歴史学における女性史の「ゲットー化現象」

歴史学及び宗教改革研究における、女性史の現状とそれに関連するツイートをまとめました。
40
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

ジョーン・W・スコットの『ジェンダーと歴史学』を読んでいたら、「女の歴史と言った場合、たいていのフェミニストではない歴史家の反応は、いちおう承認し、そのうえで隔離するか、あるいはきれいさっぱり忘れてしまうというものであった。」と書いてあった。(増補新版78頁)1988年の記述。

2012-07-07 03:15:07
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

訳者の荻野美穂も後書きで、「女性史は歴史学全体のなかでは依然として周縁的で特殊な位置に、いわば身内だけで隔離された状態のまま、とどまっている」と述べている。(444頁:1992年)欧米では女性史の「ゲットー化現象」と呼ばれたそうだが、同じ事は日本にも当てはまると彼女は考えていた。

2012-07-07 03:20:58
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

女性史全体の状況について私は良く知らないが、宗教改革研究に関しては、これと全く同じ状況らしい。英語圏であれ、ドイツ語圏であれ、宗教改革の概説書や入門書では、女性はほとんど出てこないか、独立した章などで少し扱われる程度のようだ。これはもちろん、日本でも同じ。

2012-07-07 03:25:38
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

宗教改革時代の女性に関する個別研究は、山のように出され、それらが扱うテーマは非常に多岐にわたるようになっているにもかかわらず、それらは宗教改革研究のメインストリームには余り影響を与えていないようだ。

2012-07-07 03:28:29
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

私は博論で、市参事会も、市民も、貧しい男性も、女性も、みんな同じように扱い、ミュンスターの宗教改革と再洗礼派運動を分析したのだが、女性史が「ゲットー化」されているという話を読むと、自分の研究にも意味はあったのかもしれないと思う。http://t.co/SKTpTq8L

2012-07-07 03:33:27
@aesthetic_doom

「女性史」の問題は前近代史(日本中世史etc)でも同様の局面が続いていると感じざるを得ない。流すか隔離か、というRT記事の文脈は本当に現在進行形の問題なので、しっかり考えていかないといけない。歴史家自身の意識の問題でもあり、むしろ積極的に歴史家の世間・共同体の問題であると考える

2012-07-07 03:38:55
Cujka @tsujifolyam

歴史研究内での女性史の周縁性といえば、学部時代に女性研究者が自己紹介で「女性だから女性史の研究に誘われたこともある」と話すのを聞き、その枠の嵌め方に引っかかったことがある。

2012-07-07 03:59:22
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

女性史一般が歴史学一般に大きな影響力を及ぼしていないと指摘した研究。M Perrot, Rebellische Weiber. Die Frau in der französischen Stadt des 19. Jh. 1981 http://t.co/TBZEEC5S

2012-07-07 18:01:25
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

女性史一般。 Gay L. Gullickson, Comment on Tilly: Women's History, Social History, and Deconstruction, 1989 http://t.co/8aaYxwsS

2012-07-07 18:03:17
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

宗教改革研究での女性史の影響力の小ささについて。 Marion Kobelt-Groch Aufsässige Töchter Gottes Frauen, 1993 http://t.co/isAIuquD

2012-07-07 18:06:59
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

宗教改革研究におけるジェンダー史研究の無視について。 Merry Wiesner-Hanks, “Gender and the Reformation”, 2009 http://t.co/MQ5tQ7uM

2012-07-07 18:11:26
saebou @Cristoforou

@saisenreiha まったくの印象論ですが、そもそも組織自体に男性中心主義的なところがある宗教よりも、組織化がゆるくて女性とかセクシャルマイノリティが風穴を見つけやすい文学とか芸能の歴史のほうが女性史の影響は大きいような気がします。

2012-07-07 18:25:56
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

@Cristoforou 女性は制度的に、国家と教会の関係みたいな大きな話には余り関われないのですよね。どうしても、上層の女性とか女性預言者、牧師の妻のような一部の女性とか、結婚や家庭における女性の役割の変化みたいな限定された部分を研究することになりがちなのだろうと思います。

2012-07-07 18:37:58
saebou @Cristoforou

@saisenreiha そうですねぇ。しかし歴史学の「本流」はそういう宗教史とか政治史とか経済史なので、文学や芸能のカリキュラムにいくら女性史が組み込まれるようになってもあまり「本流」には影響がないということなのでしょうか…

2012-07-07 18:39:23
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

@Cristoforou 逆に制度と関わらない部分では、女性であることによる活動の制限は少ないので、文学や芸能などは、女性史の影響が強いのも自然かと思います。宗教改革運動や再洗礼派運動でも、制度化されていない初期段階では女性は色々活動できるのですが、制度化されると厳しいです。

2012-07-07 18:41:44
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

個人的には、宗教改革研究で軽視されているのは、女性だけでなく、市民権を持たない男性も同じだと思っている。やっぱり、歴史学は、史料に良く出てくる貴族や聖職者、名望家、インテリなどと相性が良くて、史料に余り出てこない、庶民や貧乏人と相性が良くない。

2012-07-07 18:52:46
HK<地道なインディペンデント系研究者> @PowerfulHK

@saisenreiha 史料の話。史料の接近が容易な一方と、そうでない他方について【それらの連続と非連続】を、新史料の拡充で新たな把捉を試みるのも一つだし、これまでの「既存」史料から再析出を行うのも一つですよね。女性史の脈絡ではありませんが森田安一の手法に可能性を感じています。

2012-07-07 19:12:24
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

@PowerfulHK 新史料発掘や既存史料の再解釈については、それをやるしかないんですが、有効性に限界はあると、自分でずっとやってきてみて実感しています。歴史の大半は失われたのだと言うことは、ますます強く実感しています。それでも、工夫してできることをやるしかないのですが。

2012-07-07 19:26:06
HK<地道なインディペンデント系研究者> @PowerfulHK

@saisenreiha 有効性や限界についてはおっしゃる通りですね。避けて通れない議論ですが、では現代に生きている私たちがこの現代を十全に描けるかというとそこにも限界はあるし、今の私たちが気づけない視点の狭窄もあるでしょう。

2012-07-07 19:33:16
HK<地道なインディペンデント系研究者> @PowerfulHK

@saisenreiha (続き)そう考えれば歴史研究者ができるのは入手可能な史料を用いての誠実な分析と史実の構築である……との基本的な歴史研究のスタンスへと帰り着くのではないでしょうか。そういった意味で内省をも含む「泥臭い地道」な歴史研究の有効性を大切にしたいと考えています。

2012-07-07 19:36:28
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

@PowerfulHK 個人的には史料の残存状況が、歴史学者の認識に及ぼす影響は絶大なものがあると思っています。しかし、史料の使い方や分析視角を工夫することによって、偏りを正そうとしてきたことで、歴史学は着実に先に進んでいるとも思います。限界があるにせよ、やるしかないですね。

2012-07-07 19:42:09
Tetsuya Nagamoto @saisenreiha

@PowerfulHK 何だかんだ言って、できるかぎりしっかりした史料批判を行って、信頼できる事実を少しずつ明らかにしながら、新しく分かった事実によって、既存の歴史像を少しずつ新しくしていくという、地道な作業をやるしかないと思います。

2012-07-07 19:47:23
とりん(・と・) @trinh_JP

女性史か。斯くしてこれこれこういう経緯で○×から女性が排除されるようになったという論文は書けるけど、○×について女性は影響力無かったし研究しても無駄だよという論文はたぶん書けないからなぁ

2012-07-08 22:28:35
藤本大士 @fujimoto_d

.@saisenreiha さんの「歴史学における女性史の「ゲットー化現象」」をお気に入りにしました。|9月の生物学史研究会で、「ジェンダーと科学史」という企画を準備しているので、色々と参考になりました。 http://t.co/g26ZiHRs

2012-07-09 00:02:41
おきさやか(Sayaka OKI) @okisayaka

歴史学における女性史の「ゲットー化現象」 http://t.co/V1UddABU

2012-07-09 00:57:14