2011.04.11

補正予算4兆円では一ケタ足りない。復興予算40兆円はこうすれば作れる

「逐次投入」で失敗した阪神大震災の経験を生かせ

 東日本大震災の復旧・復興は、地元でプランニングしてもらうのがいい。国としてできることは財政面の支援である。

 ところが1次補正について野田佳彦財務相は「国債発行に頼らず『自賄い』で対応したい」として、予算規模は4兆円程度となった。1次補正の対象は、仮設住宅建設やがれきの撤去のほか、道路や港湾、下水道などのインフラに加え、学校や社会福祉施設など整備である。今回の1次補正の規模では、はっきりいってゼロが一つ足りない。

 1995年1月の阪神淡路大震災の時、補正予算は1995年2月、5月、10月に成立した。災害復旧・復興とともに、円高対策などでそれぞれの追加予算規模は、1兆円、2.8兆円、6兆円だった。

 政府は、それに比べれば今回は規模が大きくまともだと弁明するだろう。さらに、今後も、今国会中に2次補正、秋には3次補正も視野に入れていると。

 だが阪神淡路大震災の時は、「戦力の逐次投入」で、十分な復旧・復興ができなかった。その教訓を今回も生かしていない。

中央官庁がやるべきは財源を用意すること

 私は当時の復旧・復興に携わった人から意見を聞いたことがある。短期間で計画を策定する中で、財源問題がいつもネックになったという話しが多かった。予算を小出しにするので、そのたびに財源問題が起こり、十分な街作りができなかったのだ。

 その教訓を踏まえれば、今回ははじめの補正予算は30兆円くらい積んで、余ったら後で減額修正するくらいでいい。

 災害復旧の予算実務は細かい書類上での予算査定というより、現場で判断するので地方財務局で行う。私の地方財務局での経験からいえば、災害復旧では中央官庁ベースでの予算査定などまったく不要でだ。現場でどんどん判断してやっていくのがいい。その際、財源問題がネックになると、現場での判断も鈍る。そこで、中央官庁でできることは、できるだけ財源を用意することだ。

 その点、野田財務相が国債発行しないといっている点で、もう財源制約をわざわざ課しており、もう失格だ。阪神淡路の時でも、歳出のほとんどは国債発行でまかなわれ、国債発行額は9.2兆円だった。

インフラが壊滅した街の復興に、この補正予算では足りるわけがない 【PHOTO】Bloomberg via Getty Images

 震災対応で国債を除くことは経済学の基本からもずれている。経済学で課税の平準化という話がある。別に小難しいことではなく、100年に一回のショックなら、100年間でその負担を平準化するほうがいいということだ。

 国債はそのための手段だ。今回の大震災が100年に一回なら、100年国債を発行して、そのショックを100年間に分散するように、100年間に負担を分けて償還するのが筋だ。

 しかも、公共投資の基本からも、細かい予算査定なしでインフラ整備することが正当化される。

 公共投資の基本論では、便益と費用を比較して、便益が費用より大きいなら公共投資は行うべきで、便益より費用が大きいなら公共投資をしてはいけない。

 ところが、震災でインフラが失われたので、これからの復旧・復興でのインフラはゼロからのスタートになる。これはインフラ整備による便益はものすごく大きいことになり、ほとんどの場合で費用を上回る。このため、復旧・復興段階でのインフラ整備はおおいに推奨できる。

 しばしば批判される公共投資は、既存のインフラがあるのに重複投資して便益が費用を下回る場合だが、震災の復旧・復興はそれにあたらない。

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