2012年11月30日

【11月業績】、サンディ影響!地震、かみなり、火事、オヤジより不景気、災害、客の声?

121130メーシーズ
■チェーンストア各社が発表した11月の既存店売上高は、3年ぶりに前年を下回ったメーシーズなど、北東部を襲った大型ハリケーン「サンディ」の影響が一部で色濃く出る結果となった。
 コストコが発表した11月の既存店・売上高前年同月比は、海外店7%増に国内店も6%増となり、市場予想の4.8%増を上回る6%増の結果となった。変動幅の大きいガソリン販売や為替を調整した既存店ベースは5%の増加となった。サンディ被災で一部店舗を閉鎖したターゲットの既存店ベースは、ブラックフライデーでの売上が寄与したものの、予想の2.1%増を下回るマイナス1%となった。ターゲットの既存店ベースが前年を下回ったのは昨年の3月以来となっている。
 好調を維持しているオフプライスのTJXも、市場予想の3.6%増を若干下回る3%の増加となった。コールズは全体的に弱かった上にサンディの影響で市場予想(1.9%増)を大きく下回る5.6%の減少となった。
 GAPは、北米GAPが5%の増加、バナナリパブリックと海外店がそれぞれ3%増、オールドネイビーも1%となったが、予想の3.8%増に届かない3%増となった。リミテッド・ブランドは傘下のバス&ボディ・ワークスが6%増と牽引、ヴィクトリアズ・シークレットも予想の3%を超える4%増と健闘し、全体では予想3.4%増を上回る5%の増加となった。
 デパートメントストアはサンディの影響が予想以上に反映した結果となった。メーシーズが予想の2.5%増を下回る0.7%減となった。メーシーズの既存店が前年を下回るのは2009年11月以来、実に3年ぶりとなる。ノードストロームも予想の4.3%増を大幅に下回るマイナス1.1%となった。ノードストロームの既存店ベースがマイナスとなったのは、2009年9月以来、38ヶ月ぶり。

〈主な小売チェーン〉
11月既存店売上高前年同月比
ターゲット: 1.0%減
コストコ・ホールセール:6.0%増

ウォルグリーン: 3.9%減
ライトエイド: 3.0%減

TJX: 3.0%増

リミテッド: 5.0%増
ギャップ: 3.0%増
コールズ: 5.6%減

メーシーズ: 0.7%減
ノードストローム: 1.1%減

ハリケーン「サンディ」襲来により北東部の一部のチェーンストアは休業を強いられた。ブラックフライデーの記録的な売上もサンディの影響に及ばなかったようだ。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。「地震、かみなり、火事、オヤジ」は世の中の怖いものの代表として古くから知られています。企業にとって怖いもの(外的要因ですが)は「不景気、災害、客の声」になるかもしれません。企業にとって高い失業率など不景気が一番怖いですね。で、2番目がハリケーンや地震などの自然災害です。ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏は26日、北東部に上陸し猛威を振るったハリケーン・サンディの被害総額がニューヨーク市だけでも190億ドル(約1.5兆円)、州全体では420億ドル(約3.4兆円)に達するとの見方を発表しました。ハリケーン・カトリーナ(2005年)がルイジアナ州にもたらした以上の被害総額となります。人命を奪った数ではカトリーナが約1800人、サンディが120人とカトリーナが圧倒しているのですが、大都市ニューヨークを襲ったことで被害総額が大きくなっているのです。

⇒多くのチェーンストアはサンディの影響で休業を強いられました。ただ、過去の教訓から営業再開にはそれほど時間がかかっていません。それでも、11月の既存店ベースには、ブラックフライデーも及ばぬ、サンディの傷跡が残りました。メーシーズが前年を下回ったのは3年ぶりですからねぇ。ところで、3年ぶりに前年を下回ったメーシーズには「不景気、災害、客の声」の「客の声」の影響も少しはあるのかもしれません。大統領選では、不動産王のドナルド・トランプ氏がオバマ大統領に「出生証明書を出せ」など大統領の出自を問題にして批判していました。オバマ大統領が再選した後もトランプ氏は「恥であり茶番劇だ」と大統領選そのものをインチキだとツイートしたのです。これにチョー怒ったのがオバマ支持の人たち。トランプ氏のように地位や名誉もある人が、大統領選をそのものをインチキだするのは何事かと矛先をメーシーズに向けたのです。

⇒メーシーズはトランプ氏と共同でスーツや香水などのトランプ・ブランドを開発し販売しています。で、オバマ支持者が、メーシーズに対して「企業としての社会的責任を果たすべきだ」とトランプ・ブランドをやめるようオンライン署名集めに動き出したのです。で、メディアも大きく取り扱ったこともあり、最終的には65万名も集まりました。それでも、メーシーズは「(個人による)表現の自由」で申し出を断っています。売上には大きな影響はありません。が、企業ブランド指数(ブランドインデックス:BrandIndex)では、31あったメーシーズのブランド指数が、署名運動の報道が始まった11月19日ぐらいから急激に落としたのです。メーシーズのブランド指数が直近で、17となり、数日間で40%以上も落ちたのです。で、面白いことに、二桁減の既存店ベースが続いているJCペニーは、ブランド指数が40近くに上がっています。
 企業が恐れるのは「地震、かみなり、火事、オヤジ」より「不景気、災害、客の声」かもしれません。
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