■奥野新監督のもと、攻撃的なスタイルをシフト

大分を迎えた第3節、今季ホーム初戦のこと。山形が3-0とリードした85分に相手が負傷退場し、1人有利になってから2失点を喫した。2失点のインパクトが強く、とらえ方によっては後味の悪い勝利のあと、奥野僚右監督の会見の第一声は「今日、勝点3を取ることができて本当によかったと思っております」だった。そして、こう続けている。

「みなさんおっしゃりたいことはわかります。89分と90+1分というところで失点をし、それも相手が一人少なくなってからの状態です。前半のアディショナルタイムが3分あったことを含めて考えると、まだ90分に少しだけ自分たちの体力的な部分であったり、集中を持続させる部分が足りなかったかなと。キャンプから継続してきたなかで、その時間というのがかなり延びてきた。それをとても実感していてうれしく思います」

この大分戦から始まったホームゲームで、山形は5勝2分けといまだ負けなし。連戦を終えた13節時点での戦績は9勝2分け2敗、勝ち点29で首位に立っている。昨季J1で最下位での降格を受け、コーチングスタッフとプレースタイルを一新した山形は、攻撃的にシフトした新スタイルを、模索しながら自らのものにしようとしている。

■J1復帰を目指す山形の、3つの特徴

大分戦後の奥野監督のコメントには、1年でのJ1復帰を掲げて再出発した山形の特徴が示されている。

ひとつは、勝利至上であること。もっとも大事なことは目の前の1試合1試合に勝利することであり、そのための準備をすること。中2日の4連戦を迎えても、奥野監督はその点を強調し続けた。負傷などで選手が欠けるときのことを心配をすると、「そうなったら、そのときいる選手で考えればいい」。囲み取材で事あるごとに確認してきたが、奥野監督の発言は一貫している。

2つ目は、常にポジティブであること。プレー中のミスは「気にするな」と諭し次のプレーに向かわせることはもちろん、終わった試合でのミスに関しても必要以上に振り返ることはしない。自分たちの長所をいかに出していくかに主眼を置き、悪いイメージを記憶の中に住まわせない。

3つ目は、積み重ねを重視していること。大分戦の2失点もそうだが、逆風で失点した岡山戦、立ち上がりで失点した横浜FC戦(第7節)など、ミスを振り返らないとは言えども修正すべきは修正してきた。ここでは詳細を記さないが、トレーニングメニューもバリエーションをつけるなど工夫しながら、本来地味な技術練習を続けている。「毎日コツコツと積み重ねていって…」「毎日やっているわけですから、これ以上、下手になるわけがない」なども奥野監督からよく聞かれるコメントだ。

■勝負強さが際立つ戦い

この3つの特徴は、今季の「勝ち方」についても遠くない要因になっている。

連戦終了時の9勝のうち、2-0で勝利した東京V戦(第11節)以外の8勝が1点差。北九州戦(第9節)のようにワンサイドの内容ながら決定力を欠いての1-0もあれば、終盤に決勝点を挙げたもの、逆転に成功したものなどバリエーションは豊富だが、総じて見れば「勝負強さ」が際立っている。

試合運びや得失点差を考えれば点差をつけての勝利が望ましいのは言うまでもないが、それは力がそこまで及ばなかったということ。ただし、ラッキーな試合をたまたま続けてきたわけではない。競った試合をモノにできる力があるからこそ、ここまでの好成績につながっているのだ。

では、なぜ山形が競り勝てるのか。それは、ピッチ上の選手たちで状況を判断・解決できる能力が身についてきたことに他ならない。これこそが、昨季との最大の違いであり、今季最大の特徴と言っていい。