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風邪でも会社休みにくい? 「出勤は美徳」「自分は必要」

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探偵の松田章司が身支度をしていると、アパートの隣の主婦が心配顔で訪ねてきた。「風邪なのに夫が出社しました。なぜ会社を休めないのでしょう」。「高熱を押しても仕事に出かけるという話はよく聞くぞ」。章司は早速調査を開始した。

「そもそもどのぐらいの頻度で風邪を引くのか、そこから調べないと」「それならうってつけのデータがあります」。たまたま事務所に来ていた気象情報会社、ウェザーニューズの徳丸友紀さん(26)だった。

同社の調査によると、平均的な日本人は1年に2回以上風邪を引くものの、熱が38度まで上がらないと会社や学校は休まない。風邪でも休まなかった人の割合は年齢が上がるにつれて高くなり、40代では35.9%に達するという。

チームで仕事、言い出しにくく

「無理をし過ぎている気がするけどなあ」。理由を確かめるため、章司は人事管理に詳しい日本総合研究所の高橋敏浩さん(52)に話を聞きに行った。高橋さんは「多少のことがあっても出勤するのが美徳だとずっと考えてきました。その影響が大きいのでしょう」と教えてくれた。

「最近は結果重視の成果主義が主流になってきたと聞きましたが……」。食い下がる章司に高橋さんは首を振った。「それは1990年代半ばまでの話。今はプロセスにおける貢献度やチームの成果などを重視する新しい人事評価制度が多くの企業で導入されています」。かえって突発的な休みが言い出しにくい環境になっているという。

「職場の声も拾わなきゃ」。章司は日用品メーカーのライオンへ向かった。医薬品も手掛けるし、無理して働く人はいない。そんな予想は統括産業医の西埜植規秀さん(36)にあっさり打ち砕かれた。「37.5度になれば帰宅するという社内ルールはありますが、そのまま働き続ける人もいます」。徹底するのは難しいようだ。

章司が事務所に戻ると、高橋さんが待っていた。「働き手の意識がなかなか変わらないことや、上司の意識改革が遅れていることも影響しているかもしれません。その点でちょっと気になったのがこの資料です」。先ほど訪ねたライオンが昨秋に実施した風邪の実態調査。対象は働く人だ。

高橋さんが注目したのは、休んだ日の給与や薬の購入代とその手間など、1回風邪を引くとどのぐらい損をした、稼ぎ損なったと思うか、という質問の回答だった。20代の1万3841円に対し30代が2万4097円、40代は2万9948円。働き盛り世代ほど代償が大きいと感じている。

「興味深い結果ですね」。振り返ると、企業組織に詳しい同志社大学教授の太田肇さん(57)だった。太田さんは、もし会社側に聞いたらずっと低くなるはずだと話す。「本人は代わりがいない重要な人材と思っていますが、会社はそこまで評価していないからです。金額の差はその評価の差なのかもしれません」

予防に積極的な企業

「人事制度や働き手の心理が影響しているようです。これでいいですね」。章司が所長に尋ねると、「企業は本当に望んでいるのか。もう少し調べてくれ」

聞き込みを再開した章司は、医師で予防医療会社「ヘルスケア・コミッティー」を自ら経営する古井祐司さん(44)を訪ねた。「少数ですが、新型インフルエンザの流行などをきっかけに、無理をして社員を働かせるマイナス面に注目する企業が日本でもようやく出てきました」

章司は古井さんの紹介で大和証券グループ本社を訪ねることに。応対してくれた安藤宣弘さん(45)によると、従業員だけでなく、扶養家族も無料でインフルエンザの予防接種を実施しているという。有給休暇制度も見直し、1時間単位で休めるようにもした。

「これまでは、1日丸々休むしかありませんでした。1時間単位にすると、ちょっと会社を抜けて病院に行ったり、どうしても出たい会議に2時間だけ出てすましたり、といった対応ができます」と安藤さん。調べてみると、三菱地所や全日空なども、家族が無料で予防接種を受けられた。

病気で仕事、企業に損害も

「随分社員に優しいですね」。章司の皮肉に安藤さんは動じる様子もなく「インフルエンザにかかった社員が会社で他の人にまき散らしたら一大事です。商談がまとまらなかったりすると、取り返しがつきません」と言い切った。予防と対策を講じることは、企業の成長という点でもメリットが多いのだという。

公園で章司が調査メモをまとめていると、「実は病気を押して仕事をすると、効率がかなり落ち、会社に大変な迷惑をかけます」。声の主は企業向けに病気対策などを助言する損保ジャパン・ヘルスケアサービス(東京都新宿区)の関泰章さん(43)だった。

出社しても体調が悪くて普段の成果があげられず、企業に損害を与えてしまう。関さんによれば、この考え方を経営学で「プレゼンティーイズム」と呼ぶ。例えば花粉症だと少なくとも4.1%、風邪だと4.7%効率が落ちる。「この損害をいかに抑えるかが企業の課題になりそうです」

「その程度なら目くじらをたてなくてもいいのでは」。章司が質問すると、「医療費や、場合によっては代替要員の人件費も負担しなければなりません。それに、一人ひとりの損害は小さくても、積もり積もって組織全体になれば大きな問題です」。関さんの熱弁に章司は押し黙った。

「生産性を維持し、リスクヘッジにも役立つプレゼンティーイズムを検討する企業が増えそうです」。事務所に戻った章司の報告に所長もようやく納得、「うちの事務所でも導入する必要がありそうだな」とつぶやいた。それを聞いた章司は笑いをかみ殺した。「まず所長の二日酔い勤務をなんとかしないと」

<風邪薬、売り上げ縮小>「予防」「初期症状で病院へ」浸透

日本の約8割の家庭が常備しているといわれる総合感冒薬(風邪薬)の売り上げは縮小している。調査会社のインテージによると、2011年の市場規模(販売金額)は約970億円と、05年の1139億円を境に6年連続の前年割れ。特に、新型インフルエンザが流行した09年には75億円の減少と大きく落ち込んだ。

意外な感じがするが、予防の意識が広がったうえ、頭痛や発熱など初期症状が表れると、すぐ病院に駆け込む人が増えたことが影響したとみられている。

これと対照的なのが、09年のうがい薬と手指消毒薬の市場だ。09年にうがい薬の売り上げは前年比5割増、手指消毒薬は一気に約7倍に膨らんだ。

風邪薬の中でも健闘しているタイプもある。熱や重症になった喉の痛みなどに効果が高いとされるイブプロフェンを含んだ大人向けの商品。体調が悪くてもなかなか休めないビジネスパーソンが主なターゲットで、この6年間で風邪薬全体に占める比率は2割から3割程度に高まったとみられている。日本人ビジネスパーソンの典型的な行動パターンが医薬品の販売動向からも読み取れる。

(編集委員 館道彦)

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