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待望の新型エントリーフルサイズ、キヤノン「EOS 6D Mark II」特徴レポート!

35mmフルサイズセンサーを搭載する一眼レフのエントリーモデルとしてロングセラーとなったキヤノン「EOS 6D」の後継モデル「EOS 6D Mark II」が2017年8月上旬に登場する。小型・軽量ボディはそのままに、画質やAFが大幅に進化しているほか、バリアングル液晶モニターを採用するなどして使い勝手も向上。ここでは、上位モデル「EOS 5D Mark IV」とも比較しながら、従来モデルからの進化点や特徴を紹介しよう。

8月上旬に発売になるEOS 6D Mark II(レンズはEF24-70mm F4L IS)

8月上旬に発売になるEOS 6D Mark II(レンズはEF24-70mm F4L IS USM)

新開発の2620万画素センサーと最新の映像エンジン「DIGIC 7」を採用

まずは「EOS 6D Mark II」の画質関連のスペックを見ていこう。

撮像素子に、新開発となる有効約2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサー(サイズ:約35.9×24.0mm)を採用。撮像素子の画素ピッチは5.76μmで、有効約3000万画素の上位モデル「EOS 5D Mark IV」の5.36μmと比べて、わずかではあるが画素ピッチが広いセンサーとなっている。

映像エンジンには、「EOS」シリーズの35mmフルサイズ機としては初となる最新の「DIGIC 7」を採用。静止画撮影時の感度は常用でISO100〜40000に、拡張設定でL(ISO50相当)、H1(ISO51200相当)、H2(ISO102400相当)に対応している。EOS 5D Mark IVの最高ISO32000よりも常用感度の上限が1/3段高く設定されていることからも、高感度時の画質についてはEOS 5D Mark IVと同等か、それよりもノイズの少ない仕上がりが期待できる。

有効約2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを採用

有効約2620万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを採用

映像エンジンは最新のDIGIC 7。EOSシリーズのフルサイズ機としては初の搭載となる

映像エンジンは最新のDIGIC 7。EOSシリーズのフルサイズ機としては初の搭載となる

感度は常用でISO100〜40000に対応。拡張設定でL(ISO50相当)、H1(ISO51200相当)、H2(ISO102400相当)も利用できる

画質設定では、従来モデルにはなかったレンズ光学補正に歪曲収差補正と回折補正が追加された。EOS 5D Mark IVのように、色収差や回折を補正して解像感を高める独自機能「デジタルレンズオプティマイザ」を撮影時に利用することはできないが、回折補正が追加されたのは大きい。

このほか、仕上がり設定の「ピクチャースタイル」に「ディテール重視」を追加。ピクチャースタイルでは、シャープネスの調整を「強さ」「細かさ」「しきい値」に分けて行えるようになった。オートホワイトバランスの「ホワイト優先」も選択できる。

レンズ光学補正に歪曲収差補正と回折補正を追加

レンズ光学補正に歪曲収差補正と回折補正を追加

オールクロス45点AFを採用。連写も最高約6.5コマ/秒に向上

EOS 6D Mark IIは光学ファインダー撮影時のAFに、すべての測距点がクロスセンサーとなる45点システムを採用している。さすがにEOS 5D Mark IVの61点AFシステムには劣るものの、測距点の数が従来モデルの11点から大幅に増加したうえ、全45点に補足性能にすぐれたクロスセンサーを採用したのは大きな進化だ。

さらに、27点(内9点がクロス測距に対応)でF8に対応するほか、中央1点はF2.8対応のデュアルクロス測距を実現。中央測距点の低輝度限界性能は従来モデルやEOS 5D Mark IVなどと同じくEV-3となっている。AF特性の調整にも対応しており、カスタムファンクションにおいて、被写体追従特性、速度変化に対する追従性、測距点乗り移り特性を変更することができる。

被写体追従特性などのAF特性を調整可能

被写体追従特性などのAF特性を調整可能

連写性能は、従来モデルの最高約4.5コマから最高約6.5コマ/秒に向上。連続撮影可能枚数はJPEGラージ/ファインで約110枚、RAWで約18枚、RAW+JPEGラージ/ファインで約17枚。キヤノン試験基準UHS-I対応SDメモリーカード使用時は、JPEGラージ/ファインが約150枚、RAWが約21枚、RAW+JPEGラージ/ファインが約19枚となっている。最高約7コマ/秒のEOS 5D Mark IVと比べると連写性能がわずかに劣るものの、連続撮影可能枚数のスペックはそれほどの差はなく、十分な性能と言える。

シャッタースピードは最速1/4000秒に対応。内蔵ストロボは非搭載で、ストロボの同調速度は最速1/180秒となっている。

「インテリジェントビューファインダーII」対応の視野率約98%ファインダーを搭載

光学ファインダーには、視野率約98%で倍率約0.71倍(アイポイント約21mm)のペンタプリズムファインダーを搭載。従来モデルの約97%から視野率が1%向上し、従来以上にクリアな見え方を実現したとしている。透過型液晶を用いてファインダー上に電子水準器などの各種情報を表示する「インテリジェントビューファインダーII」も採用する。

測光センサーは、7560画素RGB+IR測光センサーで、自動選択AF時に人物にピントが合わせやすい「色検知AF」に対応。フリッカーのある人工照明下で発生する色むらや露出むらを抑える「フリッカーレス撮影」にも対応している。

視野率約98%で倍率約0.71倍の光学ファインダーを採用

視野率約98%で倍率約0.71倍の光学ファインダーを採用

ファインダー内の表示イメージ。測距点のほか電子水準器、アスペクトライン、撮影モード、AF動作、ドライブモード、測光モード、フリッカー検知など多くの情報を表示できる

タッチパネル対応のバリアングル液晶を採用。可動式モニター搭載のフルサイズ一眼レフとして世界最軽量を実現

EOS 6D Mark IIの大きな特徴となるのが、小型・軽量ボディに、タッチパネル対応のバリアングル液晶モニター(約104万ドットの3.0型)を搭載したこと。

ボディサイズは約144.0(幅)×110.5(高さ)×74.8(奥行)mmで、重量は約765g(バッテリー、カード含む)。従来モデルの約144.5(幅)×110.5(高さ)×71.2(奥行)mm/重量約755g(バッテリー、カード含む)と変わらない小型・軽量ボディのまま、モニターのバリアングル化を実現した。「EOS」シリーズのフルサイズ機としては初めてのバリアングル機で、2017年6月28日時点において、可動式液晶モニターを採用するフルサイズ一眼レフとして世界最軽量をうたうモデルとなっている。加えて、バッテリー室のふた、カードスロットカバーなどにシーリング部材を組み込むなどして、防塵・防滴に配慮した構造も実現している。

バッテリーは、LP-E6N/LP-E6に対応。LP-E6N/使用時の撮影可能枚数の目安は、ファインダー撮影時で約1200枚、ライブビュー撮影時で約380枚となっている。

タッチパネル対応のバリアングル液晶モニターを採用。タッチ操作は、設定変更をタッチ操作で行えるほか、タッチAF/タッチシャッターなどの操作に対応

さらに、ライブビュー撮影時のAFシステムに、画面の横約80%×縦約80%の広い領域で像面位相差AFが可能な「デュアルピクセルCMOS AF」を採用。高速なピント合わせが可能で、ライブビュー撮影時でもサーボAFの追従連写(※最高約4.0コマ/秒)が行えるようになった。「EOS」シリーズの35mmフルサイズ機としては初めて、ゾーンAF枠内で自動選択AFを行う「スムーズゾーンAF」にも対応している。

ライブビュー撮影時にサーボAFを利用できる

ライブビュー撮影時にサーボAFを利用できる

動画電子ISや4Kタイムラプス動画に対応

動画撮影は、1920×1080/60pのフルハイビジョン記録(MP4形式)に対応。4K/30p記録に対応しないのは残念なところだが、「デュアルピクセルCMOS AF」による動画サーボAFを利用しての本格的な動画撮影が行えるようになったのは大きな進化だ。タッチパネル対応のバリアングル液晶モニターなので動画撮影時にもモニタリングしやすく、タッチ操作でピントを合わせる位置を変えながら撮れるのは便利だ。

さらに、ジャイロセンサーを活用して画像処理で手ブレを補正する「動画電子IS」にも対応。光学手ブレ補正を搭載するレンズと組み合わせることで、より強力に手ブレを抑えて動画を撮影できる。

1920×1080/60pのフルハイビジョン記録に対応

1920×1080/60pのフルハイビジョン記録に対応

動画サーボAFは、追従特性とAF速度を調整することが可能

動画サーボAFは、追従特性とAF速度を調整することが可能

動画電子ISは、画角が約90%になる「する」と、画角が約70%になるものの、より大きな補正効果が得られる「強」を選べる

また、4K/30p記録には非対応ながらも、4Kでのタイムラプス動画の記録は可能。撮影間隔、撮影回数などを設定して撮影した静止画をカメラ内で自動的につなげてタイムラプス動画として保存する。

動画撮影機能の細かいところでは、23.98p/25.00p選択時にシャッタースピードを1/25秒に設定できるようになった(従来は1/30秒以下は設定できなかった)。スマートフォン用アプリ「Camera Connect」を利用して、スマホからのリモート操作で動画撮影も行える。

4Kタイムラプス動画の記録が可能。露出はフレームごとに更新するか、1コマ目に固定するかを選べる

4Kタイムラプス動画の記録が可能。露出はフレームごとに更新するか、1コマ目に固定するかを選べる

このほかの機能では、シーンモードに「流し撮りモード」と「集合写真」を追加。上位モデルと同様、インターバルタイマー/バルブタイマーにも対応するようになった。Wi-Fiに加えてBluetoothを搭載し、スマートフォンとの連携も強化されている。GPS機能も内蔵。表示・インターフェイス関連ではビジュアルガイドに対応しており、撮影モードダイヤルを回したときに説明文と作例を表示する「撮影モードガイド」と、メニューで機能の内容を表示する「機能ガイド」の利用が可能。ヘルプ文字のサイズを「標準」と「小」から選べるほか、スマートフォンなどに使用説明書(PDF)をダウンロードできるURLならびにQRコードをカメラのモニター画面に表示する機能も追加された。

シーンモードには流し撮りモードと集合写真が追加された

シーンモードには流し撮りモードと集合写真が追加された

インターバルタイマー/バルブタイマーにも対応

インターバルタイマー/バルブタイマーにも対応

細かいところの改善点では、カスタムファンクションに、合焦後の自動AEロックを測光モード別にオン/オフできる設定と、電源オフで露出設定が解除される設定を追加。マニュアル露出でオート感度のときのオートブラケット撮影において、露出をシャッタースピードで調整できない場合に感度で調整する改善も図られている。

EOS 6Dは、評価測光時には合焦後にAEロックが、評価測光以外の測光モードではレリーズ直前に露出が決定する仕様だった。EOS 6D Mark IIでは、合焦後の自動AEロックを測光モード別にオン/オフできるようになった

正面。リモコン端子は全面に配置されるようになった。ステレオマイクも装備

正面。リモコン端子は全面に配置されるようになった。ステレオマイクも装備

上面。基本的なボタンレイアウトはEOS 6Dと変わらないが、測距エリア選択ボタンが追加されている

上面。基本的なボタンレイアウトはEOS 6Dと変わらないが、測距エリア選択ボタンが追加されている

背面。こちらもボタンレイアウトは基本的にEOS 6Dと変わらないが、マルチ電子ロックスイッチが上下に動かすレバー形状に変更になっている

底面

底面

UHS-I対応のSD/SDHC/SDXCメモリーカードスロットを採用

UHS-I対応のSD/SDHC/SDXCメモリーカードスロットを採用

左側面にマイク入力端子、デジタル端子、HDMIミニ出力端子を装備

左側面にマイク入力端子、デジタル端子、HDMIミニ出力端子を装備

専用のバッテリーグリップ「BG-E21」を用意。EOS 6D Mark IIと同等の防塵・防滴性能を実現したほか、ビデオボス(ボス穴)を装備し、ビデオカメラ用三脚への装着にも対応している。キヤノンオンラインショップの価格は22,000円(税別)

まとめ バランスのよい性能を実現した注目のフルサイズ一眼レフ

EOS 6D Mark IIは、従来モデルの発売から約5年ぶりに登場する新モデルで、画質やAF、操作性など多くの点が大きく進化している。35mmフルサイズ一眼レフのエントリーモデルとしては充実したスペックを実現しており、バランスのよいフルサイズ機に仕上がっている。特に、バリアングル液晶モニターを新たに採用したのがトピック。バリアングル液晶とデュアルピクセルCMOS AFによる高速AFを使って、「EOS」シリーズの最新の高画質を快適なライブビュー撮影で楽しめるのは大きな魅力だ。

キヤノンオンラインショップの販売予定価格は、ボディ単体が225,000円、「EF24-105mm F3.5-5.6 IS STM」が付属するレンズキットが269,000円、「EF24-70mm F4L IS USM」が付属するレンズキットが327,000円(いずれも税別)。従来モデルより価格が高くなっているものの、性能向上を考慮するとコストパフォーマンスは高く、人気を集める製品になりそうだ。

■関連記事
・新旧どっちを選ぶ? 人気のエントリーフルサイズ「EOS 6D」シリーズの選び方(2018年1月31日掲載)

真柄利行(編集部)
Writer
真柄利行(編集部)
フィルム一眼レフから始まったカメラ歴は、はや約30年。価格.comのスタッフとして300製品以上のカメラ・レンズをレビューしてきたカメラ専門家で、特にデジタル一眼カメラに深い造詣を持つ。フォトグラファーとしても活動中。
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三浦善弘(編集部)
Editor
三浦善弘(編集部)
出版社で月刊誌やWebメディアの編集・記者を経験し、2013年にカカクコム入社。「価格.comマガジン」にて、PCやスマートフォン分野を担当。取材歴は20年以上。現在は「価格.comマガジン」全体を統括する。
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