SlideShare a Scribd company logo
1 of 27
Download to read offline
人工知能には何ができないか
What AIs Can’t Do
2016/3/2 きしだ なおき
たとえばこんな質問
• たかしくんは赤い指輪と青い指輪を持ってい
ます。今日は中指に赤い指輪をはめています。
たかしくんは教会にいます。赤い指輪はどこ
にあるでしょうか?
たとえばこんな質問
• たかしくんは家にもどって青い指輪を人差し
指にはめました。そしてもう一度教会にいきま
した。赤い指輪はどこにあるでしょうか?
たとえばこんな質問
• たかしくんは赤い靴と青い靴を持っています。
今日は赤い靴をはいています。たかしくんは
教会にいます。赤い靴はどこにあるでしょう
か?
たとえばこんな質問
• たかしくんは家にもどって青い靴をはきました。
そしてもう一度教会にいきました。赤い靴はど
こにあるでしょうか?
たとえばこんな質問
• たかしくんは強盗にあって腕を切り落とされま
した。たかしくんは病院にいます。指輪はどこ
にあるでしょうか?
必要な情報
• ひとつめ
– 指輪を指にはめると、その指があるところに指輪がある。
– たかしくんがいるところに指がある。
• ふたつめ
– 指輪はそれぞれの指にはめることができる
• みっつめ
– 別の靴を同時には履かない
• よっつめ
– 腕が切り離されると、指も一緒に体から切り離される
– 指が体から切り離されると、体があるところに指があると
は限らない。
解決策
• このような情報をすべて保持する
– Cycプロジェクト
• ダグラス・レナートが1984年に始める
• http://sw.opencyc.org/
– 200万の知識!
– 200万の知識を検索するAIが必要では・・・
• 物理シミュレーション
• 実際に体をもつ
たとえばこんな質問
• 歩いていると、右折する車がつっこんできて
ひかれそうになった。運転手は携帯で電話を
していた。もう少し歩くと、横断歩道をわたると
きにトラックの運転手がわざわざ止まって道
をゆずってくれた。いろいろな運転手がいるも
のがだが、やはりあの運転手はむかつく。
さて、どちらの運転手にむかついているか。
必要な情報
• 車がつっこんでくると死ぬ
• 死にそうになるとむかつく
• 運転中の携帯電話は危ない
• 危ないことをしてる人に危ない目にあわされ
るとさらにむかつく
• 車がとまってくれると死ににくい
• 死ににくくなるとむかつかない
解決策
• このような情報をすべて保持する
• 感情のシミュレーション
• 実際に壊れやすく不可換な体をもつ
自動運転車
• 最近、自動運転車が現実的になってきた
• 2/9 アメリカ当局が運転AIを運転手とみなす
方針を示す
• 2/14 Googleの自動運転車がAIの判断ミスに
より事故を起こす
自動運転事故の責任を誰がとるか
• 「完全な自動運転の車であれば、事故の際の
賠償責任の主体が車を持っている人になる
のか、あるいは、車を作ったメーカーな のか
という問題」(日本損害保険協会の二宮雅也
会長)
• AIが責任を取る、という話には ならない
AIには責任がとれない
• 責任をとって3ヶ月間運転しない(免停)
– その期間は別のAIが運転
• 無償で他の人の運転を代行する(懲役)
• お金を支払う(罰金)
– お金を所有できるのか
• 廃棄する(死刑)
• どれも責任とった感がない
責任をとるには傷つきやすい
必要がある
• ある種、傷をつけることで責任をとる
– あやまる -> プライドを傷つける
– 罰金 -> 経済的に傷つける
– 無償で働く → 時間を傷つける
• コンピュータは壊れるが傷つかない
• リスクをおえない
AIに教育はできるか
• ドレイファスの習熟度モデル
– 初心者
• マニュアルがあれば作業できる。
• 意欲はそれほどない
– 中級者
• 少しマニュアルから離れることができる
• 理論・原則には興味がもてない
– 上級者
• 問題をみつけて解決できる
• 問題の優先順位をつけるには経験が必要
– 熟練者
• 過去の経験、他人の経験から学ぶ
• 何が失敗につながるかわかる
– 達人
• 本質的な部分とそうではない部分を無意識に判断する
• 直感で行動する
人工知能でできること
• 習熟度に応じて用意された問題を出す
• 解答に対して指導する
• 上級者までは いけそう
熟練者を育てるために必要なこと
• 手法
– 体験させる
– 働き方をみせる
– よい目標を設定する
• これらのために必要
– 信頼関係をえる
– お互いがリスクをおう
モチベーションを与えれるか
• ほめる
– 「目標を達成しました!おめでとう!
• あおる
– 「こんなこともできないの?」
モチベーションを与えれない
• 「目標を達成しました!おめでとう」
– ほめられた感がない
• 「こんなこともできないの?」
– とか言われてもなんも感じない
リスクをとっていない
• 「目標を達成しました!おめでとう!」
– 相手の価値をあげると自分の価値が相対的に
さがる
• 家庭教師なら職を失う
• 同僚なら昇級のチャンスを失う
• 「こんなこともできないの?」
– 評価をさげる
– 反撃をくらう
人工知能に足りないもの
• リスクがおえない
• 責任がとれない
• 信頼をえれない
壊れやすい不可換の体をもたない
• 体をもとにいろいろな推論を行う
• 体をさしだすことでリスクをとる
• 体をさしだすこと・そのようにさしだされた相手
の体を傷つけないことで信頼をえる
どうするか
• がんばってシミュレーションする
• 人間と同じ素材で体をつくる
• あきらめて、できる範囲のことをやる
意識しておいたほうがいいこと
• 人間の活動は、壊れやすいからだをお互い
がもつことを、あまりにも自然に、あまりにも
強く前提としている
逆に人間にしかできないこと
• 同じ空間にいることで共感をえる
• 同じ壊れやすさをもとに共感をえる
• そこから、信頼をえる
• 信頼をもとにした活動を行う
文献
• 「コンピュータには何ができないか」
• 「インターネットについて」
– ともにヒューバート・ドレイファス
• 「人工知能って、そんなことまでできるん
ですか?」
– 松尾豊、塩野誠

More Related Content

Viewers also liked

Your code sucks, let's fix it - DPC UnCon
Your code sucks, let's fix it - DPC UnConYour code sucks, let's fix it - DPC UnCon
Your code sucks, let's fix it - DPC UnConRafael Dohms
 
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪なおき きしだ
 
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。なおき きしだ
 
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識なおき きしだ
 
オブジェクト指向やめましょう
オブジェクト指向やめましょうオブジェクト指向やめましょう
オブジェクト指向やめましょうなおき きしだ
 
良質なコードを高速に書くコツ
良質なコードを高速に書くコツ良質なコードを高速に書くコツ
良質なコードを高速に書くコツShunji Konishi
 
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣Masahiro Nishimi
 
オブジェクト指向できていますか?
オブジェクト指向できていますか?オブジェクト指向できていますか?
オブジェクト指向できていますか?Moriharu Ohzu
 
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...なおき きしだ
 

Viewers also liked (10)

Your code sucks, let's fix it - DPC UnCon
Your code sucks, let's fix it - DPC UnConYour code sucks, let's fix it - DPC UnCon
Your code sucks, let's fix it - DPC UnCon
 
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪
JavaOne2017で感じた、Javaのいまと未来 in 大阪
 
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。
だれも教えてくれないJavaの世界。 あと、ぼくが会社員になったわけ。
 
JavaOne報告2017
JavaOne報告2017JavaOne報告2017
JavaOne報告2017
 
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識
増え続ける情報に対応するためのFPGA基礎知識
 
オブジェクト指向やめましょう
オブジェクト指向やめましょうオブジェクト指向やめましょう
オブジェクト指向やめましょう
 
良質なコードを高速に書くコツ
良質なコードを高速に書くコツ良質なコードを高速に書くコツ
良質なコードを高速に書くコツ
 
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣
デキるプログラマだけが知っているコードレビュー7つの秘訣
 
オブジェクト指向できていますか?
オブジェクト指向できていますか?オブジェクト指向できていますか?
オブジェクト指向できていますか?
 
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...
Java8 コーディングベストプラクティス and NetBeansのメモリログから...
 

More from なおき きしだ

GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話
GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話
GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話なおき きしだ
 
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8なおき きしだ
 
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話なおき きしだ
 
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナー
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナーJava新機能観察日記 - JJUGナイトセミナー
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナーなおき きしだ
 
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会なおき きしだ
 
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島なおき きしだ
 
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11なおき きしだ
 
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11なおき きしだ
 
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Spr
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 SprJava10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Spr
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Sprなおき きしだ
 
New thing in JDK10 even that scala-er should know
New thing in JDK10 even that scala-er should knowNew thing in JDK10 even that scala-er should know
New thing in JDK10 even that scala-er should knowなおき きしだ
 
Java Release Model (on Scala Matsuri)
Java Release Model (on Scala Matsuri)Java Release Model (on Scala Matsuri)
Java Release Model (on Scala Matsuri)なおき きしだ
 
これからのJava言語と実行環境
これからのJava言語と実行環境これからのJava言語と実行環境
これからのJava言語と実行環境なおき きしだ
 
JavaOne2015報告またはこれからのJava
JavaOne2015報告またはこれからのJavaJavaOne2015報告またはこれからのJava
JavaOne2015報告またはこれからのJavaなおき きしだ
 
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fall
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fallこれからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fall
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fallなおき きしだ
 

More from なおき きしだ (20)

GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話
GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話
GraalVMの紹介とTruffleでPHPぽい言語を実装したら爆速だった話
 
GraalVM at Fukuoka LT
GraalVM at Fukuoka LTGraalVM at Fukuoka LT
GraalVM at Fukuoka LT
 
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング in 福岡 2018/12/8
 
GraalVMについて
GraalVMについてGraalVMについて
GraalVMについて
 
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話
VRカメラが楽しいのでブラウザで見たくなった話
 
最近のJava事情
最近のJava事情最近のJava事情
最近のJava事情
 
怖いコードの話 2018/7/18
怖いコードの話 2018/7/18怖いコードの話 2018/7/18
怖いコードの話 2018/7/18
 
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナー
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナーJava新機能観察日記 - JJUGナイトセミナー
Java新機能観察日記 - JJUGナイトセミナー
 
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会
プログラマになるためになにを勉強するか at 九州学生エンジニアLT大会
 
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島
これからのコンピューティングの変化とこれからのプログラミング at 広島
 
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
 
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11Summary of JDK10 and What will come into JDK11
Summary of JDK10 and What will come into JDK11
 
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Spr
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 SprJava10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Spr
Java10 and Java11 at JJUG CCC 2018 Spr
 
New thing in JDK10 even that scala-er should know
New thing in JDK10 even that scala-er should knowNew thing in JDK10 even that scala-er should know
New thing in JDK10 even that scala-er should know
 
Java Release Model (on Scala Matsuri)
Java Release Model (on Scala Matsuri)Java Release Model (on Scala Matsuri)
Java Release Model (on Scala Matsuri)
 
これからのJava言語と実行環境
これからのJava言語と実行環境これからのJava言語と実行環境
これからのJava言語と実行環境
 
乱数のたのしい話
乱数のたのしい話乱数のたのしい話
乱数のたのしい話
 
JavaOne2015報告またはこれからのJava
JavaOne2015報告またはこれからのJavaJavaOne2015報告またはこれからのJava
JavaOne2015報告またはこれからのJava
 
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fall
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fallこれからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fall
これからのコンピューティングの変化とJava-JJUG CCC 2015 Fall
 
機械学習プロ生20151121
機械学習プロ生20151121機械学習プロ生20151121
機械学習プロ生20151121
 

人工知能に何ができないか