間に1人で、これだけ売り上げないと、黒字社員になれない。80%くらいの稼働率(年間の20%の活動が直接年度の売上に貢献できない)とすると、

  1,800万円÷0.8÷12ヶ月≒190万円/月

厳しいなぁ。。人月200万円近くで売ってこいってね。

2. 委託の場合

だいたい1億円くらいのシステム開発委託契約(いわゆる一括委託)で受注して、その開発に(平均して)人月50万円のパートナーさん5人を1年間使うような、そんな会社にいて、年収が600万円の社員の場合を考える。なお、開発環境などは共用のモノを用いるとして、固定費に含める。
この時、この会社の限界利益率は、次のように70%とわかる。

  変動費=50万円/月×5人×12ヶ月=3,000万円
  限界利益=10,000万円−3,000万円=7,000万円
  限界利益率=7,000万円/10,000万円=70%

ちなみに、(書籍でも紹介されていた)『TKC経営指標』BASTによると、中小企業における受託開発ソフトウェア業の限界利益率は70%程度*1らしい。70%という数字が合ったのは、本当にたまたまだが。
で、損益分岐点売上高は次のようになる。

  損益分岐点売上高=1,800万円/0.7=2,570万円

(パートナーさんとあわせて)年間2,500万円くらい売り上げろってこと。1億円で1年間くらいの開発案件なら、年収600万円クラスの社員は、どんなに多くっても4人までだなぁ。

A. 補足

損益分岐点売上高の求め方について、ちょっとだけ補足しておく。総費用が操業に対して線形に増加する場合、つまり次図のような場合を考えている。これは、よくある図だと思う。

一応、(1)式と(2)図の両方から、損益分岐点売上高を算出する式を導出しておく。

(1) 式で求める

売上をS、変動費をVC、固定費をFC、利益をP、変動費率(VC/S)をαとする。

 S = VC+FC+P
   =αS+FC+P

 S =(FC+P)/(1−α)

Pがゼロの時のSが損益分岐点売上高なので、次のような式で求まる(限界利益率=1−α)。

 S = FC/(1−α)

限界利益がゼロだったら、損益分岐点売上高は固定費そのもの。変動費があるのだから、固定費を限界利益率で割って、変動費分をのっけただけ。

(2) 図で求める

売上線が45度線の場合を考えるとわかりやすい。そうすると、総費用線の傾きが(ぴったり)αになるので、次の図のような比になることがわかる。

で、固定費 1−α に対し、損益分岐点売上高が 1 なので、固定費/(1−α) となる。