菅代表再選

久々のブログ更新ですみません。今回の代表選について思うところをつらつらと。

代表任期の提案

自民党の総裁選挙を倣って作られたと考えられる民主党の代表選挙であるが、政権与党になり代表が総理大臣を務めることを前提にしたシステムとしては問題がありやしないか。現在の代表選出の仕組みでは、前任者の残りの期間を務めるという規定になっているという点がもう少し議論されても良い。

ちなみに、民主党代表の任期は2年であり、慣例的に臨時国会が開催される9月を起点としている。ただし、「任期途中で代表が欠けた場合」は前代表の残期間が任期になる。というのが基本的ルールだ。なお、「任期途中で代表が欠けた場合」の選出方法は両院議員総会による議員投票のみによる場合と代表選挙規則に基づく選挙の両方がが選べるはずだが、これまで代表辞任に伴う選出で正規の選挙が行われたことはない。その結果、党員・サポータ票を含む正規の選挙によらない新代表では正統性に欠けるから、残任期の終了とともに正規の選挙を行うという理屈は一応筋が通らないでもない。だが、今回のように名前も覚えられないうちに、総理大臣がどんどん変わっていくご時世にそのような制度で国益に叶うのかどうか?という疑問は残る。
おそらく両院議員総会による決定を行う最大の理由は投票の手続き的コストだと思う。ならば党員・サポータ、地方議員による電子投票を導入しても良いのではないだろうか。
その上で、代表辞任に伴う選出は正規の選挙のみ委ねて、その上で代表期間をせめて残期間+1年程度の制度にしたらよいのではないかと思う。
もっとも、総理が交代するような事態に至るにはいろいろな事情があり、やむを得ないケースがあるのも致し方ない。今回鳩山氏が辞任したケースは、本人の政権運営の能力はともかく、外形的には連立離脱という事態に陥った以上まだやむを得ないケースになる気がするのだが。

小沢氏の立候補には驚く

個人的には小沢氏の立候補は全く想定外だった。shuugi.inでは次期総理大臣を予測するマーケットを準備しているが、菅総理の就任に伴う次期総理市場では、小沢氏を銘柄としていなかったのは失敗だった。

しかし、後付ながらいろいろ考えてみると、小沢氏の立候補には民主党に取って、あるいは小沢氏自体に一定の合理性があるような感じがする。
最大のメリットは、民主党によるメディアジャックにより他党の存在感を消滅させたことだ。代表選中に自民党は石原幹事長、小池総務会長という比較的世代交代を意識した人事を行ったが印象は薄くなった。
さらに、あれほど選挙上手な小沢氏がいま自分が選挙で勝てると思っていたとも考えにくい部分がある。とすれば、負け戦前提で考えていたとすると、明らかに菅総理の次を見据えた戦略であると考えるのが妥当ではないだろうか。国会運営の困難な菅体制が長く続くとは考えにくいという事情もある。今後の強制起訴次第のところもあるが、それが無難にヤマを超えた場合に、自分の番が回ってくるという解釈も可能だ。さらに、このまま何もしないよりは、自らの政治的影響力も一定の範囲で担保されるだろう。だが個人的には小沢氏はそういう政局を見ながらも、民主党全体、つまり菅総理の政策遂行に一定の疑問を感じていたのも事実だろう。世論で菅総理の政策遂行能力に疑問符が付き始めたこともそれを後押しした。直接批判した小沢氏に限らずとも、菅総理の予算10%削減という方針はいかにも従来の財務省的なやり方で、政治主導を主張していた民主党からすれば後退と受け止めざるを得ない側面がある。さらに、小沢アレルギーの強いと報道されている執行部から小沢グループのメンバーば排除されうるような闘争的側面が垣間見られれば、グループ(派閥)の代表として動かざるをえないのかもしれない。

民主党は分裂するか

党の分裂が一部のマスコミで話題になっているが、おそらく無いだろうし、あっても少数の離党にとどまるだろう。
小選挙区制による衆議院選挙が定着する前であれば、つまり自由党が存在していた頃の政治環境であれば、第三の政党にもそれなりに当選する余地があっただろう。だが、今日自民党民主党の全国の地域的な地盤はそれなりに拡充されつつあり、いずれかの公認候補にならなければ小選挙区を勝ち抜くことは相当難しくなりつつある。重複立候補による復活保険を含めるとなおさらだ。その点でみんなの党はどちらかと言えば自民党の支持基盤を侵食していると見るほうが妥当ではないか。自公連立が成立しなくなった公明党小選挙区で厳しいことは言うまでもない。
その点で、小沢グループに多いとされる民主党の若手が割って出たとしても厳しいだろうし、その点で離党者も限定的ではないだろうか。もっとも、今回小沢氏を支持した民主党若手にそのような合理的な発想ができるかどうかはよくわからないところもある。

菅総理の今後

代表選最後の演説を聞いても、どのような政策を取っていくのかはよくわからなかったのは残念ではある。ただ従来通り、様々な意見を取りまとめて進めていく日本的なリーダーになるだろう。それは財務省の方針かもしれないし、小沢氏の考える政策かもしれない。個人的には、菅原さんも分析しているように(参照)、構造改革路線が本来の支持層である都市部の有権者の支持をえるという点で民主党に望ましい政策だと考えるが、過去に反対したという経緯的理由に制約されて、選挙目当てに作成したマニフェストの政策を継続していくのは危うい橋のように感じる。小泉元総理のように、都市部の有権者の支持する政策を追求して、一部の国会議員を敵に回してでも世論の後押しを元に政権を進めていくのが、政権の安定という点では望ましいのではないだろうか。その点で挙党一致というポリシーは望ましくないとも言える。劇場型政治が望ましい訳ではないが、政権運営という点ではもっとも効果的な方法だろう。
これは個人的な嗜好だが、財源を捻出するための事業仕分けも必要ながら、新産業振興や行政の無駄を省くための様々な規制緩和が求められているのではないかと考えている。つまり不要な規制の仕分けが必要だ。不要な規制を緩和するのはお金もかからない。もっとも、不要な規制を手っ取り早く減らすためには、地方に権限(と財源)委譲する制度の検討が根本的な解決策の一つだと思う(もちろん制度の設計によるが)。その点で小沢氏の一括交付金化の推進という主張には、それなりに首肯する部分があった。