このままいけば、新市長と反維新系職員の全面対決は、ほぼ確実。もっとも橋下新市長は当面、対決よりも対話を重視する方針だという。そのため一部では「府庁で苦労したから橋下さんも変わった」という声も出ているようだが、それをまともに信じる職員は少ない。市職労の関係者が語る。
 「人の話を聞くようになったなんて、とんでもない。独裁者のレッテルに辟易しているので、そういうポーズをとっているだけです。力の勝負ならいつでもできるという、余裕の表れなんでしょう」

 嵐の前の静けさが、いつまで続くかが気になるところ。このような不穏と不安が入り交ざった空気とは別に、今、大阪市では、気になる動きが起こっている。ある大阪市職員OBが言う。
 「実は複数の中堅幹部職員が、この機会にということで、早期退職を検討しています。全員、能力のある優秀な人たちで、もし彼らが抜けたら、それこそ大阪市の損失になりますよ」

 その中には、純粋な異議申し立ての職員もいるようだが、一番の原因は、やはりこれから起こるであろう、市長と職員の対立のようだ。年齢的には退職が見えてきた50代後半が多いという。
 「このままでは、中間管理職はいずれ両者の板挟みになるのは必至。しかもその溝の深さは、これまでとはケタ違い。そんなことで苦労するぐらいなら、早く楽になろうということです」(同)

 さらに橋下知事時代の大阪府庁で職員の自殺が相次いだことも、管理職たちのやる気を萎えさせている原因の一つだ。
 「仕事のハードさは正直言って府よりも市の方が上なんです。そこに自殺の原因を作ったかもしれない人がトップに来るんですよ。正直言って、同じ道をたどるのかと気が滅入るのも当然の話」(区役所勤務の男性職員)

 また、ある中間管理職は「これからはまず大阪都構想ありき。それ抜きでは言いたいことも言えなくなりそうです。それに、次の職場(天下り)も期待できませんから、早く辞めたくなるのも当然です」
 このような空気を前出の維新の会関係者は「これから頑張るという人はたくさんいますよ」と、“去る者は追わず”の構え。松井一郎新知事が教育基本条例に反対する教育委員に発したという、「辞任してもらってかまいません」というセリフ。これが基本姿勢のようだ。

 型破り市長の登場に、職員の大脱走が始まりそうな大阪市役所。これが民間なら、影響を受けるのは社員と関係者ぐらいのもの。しかし、自治体、それも政令指定都市ともなれば、波紋は住民にまで及ぶ。
 果たして、幹部職員が固唾を飲んで見守る“ハシズム劇場”は、大阪にどれほどの嵐を巻き起こすのか。