多一教布教計画について

来たる2016年5月22日、弊会は設立十周年を迎えます。例年ですと、n周年記念事業の計画は、n周年を迎える日の直前に立てているのですが、十周年に関しましては、10進数的に大きな節目となる年ですので、記念事業もそれにふさわしいものにすべく、年が改まる前の現時点から計画を始動させることといたしました。

2006年5月22日、弊会は、「共存型一神教」(inclusive monotheism)という宗教の布教を目的とする「共存型一神教学会」として設立されました。しかし、弊会はその後、地球上の宗教多様性を増大させるというメタ宗教団体としての性格を強め、2013年10月、「多宗教教」(polyreligionism)という宗教の布教を活動の中心に据えるという大きな方針転換を断行しました。

多宗教教の布教を活動の中心に据えるという弊会の方針は、現在も変化していません。しかし、設立十周年という節目の年は、改めて自身の原点を見つめ直すよい機会です。弊会の原点と言える共存型一神教という宗教に関連する事業こそ、十周年の記念事業として最もふさわしいのではないでしょうか。そこで弊会は、共存型一神教と同じ方向を目指す新たな宗教の布教を、十周年を記念する事業として推進することといたしました。

設立された当初の弊会が共存型一神教という宗教を布教することによって目指したことは、一神教を信仰したいと考えている人々に対して、ユダヤ教でもキリスト教でもイスラームでもない第四の選択肢を提供することでした*1。すなわち、一神教を信仰したいけれども、異なる価値観に対して寛容ではない従来の一神教はどうしても好きになれない、という人々に対して、一神教でありながら、異なる価値観に対して寛容であるような宗教を提供しようとしたわけです。

弊会が十周年記念事業として布教する、共存型一神教と同じ方向を目指す新たな宗教がどのようなものになるか、ということについては、まだ流動的ですが、その概要はほぼ固まりつつあります。まず、その名称は「多一教」(たいちきょう、polynitism)となる予定です。この名称が示しているとおり、その宗教の最も中心となる教義は多位一体(polynity)であり、この教義は共存型一神教から受け継いだものです。

共存型一神教と同様に、多一教も、一神教の選択肢としてユダヤ教でもキリスト教でもイスラームでもない第四のものを提供するという方向性を持つ宗教です。しかし、共存型一神教と多一教との間には相違点もあります。最大の相違点は、誰に対して第四の選択肢を提供するのか、という点です。共存型一神教が布教の対象として想定したのは、ユダヤ教徒でもクリスチャンでもムスリムでもない人々でした。それに対して、多一教が布教の対象として想定しているのは、ユダヤ教徒もクリスチャンもムスリムも含む、すべての人々です。

おそらく、ユダヤ教徒やクリスチャンやムスリムが他の一神教に改宗しようと思ったときに、最も大きな問題となるのは、その一神教において崇拝の対象となる唯一神は、はたして、自分がこれまで崇拝してきた唯一神と同一なのかどうか、ということでしょう。ユダヤ教キリスト教イスラームは、「アブラハム宗教」と総称されるわけですが、その理由は、それらの宗教がいずれも、「アブラハムの神」と呼ばれる同一の唯一神を崇拝の対象としているからです。その結果として、アブラハム宗教の信徒は、別のアブラハム宗教への改宗に関しては、それほど大きな抵抗は感じないのではないかと思われます。逆に、アブラハム宗教の信徒は、アブラハム宗教ではない宗教への改宗については、それがたとえ一神教であっても、大きな抵抗を感じるに違いありません。

ですから、ユダヤ教キリスト教イスラームからも改宗者を受け入れることを目指す一神教は、アブラハム宗教に属していることが望ましいということになります。多一教も、この方針にもとづいて設計されます。おそらく多一教は、「第四アブラハム宗教」(the fourth Abrahamic religion)という別名で語られることになるでしょう。

しかし、たとえ自身をアブラハム宗教であると自己規定したとしても、それだけで、従来のアブラハム宗教の信徒たちからアブラハム宗教として認定してもらえるとは限りません。彼らに認定してもらうためには、アブラハム宗教であるための必要条件を満足している必要があります。それがどのような条件なのかということを見定めることが、これから多一教を設計していく上での重要な課題となるでしょう。

現在、弊会会長は、多一教の経典を開発するための準備を進めております。近日中にはその経典のアルファテストを開始する予定でございますので、その節は、皆様の忌憚のないご意見をお聞かせいただけますとありがたく存じます。