「ブログ感覚で作れる電子書籍」の快進撃〜「パブー」吉田氏に聞く(後編)(1/4 ページ)

ブログ感覚で電子書籍を作成でき、そのままオンラインで販売までできてしまうpaperboy&co.のサービス「パブー」。同社の取締役副社長で、パブーの責任者を務める吉田健吾氏が明かした企画からオープンまでの足跡をたどった前回に引き続き、後編となる本稿では主にビジネス視点から見たパブーの成功要因や今後の戦略について聞く。

» 2010年11月29日 10時00分 公開
[山口真弘,ITmedia]

 ブログ感覚で電子書籍を作成でき、そのままオンラインで販売までできてしまうpaperboy&co.のサービス「パブー」。現在までに6000冊を超える電子書籍が登録され、プロ作家もこのプラットフォームを利用するケースも増えてきた。

 本稿では、「『ブログ感覚で作れる電子書籍』の快進撃〜「パブー」吉田氏に聞く」の後編として、同社の取締役副社長で、パブーの責任者を務める吉田健吾氏に、主にビジネス視点から見たパブーの成功要因や今後の戦略について聞く。

有料コンテンツは全体の2割程度、売れる本と売れない本の違い

吉田氏は2004年に入社し、ブログサービス「JUGEM」の事業部長を経て現職。「今までは人前で話す機会はあんまりなかった」とのことだが、最近ではパブーの担当として、電子書籍に関連したトークイベントへの登壇も多い

── パブーには無料と有料のコンテンツがありますが、現在、これらの割合はどのようになっていますか?

吉田 有料コンテンツの割合が全体の2割くらいでしょうか。これは当初の想定よりも多いですね。有料のものが売れるかどうかについてですが、セルフプロモーションができる方の作品はやはりよく売れていますね。うめさんや佐々木さんのようにもともとネームバリューがあったり、佐々木さんだとTwitterでつぶやくとフォロワーの人がわーっと買いにきたりしますし。

 それ以外だと、無料公開の機能をうまく使っている方の作品は売れています。書いてる人が誰だかよく分からない上に、本の中身もよく分からないものはやはり読み手も購入をためらいますので、その辺りのコツを心得ている方の作品はたくさん売れていますね。今後は売り方に関するこうしたノウハウをパブーから提供していきたいと考えています。

── パブーが立ちあがった当初、「素人でも本が出せます、ブログの感覚で書けます」という、いわばアマチュアの発表の場のような雰囲気があり、素人の作品が何かのきっかけでブレイクするような期待があったように思えたのですが、実際のところはどうですか?

吉田 まだ読み手の数もブレイクするほどの母数ではないので、書き手と読み手の両方を増やすためにパブーのプラットフォーム自体が大きくならなければそうした状況にはならないでしょう。まだまだすべきことはたくさんあると思っています。

── 週刊ダイヤモンドの記事の中で、昭和初期の写真をパブーで公開されているご高齢の方が紹介されていましたが、現状だとアマチュアではそうした方が目立っているイメージですか?

吉田 そうですね、その方もすごく人気がありますし、漫画を描いておられる方も多数おられます。少し前には、タクシー運転手と女の子の漫画を描いておられる方が話題になっていました。この方の作品は40〜50ページと結構なボリュームですが、そのうち半分くらいは試し読みとして無料公開しておられて、半分読んでしまうと続きがどうなるか気になるんですよね。ペパボのスタッフも相次いで購入していました。


ニコニコしょうてんがい パブーが実施した「第1回 絵本コンテスト」の大賞に選出された「ニコニコしょうてんがい」

── それ以外に、これはよく売れた、ダウンロードされたというものを教えていただけますか?

吉田 ジャンルで言えば絵本でしょうか。先日、パブー主催で絵本コンテストを開催したのですが、それ以前から絵本を公開してくださってる方が結構おられて、ダウンロード数の多い絵本が散見されます。サービスリリース時に、パブーのティーザー広告としてオリジナルの絵本を作った影響も少しはあったのかなと思います。

── 自費出版だとモノクロとカラーでかなり費用が違いますが、パブーだとそうした制約がないというのもあるのではないでしょうか。

吉田 多分あると思います。文字ベースのものはKindleの方が読みやすいと思いますが、色がかなりきれいに出るiPadだと、写真集や絵本はとても映えるんですよね。これはうちの社員の意見なのですが、iPadにたくさん絵本を入れておいて子どもに見せてやると、かさばらない上にあやすのにすごく役立つといいます。iPadと絵本は相性がいいのかなと思います。

── やはりiPadで読んでいるユーザーが多いのですか?

吉田 いえ、実際はPCで完結してる方が多いようです。iPadもたくさん台数が出てるわけではないですし、パブーのサイトはiPhoneでの閲覧を想定した最適化がまだ十分ではないので、PCのみ、またはPCで本を探してダウンロードして、iPhoneなどで見るという方が多いんじゃないかと思います。

── ダウンロードできるファイルフォーマットとしてはPDFとEPUBの2種類が用意されていますが、読み手はどちらを選択していますか?

吉田 本によってバラバラですね。EPUBはPC用のビューアがまだ少ないので、現状ではiPadやiPhoneで見ていただくのが一番よいと思いますが、本によってはEPUBのダウンロード数の方がPDFのそれを上回るものもあったりして、不思議な感じです。

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