2011.01.26

田原総一朗×野口修司(ジャーナリスト)第1回「私が見たジュリアン・アサンジの素顔とウィキリークスの裏側」

アサンジには強い正義感を感じた
〔PHOTO〕gettyimages

田原:野口さんはウィキリークスの主宰者、ジュリアン・アサンジにインタビューをしました。今年9月に2日間、のべ6時間にわたって話をきいたそうですね。その模様は昨年末に放送されたNHKのBSスペシャルで拝見しました。あれは世界的なスクープでした。

野口:いや、まあ、結果としてはそうですね。

田原:どうやって、彼に話を聞けたんですか。

野口:当時はまだ彼は指名手配される前でした。だから接触できたんでしょうね。もちろんインタビューに応じてくれるまでは大変でしたが、最終的には彼の右腕を通じて了解をもらいました。

田原:その経緯はまたあとで詳しく聞きます。

 そもそもアサンジとは、どういう人間なんですか? 彼はまだ若い。39歳ですか? オーストラリアで生まれた。で、どうゆう経歴なのですか?

野口:もともとは母親が人形劇のようなことをやっていたようです。

田原:人形劇?

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野口:はい。劇団を持っていて、転々としてたらしいんですね。

田原:彼はいってみれば、言葉の使い方が悪いかもしれないけれど、まともな教育を受けてない。小学校、中学校、高校とかは行ってないそうですね。

野口:はい、そうです。義務教育を受けていない。母親がアサンジに、家庭内で教えてたらしいんです。

田原:家庭で?

野口:はい、マンツーマンですよね。ある時、コンピューターを渡して、それでアサンジ少年が、コンピューターにのめり込んでいって、天才ハッカーと呼ばれるようになったということですね。

田原:いくつぐらいの時ですか? 天才ハッカーって呼ばれてたのは?

野口:10代の後半ぐらいですね。15歳~17歳ぐらいだと思いますね。

田原:例えばフェースブックのザッカーバーグだとか、いろんなことやってるのがいますけど、ああいう人々はみんな有名大学へ行っている。だけど、アサンジは大学へ行ってないんですか?

野口:メルボルンの大学で勉強をしていたという話はありますが、どういう形だったかはよくわかりません。小学校や中学校のような義務教育は受けていないようです。

田原:ほお。そのアサンジが天才ハッカーだと。ハッカーというのは、いろんな企業とか、政府のコンピューターの防御をガ―ッと抜くわけだよね。なんで、そうゆうことに興味を持ったんでしょうね。

野口:うーん、やはり彼の話を聞くと、政府であったり、大企業であったり、銀行であったり、権力組織、それと自分たち一人一人が弱い存在である個人、この組織対個人っていう対立構造で、彼は世界を見てますね、間違いなく。

 彼がハッカー、ハッキングにのめり込んでった理由というのは、やはり、大きな組織には必ず、ほころびがあるということだと思います。

田原:秘密ということですか?

野口:穴があると。

田原:秘密があって、必ずそこにたどり着くような、入口がある、穴があるというわけか。

野口:そう、脆弱というか、弱点があるだろうと。それで、そこに入って行って、権力構造の実態が明かしたり、その権力構造を変えるようなことが、ハッキングによってできると考えた。その延長線上にウィキリークスがあるんです。

田原:これは非常に次元の低い質問ですけど、ハッカーをやったって、何にも得ははいわけでしょ? 金にならない。

野口:そうですね。

田原:なんで、そんなにそれにのめり込んでいくんですか?

野口:そうですね。いわゆる愉快犯のような。

田原:一種の愉快犯か。

野口:ええ、言葉は悪いですが、自己満足でしかなかったと思います。彼はただ、ここまで自分ができるんだと見せたかった。それで、政府なり、企業なりを変えられると考えたのではないでしょうか。社会正義に目覚めたというか、自信を持ったんでしょうね。

ビル・ゲイツとアサンジの共通点

田原:ちょっと、ハッカーの話を聞きたい。ハッカーって、仲間というか、グループはあるんですか?

野口:ありますね。

田原:一人でやってるんじゃなくて?

野口:そうですね。航空宇宙局NASAに入っていったときは、仲間がやったみたいですね。彼が指示したというか、指揮したっていう話もありますけど。

田原:一種の連携プレイみたいなことをやるわけですか。

野口:まあ、個人プレイもすごくあるみたいですね。

田原:天才的ハッカーでも、マイクロソフトのビル・ゲイツみたいに、巨大ソフトを作っていくというような、まあ、いってみれば破壊的な行動から、建設的な行動に移る者もいますよね。

野口:そうですね。いま、それをお話ししようと思ってったところです。

〔PHOTO〕gettyimages

田原:はい、どうぞ。

野口:僕はビル・ゲイツへは、4回インタビューしてるんですよ。

田原:4回!? ほー。

野口:(2人とも)非常に似てるところがあるんです。実社会とともにコンピューターの世界と、バーチャルな世界と、両方見えているような感じがするんですね。話を聞いていると。

田原:僕もじつはね、ビル・ゲイツに会ったことあるんですよ。

野口:そうですか。

田原:西和彦っていう日本人がいて。

野口:ええ、アスキーの。

田原:西和彦さんがマイクロソフトの副社長(極東担当)だった。で、西和彦さんに会いに行ったんですよ。本社へね。そしたら、玄関のところで、大学生みたいなTシャツを着た男がいまして。その男に「西さんに会いたい」って言ったら、「わかった」って連れて来てくれた。そしたら西和彦さんが、「これがビル・ゲイツだ」って。それでそのまんま食事をしましたけどね。野口さんは4回も会っていらっしゃるんですか?

野口:はい、インタビューしました。

田原:ビル・ゲイツとアサンジは似てるんだけど、まったく違うことをやっているわけですね。そこのところをうかがいたい。

野口:2人とも若くてクールで頭がいい。その点は共通しています。ビル・ゲイツは、インターネットにはさほどのめり込んでいませんでした。しかし、アサンジはインターネットを武器として使ってました。いわゆる、ハイテクっていうか、IT技術を利用して、世の中をどこまで良くできるのかを試そうとしていた。ビル・ゲイツからは、正義感のようなものをあまり感じなかったんですが、アサンジからは非常に正義感を感じましたね。

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