先週末、パナソニックが携帯電話事業を縮小する、という報道が流れた。同社からの正式な発表はないが、報道によれば今春に改めて参入した欧州市場でのスマートフォン販売を今年度中に打ち切り、国内事業も縮小するという。

 パナソニックといえば、フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)の時代には、トップブランドの一つであった。しかし現在の国内市場では、そこまでのプレゼンスはない。IT専門調査会社IDC Japanが9月に発表した、2012年第2四半期の国内市場における携帯電話の出荷状況によれば、トップ5からも漏れている状況である。

 また、海外市場での事業展開は、そもそもフィーチャーフォン全盛期から行き詰まっており、欧州市場は2005年に撤退していた。それでも、昨今のスマートフォンの台頭に新たな商機を見出せると、再び参入した矢先の、今回の撤退報道である。

 アップルやサムスンが牽引するスマートフォンのパラダイムにおいて、ユーザ・インターフェースやユーザ・エクスペリエンスに劣っていたのかもしれない。あるいはAndroidというOSのデファクト化により、結果としてスマートフォンがコモディティ化する中、競争の前提となる世界規模での市場獲得に失敗したのが大きく影響したのかもしれない。

 しかし、パナソニックの携帯電話部門の財務状況を勘案すれば、「なぜこうなってしまったのか」を論じるのは、もはや手遅れなのかもしれない。同部門は、のれん代の減損やリストラ費用などで、今後1000億円近い費用を計上するかもしれない。だとすると、同社全体の状況の厳しさを踏まえれば、「細々とながらも継続」という判断が下ることさえ、残念だがもはや考えにくい。

 厳しい状況はパナソニックに限った話ではない。NECとて状況は同じだし、また国内市場においては好調に見える国内勢であっても、チップの調達には頭を悩ませている。同分野は米国クアルコム社の寡占状態が続いているが、半導体製造は生産能力、生産量の管理、歩留まりの改善が大きなカギを握ることから、供給能力には一定の限界が生じ、実績や規模のない事業者は調達力に劣る。

 こうした事態を打破するために、今年8月には富士通が設立したアクセスネットワークテクノロジ社に、NTTドコモとNECが資本参加し、特にLTE対応で供給不足が顕在化している通信制御用半導体(ベースバンドチップ)の開発・製造に乗り出すことを発表した。しかしさすがに昨日の今日では、直近での調達が改善するわけもなく、しかも一角を担うNECもまた厳しい経営状況にある。