「下痢は体の中にある細菌を出す行為だから、下痢止めで止めてはいけない」というのが、近年では「常識」として知られるようになった。
だが、こうなると、「下痢止め」のクスリという存在が、そもそも不要なんじゃないかとも思えてくる。


「下痢止めを使って良い下痢」と「下痢止めを使わないほうが良い下痢」とは、どう違うのか。
『ここ10年で、これだけ変わった! 最新医学常識99』(祥伝社黄金文庫)著者で、医療法人社団池谷医院院長の池谷敏郎先生に聞いた。

「下痢を止めてはいけないのは、ウィルスや細菌の感染が下痢の原因となっている場合。原因となるウィルスや菌を便と一緒に体外に出そうとしているのに、それを止めてしまうと、よけい具合が悪くなってしまうのです」
これは近年、よく言われるようになった下痢に関する常識。では逆に、「止めても良い下痢」はあるのだろうか。
「いわゆる『下痢止め』を使っても良い下痢は、冷えによる下痢や、一時的精神的ストレスや睡眠不足などによる下痢、過敏性腸症候群など、『非感染性の下痢』ですね」

下痢止めを使って良い場合と、使わないほうが良い場合と、どこで見分けるかというと……。

「感染性の下痢の場合は、糞便中に細菌やウィルスが含まれていますので、その場合は、下痢止めの使用は控えましょう。逆に、明らかにストレスがあったり、慢性的な下痢であったり、過去に同じような症状が何度も繰り返されているときは、『非感染性の下痢』ですので、下痢止めを使っても良いかと思います。過敏性腸症候群の場合は、市販薬には男女ともに使えるものがありますが、医療機関のみで出される特効薬(イリボー)は男性のみの保険適応となっています」

「下痢は、体にとって必要なことだから、むやむに止めてはいけない」は事実。ウィルスや細菌の場合だけでなく、熱いモノ・辛いモノの刺激による場合も、やっぱり下痢は必要が起こっている行為だという。それでも、下痢止めを使う意味って?
「風邪をひいたら熱が出るのと同じで、本来は、体が下痢によってバイ菌を排出することを必要としているから、むやみに止めるのは生理に反する行為ではあります。でも、下痢は日常生活においてやっぱり不便ですし、脱水症状になりますし、長引くと体力もなくなってしまいます。
安易に止めるのは良くないのですが、下痢止めを使って良い場合には上手に取り入れて、快適な生活を目指すと方法も良いと思いますよ」

カラダにとって必要な行為・下痢。しかし、水分をとることも難しいような強い下痢の場合はもちろん、慢性的に繰り返す下痢であっても腸の病気が原因のこともあるので、医療機関に相談を。
(田幸和歌子)