えげつない……20世紀の女性活動家たちが受けた嫌がらせ

    ロンドン博物館で2月2日から3月27日まで、新しい展覧会「Vote for Women」(女性参政権)が開催されている。この展覧会の学芸員は、当時の殺害予告やヘイト・メールは間違いなく、今の女性政治家がFacebookやTwitterで受ける脅しと同じようなものだった、と話した。

    1909年に投函されたこのはがきは、これまで公開されたことがなかった。女性の参政権獲得に向けて活動していた人々が当時、いかに敵意に満ちた嫌がらせを受けたかを物語っている。

    「パンクハースト様と仲間たちへ」と宛名が書かれたこのはがきは、ロンドンのリンカーンズ・イン法曹学院にあった女性社会政治同盟(女性の参政権を求めるグループの正式名称)本部に送られたものだ。

    はがきには次のように書いてある。「吐き気がする馬鹿どもよ。家も、夫も、子供も、親類もいないなら、溺死でもして消えてくれないか?」

    このはがきは、ロンドン博物館が所蔵している。労働党の「影の内閣」は2月6日、30歳以上の女性に参政権を認めた人民代表法の可決から100年経ったことを記念して、ロンドン博物館で始まったばかりの展覧会を訪れた。

    エドワード王朝の時代にこのようなはがきを送る行為は、今でいうソーシャル・メディアで何かをシェアするのと同じ感覚だった、とロンドン博物館の社会史および労働史の学芸員であるビバリー・クック氏はBuzzFeed Newsに説明した。

    クック氏は、このような殺害予告やヘイト・メールは「間違いなく」、今の女性政治家がFacebookやTwitterで受ける脅しと同じようなものだった、と話した。

    オンラインで性差別的な嫌がらせや人種差別的な嫌がらせを受けている女性政治家には、ダイアン・アボット影の内相やステラ・クリーシー労働党議員などがいる。

    ツイッターで煽り行為をしていたユーザーは2014年、クリーシー議員にレイプの脅迫ツイートをしていたことで禁固刑の判決を受けた。クリーシー議員は、展覧会に展示されているはがきは、現代のオンライン上で巻き起こるヘイト・スピーチを連想させる、と言う。

    「女性が政治に参加するという考えが生まれて以来ずっと、人々は女性を民主主義の輪に入れないように支配して脅そうとしていた、ということを証明していると思う。どんな媒体が使われたかではなく、書かれていることが何か、送り主が誰かを見るべきだということを気づかせてくれます」

    「ハラスメントを受けて我慢している人を話題にするのはやめて、ハラスメントする人を話題にするべきです」

    女性参政権100周年を記念してマンチェスターで演説をしたテリーザ・メイ首相は、オンラインでのこのような「敵意や攻撃」の取り締まりを求め、女性参政権活動家たちの「勇気ある行動」を称えた。

    女性参政権論者たちが活発に運動していた1903〜1917年には、女性の政治参加に反対する何百というはがきが店頭で販売されていた。その多くは、参政権の活動家らを女性らしさのない、家庭生活にとって危険な存在として描いていた。こうしたはがきの一部は、展覧会で展示されている。

    クック氏は次のように語る。「女性への参政権付与を支持していた人でさえ、こうしたはがきを買ったかもしれません。というのも、一部活動家たちの極端な方策には同意できなかったり、こうしたはがきが人をとても傷つけるかもしれないと理解せずに非常に軽い気持ちで面白がっていたためです」

    「そういう意味では、今のソーシャル・メディアによく似ています。誰かをあざ笑ったり、皮肉ったり、侮辱したりするのが非常に簡単にできてしまう。でも、もし相手の立場になって考えたら、恐らくそんなことはしないでしょう」

    BuzzFeed Newsは、別の手書きはがきを博物館で見せてもらった。イングランド南部ブライトンに住む女性参政権活動家ミニー・ターナー氏に送られたものだ。

    ターナー氏は、1912年3月に窓ガラスを割る活動に参加したことで投獄された。帰宅すると、届いていた一通のはがき。皮肉として宛名には「ミスター・ターナー」と書かれていた。

    そこには「お宅の窓ガラスがまもなく、報復行為として割られるかもしれませんので、気をつけられますよう警告いたします」と書いてある。

    女性参政権活動家たちは、実際に暴力も振るわれた。

    クック氏は、送られてくるヘイト・メールの類は似ているものの、当時の女性参政権活動家らは「もっと多くの虐待」を受けたと指摘した。なぜなら、こうした人々は当時、オンラインではなく道路に立って活動し、物理的に弱い立場に置かれていたからだ。

    彼女らは多くの場合、1907年に撮影された上の写真のように、側溝に立って活動した。そうすれば、公的不法妨害などを理由に逮捕されずに済んだからだ。

    「通りで活動するため物理的に脆弱だった点が、今とは非常に違います」とクック氏は話した。「自宅にいる時にソーシャル・メディアでツイートを受け取るのは恐ろしいものです。でも、20世紀初頭、勇敢にも実際に通りに立って新聞を売るというのは、恐らくもっとつらかったと思う」

    「隠れる場所もなく、完全にさらけ出された状態で、たまたまそこを通りかかった人の意のままだったわけです。こうした女性たちは他に頼れる人はおらず、守ってくれるものは何もなかった。警察も守ってくれなかったでしょう。彼女たちは、今とはまったく違う社会に生きていました。私にとってはこれが、女性参政権運動で最も勇敢だなと思う点です」

    しかしクリーシー氏は、物理的なハラスメントは今の時代でも起こる、と指摘する。

    「オフラインでも起こっています。私が取り組んでいる活動について通りで怒鳴られることもあるし、会議の中には警察が安全性の評価をしないといけないものもある。私の事務所も、今や警備をつけています」とクリーシー氏は話した。

    「オンラインだからと言って、深刻じゃないわけではありません。こうしたものの背後には、人がいるわけですから」と加えた。「もし居酒屋で誰かが私に向かって怒鳴ったりハラスメントをしてきたとして、私が『やめてくれない?』と言うと、周りの人は『大したことじゃないよ。話を続けよう』なんて言ったりする。そんな時は、『なぜ?』と言いたくなります」

    この記事は英語から翻訳されました。
    翻訳:松丸さとみ / 編集:BuzzFeed Japan