2012.12.24
# 経済・財政

デフレ論者たちのばかげた批判をすべて論破する!これまで20年間、完璧にはできなかったデフレ脱却を安倍政権が成し遂げたなら大成功だ

PHOTO:Bloomberg via Getty Images

 自民党の安倍晋三総裁は12月23日のフジテレビの番組で、2%のインフレ目標について「次(来年1月)の政策決定会合でそうならないなら、日銀法を改正し、アコード(政策協定)を結んで、それを設ける」と述べた。そのほかにも、インフレ期待(予想)のアップ、それに伴う実質金利低下(=名目金利マイナスインフレ予想)の話もしていた。

 筆者はいろいろなところで安倍氏の真意なるものを聞かれる。もとより人の真意はうかがい知れないが、少なくとも、23日のテレビで見る限り、金融緩和による景気回復のメカニズムを正確に説明している。

 20日の日銀金融政策決定会合で、追加金融緩和(基金10兆円増額)と次回会合での「物価安定の目途」を見直すように"予告"した。もし、日銀が安倍氏の要請を正確に理解していれば、インフレ目標とは、2%と言う数字だけでなく、その達成時期、達成できない場合の責任をも含むことがわかるはずだ。であれば、次回の2013年1月21、22日の政策決定会合では、それらも含む内容でないといけない。

 その場合、これまでの「緩和は2013年末まで」、「基金で〇兆円増額」という方式は、「達成期限を明示したインフレ目標2%」との整合性を厳しく問われるはずだ。

10年前に作成したインフレ目標政策批判へのFAQ

 安倍自民がインフレ目標に本気になったので、マスコミの理解も少しはまともになってきたが、NHKなどは相変わらずトンチンカンな番組が多い。

 筆者がインフレ目標、金融政策を本格的に勉強したのが、1998年プリンストン大に留学し、当時のバーナンキ教授(現FRB議長)らから聞いてからだ。その後2001年に日本に帰ってきたが、あまりに無理解が多かったので、今から10年前の2003年3月にバーナンキ教授にチェックしてもらって作ったのが、インフレ目標政策への批判に答えるというFAQだ。

 そこでは、

 インフレ目標はデフレ(持続的な物価下落)を克服できない《無効論タイプ》として、
a.デフレは中国などからの輸入のためであり日本では対処できない【輸入デフレ論】
b.効果の波及メカニズムがない【波及メカニズム論】
c.実績・実例がない【実例論】

 インフレ目標には副作用がある《弊害論タイプ》として、
d.インフレはコントロールできずハイパーインフレになる【ハイパーインフレ論】
e.名目金利が上昇し金融機関や日銀のバランスシートを毀損させる【金利上昇論】
f.財政規律を弱める【財政規律論】
g.構造改革が阻害される【改革阻害論】

 を掲げている。

 その後、インフレ目標の下でのデフレに対して金融政策は量的緩和になる。筆者も多少関与し、小泉政権時代に行われた日本における量的緩和のデータや、リーマンショック以降の先進国で実施された量的緩和のデータは、筆者の予想と整合的であった。

 今、このFAQに若干の修正を加えるとすれば、先進国においてインフレ目標は米国でも採用されて、残るは日本のみとなったこと。さらに、

e.名目金利上昇の時でも、今や金融機関にALM(資産負債管理)による金利上昇に対する準備が十分に課されているので備えはできている

ということだ。

 最近、インフレ目標が具体的になってきたので、さらに人々の不安を煽るような以下のような疑問も出ている。これらは、インフレ目標が海外で既に実施済みなので、問題なしとして片付けてもいいが、丁寧に解答をつけておこう。

h.インフレ目標は中央銀行の独立性に反する
i.名目金利が上昇すると財政破綻する
j.インフレになっても賃金は上がらない
k.インフレになると年金生活者が困る

 

h.インフレ目標は中央銀行の独立性に反する

 これは中央銀行の独立性を理解していないだけだ。先進国において、中央銀行の独立性とは政策達成手段の独立性であり、目標の独立性ではない。11月19日付け本コラム参照

i.名目金利が上昇すると財政破綻する

 まず、他の先進国では金利が日本より高いが、財政が破綻しているのだろうか。これを主張する論者は、名目金利が1%上昇すると日本の債務残高は約1000兆円なので、利払い費が10兆円増加するという。しかし資産600兆円の大半は金融資産でその利回りアップのことは言わない。さらに金利が上昇する局面では名目成長率が高まっており、税収がアップしている。景気回復局面では税収弾性値がかなり大きいので、プライマリー収支のみならず財政赤字も小さくなる。それを実際に活用し、ほぼ増税なしで財政再建を達成したのが小泉、安倍政権である。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら

関連記事