Book Review!


作者:大和 岩雄

レビュー: 箸墓は卑弥呼の墓か (単行本)

 「邪馬台国は二箇所あった」という著者の説はユニークである。卑弥呼は九州の女王国の王であり、宗女の台与が大和の邪馬台国へ遷都したという。これを『魏志』の選者が明確に区別せず記述したため後世の読者が混乱しているということだ。著者はその根拠を『魏志倭人伝中の「女王国」と「邪馬台国」が使用された文脈から分析していくが、その深読みに半分は感心しながらも、半分は正直言ってついていけなかった。ほとんど小説的な想像の世界のできごとのように思えた。そういう意味ではおもしろく楽しい。
 著者は箸墓古墳は台与の墓だとする。その根拠は古墳の造営が3世紀後半とする説である。本書が刊行された2004年はその説がまだ有力であったが、現在は3世紀中ごろ説に大勢が移ってきている??!
?うである。これを認めるなら著者の説は根本的な再考に迫られると思うがどうだろう。
 アマチュアを自認する著者は、歴史学者や考古学者の見解、文献史料、考古学資料を博捜して、ブロックを積み上げるようにそれらを引用して自説を組み立てる。その手際は鮮やかであり分かりやすく、知的好奇心を大いに満たしてくれる。これがこの著者の本を読むもうひとつの楽しみである。 


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