■関東地方及び、被災地“以外”の方へのお願い。

私は高知県にある物流会社に勤めています。
私の勤めている所は、本当に田舎です。
一日あたり、平均すると普段は10~15個程度しか荷物の発送がありません(窓口のため、集荷は除きます)。
繁忙期(年末年始など)でも、多くて一日平均30個程度、最高でも50個程度しか引き受けたことがありません。

東北・太平洋沖地震以後、多くの荷物をお預かりしております。
今日だけでも、私が帰るまでに30個程度お引き受けしました。
宛先の大半が「東京」「神奈川」などです。
いつもであれば、他の都道府県混ざって「10~15」個程度。
今日は、お引き受けした荷物の8~9割が「東京」「神奈川」などの関東地方となっております。
しかも多くの荷物の大きさがいつもの倍です。
最小~中サイズではなく、大~最大サイズで送られる方が半数以上です。

考えてください。 高知は自慢ではありませんが、とても田舎です。
田舎でこの現状です。
それが、もし高知県全部・四国全部・関西、西日本全部で起こっているとしたら、恐ろしい量になります。
現実、関東地方への荷物は配達遅延が発生しております。
震災直後は「半日~1日程度」でした。
昨日は「2日~3日程度」でした。
それが今日、とうとう「いつ配達可能か答えられない」という状況になっています。
お客様には「遅延承知」及び「内容物の保証ができない(生鮮食品などが腐っていても補填できない)」ということを承知の上で、お荷物をお引き受けしております。
「それでも構わないから送ってくれ」という気持ちはとても分かります。
ただ「当面の生活に本当に必要なもの」だけ送っていただけないでしょうか。

もっと言ってしまえば、こうやって荷物を送られる方の大半が
「現地(東京などの関東)に物がないから送ってくれと頼まれて、送っている」
とおっしゃいます。
つまり「買いだめ」の結果、流通まで麻痺しそうになっています。
本当にお願いします。
「買いだめ」をやめて下さい。
必要なものを必要なだけ買って下さい。
すぐに必要のないものは、必要な誰かに譲ってあげて下さい。

流通が滞るということは、被災地への流通も悪くなる一方です。
道路が混雑するなどで、救助隊や必要物資などが被災地へ到着するのが遅くなってしまう可能性もあります。
「買いだめ」をやめることによって、流通が正常化しやすくなります。
流通が正常化すれば、被災地への物流もよくなります。
被災地だけでなく、関東への物流が正常化すれば、スーパーなどのお店にきちんといつも通りに商品が並ぶようになります。
(そもそも関東は企業の拠点が多いので、わざわざ地方から送らなくとも「普通の量」であれば、十分供給できるはずです)
「買いだめ」は悪循環しか生んでいません。

現在、流通会社の所有しているトラックは、一部被災地へ救援物資を送るよう政府から要請があり
いつもより少ない台数で、どこの流通会社も営業をしています。
そのことも含め、関東地方への配達遅延が発生しています。
どうかお願いします。
どこの流通会社も配達したくなくて、していないわけではないのです。
配達したくても、出来ない事情というものがあります。
いつも以上に引き受けている荷物を配達する人も足りません。
燃料だって「買いだめ」が発生したため配送用トラックさえ動かせないという状況になります。

被災地宛の荷物を送ることをご希望される方。
「どうして送れないんだ」と言われる方がいらっしゃいます。
正直に言います。
配達できる人がいません。
配達拠点であった支店・営業所が「消えてしまった」場所だってあります。
未だに現地の社員の何人・何十人、下手をすれば何百人とも連絡が取れません。
そんな中「どうして送れないんだ!被災地で凍えている友人に死ねというのか!」と怒らないで下さい。
私だって送れるものなら、何個でも、何百個でも送りたいです。喜んでお引き受けして、届けたいです。
けれど、できないのです。
私たちのかわりに、自衛隊や消防・警察、海外の救助隊の人たち、それに被災地の方々が頑張ってくれています。
どうかその点を、ご理解下さい。

停電も地震も何も起こってないから、そう言えるんだ。
どれだけ、友人・知人が食事を、医薬品を、毛布を欲しがっているか分からないから言えるんだ。
そうかもしれません。
東北地方・関東地方の方の気持ちは、ハッキリ言ってしまえば私には分かりません。
想像はできても、それはあくまで想像で、現実ではありません。
唯一分かっているのが、「私は何もできない」ということです。
何もできません。現地へ行って、人を助けることも、励ますことも、食料を持っていくことだってできません。
そんなことを「何もできない私」がすれば、迷惑だからです。

最後に一つだけ言わせて頂ければ、私は物心ついた時から、ずっと「南海(東南海)地震が起きる」と言われて育ちました。
地震後、被災地を姿を見るたび「明日は我が身かもしれない」という恐怖がずっと続いています。
正直、仕事をしている最中も、泣きそうになります。
けれど、仕事をしなければお金は手に入りません。
お金がないと、生活できません。
生活ができないということは、募金だって、食事だって、旅行だって、なにもできなくなります。
「何かをしたい」と思ったときに、今以上に何もできなくなってしまいます。
だから、被災地へ行けない代わりに働いているんだ、と言い聞かせています。

無理を承知、当事者ではありませんが、お願いです。
「買いだめ」を止めてください。
私の友人・知人も「救援物資」という命綱を待っているのです。
その命綱を、どうか私たちの手で途切れさせないで下さい。
お願いします。


2011/03/16
2011/3/15すみません、日付間違えています。3月16日に書いた文章です。
サカナ(
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