第二子を産んだ妻が、産後5日間入院することになった。出産というのは、男性には想像もつかないほどのダメージを負うものだという。
陣痛に苦しみ、叫ぶように痛みを訴えながら出産を終えた妻。何も気にせず、入院生活でじっくり体を癒してほしいと心から思った。

妻の入院中は、2歳の娘と二人きりの生活。ヘタくそなパパの料理も、文句ひとついわずに食べてくれるなど、思っていたより手を焼くこともなかった。だが、困ったのは、娘が保育園に着ていく服のことだ。

なんでもかんでも「ピンク色がいい!」と娘。
髪結いのゴムから、キャミソール、Tシャツ、ズボン、靴下、そして靴……。娘のオーダーどおりに着替えさせていたら、全身ピンク色になってしまった。娘よ。これじゃ、某パー子みたいじゃないか……。

筆者の娘は、ピンクなど赤系の色がとにかく大好き。たしかに、赤系は女の子らしい色とは思うのだが。
それにしたって……。ここでふと、疑問がわいた。女の子らしい色って、なんだろう? 赤が女の子らしい色って、世の中の誰もが思っていることなんだろうか?

妻の服や持ち物を見ても、娘と同様に赤系の色使いが実に多い。反対に、男である筆者には、意識したわけではないのに、青系のものが多く揃っている。生まれた第二子は、男の子。入院中に病院から支給されたタオルやシーツ、友人知人から贈ってもらった出産祝いの衣類も、青系のものばかりだ。


公共のトイレで男性用女性用を示すマークは、男は青で、女は赤。デパートで見かけた「紳士服売場」の標識は濃い青色で、「レディースDAY」の広告文字はピンク色。娘を迎えに保育園へと行ってみれば、男の子用の物には青や水色、女の子用の物には赤やピンクが多用されていた。

しかしながら、たとえば公衆トイレの男女マーク。海外では色分けされていない国も多いとか。韓国人の友人に聞くと、日本に来て初めてデパートのトイレを利用したとき、青と赤の色だけで区別されていて、どちらに入ったらよいのか戸惑ってしまったという。


反面、「男は青、女は赤」というイメージは、万国共通らしい。武蔵野大学のある教授が世界20カ国、約5000人を対象に「男女のイメージカラー」について調査したところ、「男は青、女は赤」という回答が最も多く得られたというのだ。

この理由には、諸説あり。中世ヨーロッパで描かれた絵画には、キリストは青い衣服を、マリアは赤のドレスを身に付けているものが多い。そして、その影響から、現在でもヨーロッパでは赤ちゃんの出産時に男の子なら青系、女の子なら赤系の衣類を着用させる習慣があり、そこから、「男女のイメージカラー」として広まっていった、という説も。

ちなみに、日本で使われている男=青、女=赤のトイレマーク。
その発祥は、1964年開催の東京五輪といわれている。世界中の人たちが競技や報道、観戦に訪れる中、言語に頼らなくても一目でわかるマークとして発案されたのだという。そして、70年に開催された大阪万博でもこのマークは使われ、日本中に広く定着していったらしい。

ジェンダーの観点などから、「男は青、女は赤」というイメージに疑問や反論を持つ人も少なくない。しかし、大半の日本国民においてこのイメージは、半ば無意識に浸透しているといえよう。

「妻は真っ赤な顔で怒るから“赤”、僕は怒られて青ざめるから“青”」。
これは、筆者の家庭におけるイメージカラーです。
(木村吉貴/studio woofoo)