仕事と家庭と、どっちが大事?

会社員にとっては永遠のテーマです。私は自分が会社員時代から、社長という立場になった今でも、そのポリシーは変わっていません。それは

原則は家庭。
ただし変わる人がいない場合は仕事。
しかし組織は、常に「変わることができる人」を意識して用意すべき。

です。

そういうと、社長として何と甘いのだと、お叱りを頂戴しそうです。しかしちょっと待ってください。私がこう考えるには理由があります。

高度成長期時代と呼ばれた 1960 年からしばらく、私の親の世代は猛烈に働きました。その効果で、国内の所得は向上しました。ただ、同時に失われたものがあると考えています。

それは出生率です。

日本の人口は急激に悪化しており、もはやベビーブームを期待することもできません。そうなった原因の一つに、子育てしにくい社会環境があると思います。誰がそのような社会にしたのか。それは仕事優先の風潮が生んだ弊害だと思うのです。

子育てに参加しない父親は、家庭を優先する会社員を評価しない上司の存在と一体です。また女性の方も、育児と仕事の両立を認めてもらうことは難しい状況です。幼児はすぐに熱を出しますので、子供が小さいうちはどうしても会社を休みがちです。それを組織が支えなければ、女性は不本意でも退職せざるをえません。

その結果、出生率が下がったと考えています。それが何を生み出したかというと、皮肉にも現在の不況です。この関係性については、以下のブログに書きました。
http://d.hatena.ne.jp/ynie/20100924/1285305325

個々の会社の部分最適を求めた結果、日本全体の状況が悪化したといえます。これを改善しようとするならば、最初にやらないといけないのは人口増へ転じさせることであり、そのためには子育てしやすい社会環境が必要です。それはとりもなおさず、仕事優先のお題目を各自が見直すことが必要です。

もう一つの持論は、子育てと部下の教育は通じるものがある、ということです。私は褒める教育が好きです。減点主義ではなく加点主義で人を伸ばしたい。私が尊敬する現役社会人(社長を含む)の多くは子育ても真剣です。少しずつ変わっていることを実感しますし、いい傾向だと思っています。

これも誤解を受けそうですが、褒めることと甘やかすことは違います。私は次の方針を掲げています。

  • 家庭の事情で何かあれば、時間年休をとってでも、それを優先させてよい。
  • 配偶者や子供の誕生日といったイベントは、できるだけ年休をとって対応するとよい。

一方で、次のことを求めています。

  • 自分の仕事が途中でも休むなら、休暇中であってもメールをチェックするのは当然。
  • 土・日の休日は当たり前と思ってほしくない。家族と時間を共に過ごしながらも、自己研鑽のための時間をとることは、できるはず。

これは矛盾した考えでしょうか。休息と仕事を両立させることは大切ですが、その両立の時間を「日」単位ではなく、「時・分」単位で行うという意識があれば、解決できると思っています。

権利を主張するのではなく、権利を活用しつつも、義務(仕事)をしっかり果たす。
そういう大人であれば、仕事も家庭も両立できるし、そうあってほしい、と願っています。