Sony Reader買いました。Touch Editionのほう。

 なんつうか、ストアを含めたシステム全体の使い勝手をkindleと比較してみると不満だらけです。

 ReaderStoreの品揃えが悪すぎるとか、ReaderStoreの使い勝手が恐ろしく悪いとか(ジャンル分けぐらいちゃんとせーよ……。ミステリーもホラーもSFも歴史も全部「文学」って検索性悪すぎるわ)、Wi-Fiないとか、フォントがしょぼいとか。

 挙げだすときりがないんですが、その辺はいいの。最初っから期待してなかったから。

 きっとこれから時間をかけて作品数は充実するしストアの使い勝手はよくなるしユーザーの要望を取り入れてファームアップもしていくはずですよ。そう思わないとやってらんないっつう話ですが。「まあ最初はしかたないよ。これからの製品だからね」とか言ってみると心が優しさに満たされるかもしれません。つーか頼むよソニー。本当に。


 さて、何も期待していなかったと言いながら発売日に購入したのは何故かというと、現時点では自炊(あんまりこの言い方好きじゃないけど)した本を持ち歩くのにはベストだと判断したからです。理由。SDとメモリースティックがささるから。

 自炊した本をkindleやSony Reader向けに最適化すると漫画の単行本1冊で20〜30MBぐらいです。内部メモリが2GBで拡張不可のkindleやSony ReaderのPocket Editionだと100冊も入らないです。かといってiPadは持ち歩くのに重いしデカいしGaraxy Tabも価格や電池の持ちを考えるとちょっとという感じ。あとやっぱり電子ペーパー端末は目が疲れなくていいというのもあります。GARAPAGOS。うん。GARAPAGOSは……がんばれ。なんか色々と。

 つーことで32GBのSDも追加で購入。俺はこれを買いましたが特に相性とかの問題はなさそうです。これで1000冊ぐらいは入るだろうと。

 「そんなに持ち歩いてどうするんだ。読みきれないだろ」という向きもあるかと思いますが、大事なのは読みたいと思った時点で本が選べることなんですね。漫画でも小説でも何でもいいんですが、日常的に本を読む人間ってのは、便意を催したら本棚の前に行ってトイレで読む本を選ぶもんなんですよ。用を足すたった5分のために。

 大体それ言っちゃったらiPodで何千曲も持ち歩いていることも無意味になっちゃう。あれも最初は否定的な意見がありましたが、今じゃ当たり前。音楽も本もその時の気分で選べることが重要です。

 そういう意味ではSony Readerの発表会でソニーの偉い人が言っていた38年分の書籍を持ち歩ける発言は的外れもいいとこで。時間に換算してどうすんだ、とか。38年も使わねーよ、とか。「月3冊読むとして〜」という試算も苦笑を禁じえない。「カップラーメン1年分」の懸賞に当選したらカップラーメンが12個届いた、みたいな話。

 あ、書いてたら不安になってきた。偉い人がこの認識で大丈夫なんだろかこの製品。




 kindleとの比較。キーボードがない分Sony Readerの方が小さい。厚みは大差ないんですが、kindleは手に触れる周辺部分が薄くなってるので持った印象としては薄く感じる。重さもSony Readerの方が軽いんですが、小さい分凝縮感があるのでずっしりと感じるかも。人間の感覚っていい加減。

 質感は金属フレームのSony Readerが圧勝。樹脂製のkindleは値段なりですが、気分的に割とラフに扱えるのでこれはこれで好きです。

 画面のコントラストやページめくりの速度は同じパネルを使ってるだけあって差がわかりませんでした。特に見づらいこともなく、どちらも必要十分レベルだと思います。


 本との比較。少年漫画サイズよりも縦がちょっとだけ短くて、横がほんのちょっとだけ長い。面積は同じぐらいですかね。常に持ち歩くのには十分な小ささ。



 さて、本題。自炊漫画がSony Reader上でどう見えるかです。ということでうちの公式ベンチマーク漫画であるところのモテモテ王国を表示させてみました。300dpiのPDFからSony Readerの解像度に最適化したePubに変換してます。


全体


拡大

 フリガナはちょっと潰れるけど読めるレベル。あと写真に撮ることでコントラストやホワイトバランスが微妙に変化しているので、実際はもうちょい読みやすいです。 

 続いて大判の四コマ漫画。解像度が足りるかどうかが心配でしたが。


「あずまんが大王」

 特に問題なさげ。さすがに書き文字はちょっと読みづらい。

 ついでに新書版の小説。


「新世界より」

 おー読める読める。この本は特に重いから恩恵も大きい。基本的に既読の本以外は自炊してないんですが、これなら買ったばっかりの本もやりたくなるな。普通に新刊を電子書籍としても販売してくれるのが一番いいんですがね。

 読むこと自体は総じて問題なさそうです。タッチパネルのスワイプによるページめくりも反応は良好。片手でもって親指だけでパラパラめくるのも簡単です。

 いかにもソニー製品って感じですねえ。ハードは良くできてる。んでインターフェースやソフトでストレスが溜まると。この辺は後からでも修正可能なんでちゃんとやって欲しいとこですね。



 最後に、Sony Readerやkindle用に自炊ファイルの最適化の方法をざっくり書いておきます。あくまで俺はこうしてる、というだけでベストかどうかはわかりませんが、自炊リーダーとしての購入を検討している方の参考になれば。ちなみに自炊のやり方についてはこんな記事を書いています。→本の電子化を始めたのでまとめる。

 まず何で最適化が必要かというと、画像サイズが大きいPDFなんかをそのまま表示させようとすると、字や線がガクガクになってかすれるからです。一応デバイスの方に拡大縮小機能はついているので画面からはみ出すというようなことはないのですが、16階調しかないことや解像度の関係で縮小の際のスムージングがうまくいかないんだと思います。


ガクガクで読みづらい

 なので、デバイス上で縮小するのではなく、字の読みやすさを保ったまま画面に対してドットバイドットになるようにあらかじめ解像度を変換してやる必要があります。ファイルサイズも小さくなるので沢山入るし、ページめくりは早くなるしでいいことづくめです。



 最適化にはChainLPという素晴らしいフリーソフトがあります。解像度以外にもガンマ等の画質調整、余白の切り取り、フォーマットの変換その他もろもろを自動でやってくれます。

 まずChainLP本体をダウンロード。解凍して適当なフォルダに置いたらまずChainLP.exeが立ちあがるか確認。動かなければMicrosoft .NET Framework 4をインストールします。

 次にePubを作成するならここからzip32j.dllとzip32.dllをダウンロードして同じフォルダに置きます。PDFよりちょっとファイルが小さくなる感じ。PDFにするなら特にdllはいらないんですが、変換したPDFをSony Readerで表示するとなんか表示が変になることがあったので俺はePubにしてます。(変換前は大丈夫。あとkindleは変換後でも大丈夫だった。この辺は設定がおかしいのかもしれないので要確認)

(12/15追記)詳細設定→PDF設定→ページサイズ補正をいじると直る模様。最新バージョンではデフォルトでSony Readerに対応した値が入っています。作者さんの対応の早いこと。ソニーの関係者は足向けて寝れないね。

 さらにPDFを直接読み込んで変換するのでここからpdfimages.exeを入手して同じフォルダに入れています。分かりづらいですが、Precompiled binariesの項目にあるxpdf-3.02pl5-win32.zipがそれです。(2011/01/10追記・なくてもいいみたい)

 ここまでで準備は完了。

 ChainLP.exeを起動すると、こんなウィンドウが立ち上がります。


初期画面



 あとはファイルを開いて変換するだけです。ウィンドウ右側に出ている設定以外はデフォルトでもそこそこのものができます。メニューの「編集」→「詳細設定」を開くとものすごくたくさんの項目があって色々便利なことができるんですが、そこまで説明しているとエントリがいくつあっても足りないので省きます。

 まずメニューの「ファイル」→「圧縮ファイルを読み込む」で入力用PDFを選択。そうすると左のカラムに各ページのファイル名が、中央カラムに選択したページの変換後プレビューが表示されます。で、真ん中の画像がいい感じになるように右側のパラメータをいじると。


 PDFの画像ファイルって、JPEG出力しても回転が反映されないんですが、ChainLPはそこも勝手に補正してくれるので便利です。本の電子化を始めたのでまとめる。ではicomic用のzipにするために色々ややこしいことをしていたのですが、これ使えば一発ですね。素晴らしい。



 メニューの「解像度」から「[W:584 H:754] Sony Reader」を選択。Sony Readerのパネル解像度は600x800なんですが、実際の画像表示領域はこの数字らしいです。あとはファイルによって微妙に変わるんですが、今回テストした設定はこう。

 各設定の上にマウスカーソルを持って行くと説明の出る親切ぶりなので、プレビューを見ながら好みで変えていけばOKです。余白切り取りなどのレイアウトに関しては見たままなのでいいとして、画質補正の方はよく分かんなかったらヒストグラムの白レベルだけでもいじるのをお勧めします。

 白レベルを下げるというのは「白に近いグレーを白にする」ということなので紙のヤケとか汚れを消す効果がありますし、白がはっきりすることでコントラストも強くなるので読みやすくなります。絵を見ながらいいところを探しましょう。やりすぎると上のあずまんが大王の例みたいにお父さんの色が抜けちゃいます(本当はグレー)。

 あとタイトルと著者欄はファイル名に[]で著者名をくくっておくと勝手に取得してくれます。(詳細設定で変更可能)。この場合は[ながいけん]神聖モテモテ王国_01.pdfです。この著者名はePubにメタデータとして記録されるので、Sony Reader上で著者名ソートとかに使えて便利です。



 んで、最後に出力ボタンを押して、出力先のフォルダを指定すればできあがり。この時に出力ボタンの「バッチ」にチェックを入れておけばBatchLPウィンドウが立ち上がるので、この中にファイルをドラッグするとそれら全てに同じ処理をしてくれます。


BatchLP

 漫画単行本だと1冊1分〜2分弱ぐらい。バッチに突っ込んで一晩ほっとけばSony Reader用ライブラリの出来上がり。本当にいいアプリだなこれ。最初に作っちゃえばあとはSony Readerに突っ込んどけばいいだけなので手間も大したことないし。



 とりあえずこんなところでしょうか。Sony Readerは色々使いづらいところもありますが、自炊リーダーとしてはとりあえず及第かなと思います。ChainLPという素晴らしいツールあってのことですが、これで十分読めますしね。

 あとは普通の電子ブックリーダーとしてちゃんと使えるようになるといいんですけどね。現状はとても満足のいくものではないですが、こういう商品をいち早く日本で発売した意気は買うのでストアの充実、ソフトの改善と頑張っていって欲しいもんです。

 とりあえず自炊ファイルいっぱい入れると転送ソフトの読み込みが異様に遅くなるのをなんとかしてください。