ライフハッカー編集部御中

マルチモニター環境にすると生産性がアップする、という話を今まで信じて生きてきたのですが、アテンションスパンを再構築する(英語)、という記事によると、モニターを増やすと逆に集中力が下がる、といった内容のことが書いてあります。実際のところ、どうなのでしょうか? マルチモニター環境は生産性をアップさせるのでしょうか? 気になっているので教えてください。

マルチコンフュージョンより

 マルチコンフュージョンさん

お便りありがとうございます。とてもすばらしい質問だと思います。

マルチモニター環境=生産性アップ、という記事を目にする機会が実際多いので、ついついそんな印象を抱いてしまいます(マルチモニター環境をフル活用させるTipsを過去に紹介したことなんかもありました)。

この質問に答えるためには「二台目のモニターが生産性を向上させるというのは神話である」という記事を書いた本人に聞いてみるのが一番である、と思い、InfoVeganのテクノロジストClay Johnsonさんを直撃してみました。彼のコメントは下記の通り:

モニターではなくピクセルを管理すべし

集中する方法について書いた記事は、集中力について、またはアテンション・スパン(注意持続時間)を長くするためのインターバルトレーニングについて、多くの人が改めて考えみるよいきっかけになったように思います。

記事の中に書いた、2台のモニターをなくす、という部分に関しては賛否両論がありました。多くの人がマルチモニター環境を気に入っている証拠です。しかもマルチモニター=生産性の向上、というのは何度も何度も耳にしている話なので、それが否定される、ということは寝耳に水な感も確かにあったかと思います。

ちょうどよい機会なので、マルチモニター環境について今一度考えて見ます。マルチモニターにすると生産性がアップするという説はそもそもどこから来ているのでしょうか?

確認できたもので最も古いものは、2003年に書かれたユタ大学のレポートです。2008年に、これはフォローアップされています。お金を投じればそれだけ仕事がはかどる、ということを証明したこの調査は、モニターを生産しているNECによって行われた調査でした。そして驚くべきことに、この調査の最終的な結論は「もっと大きくて価格の高いモニターを買おう。」というものでした。

そして、さらに驚くべきことに、生産性を向上させるのに問題なのはモニターの数ではなくピクセルである、という調査結果が発表された際にも、マルチモニターの話にメディアは飛びついたのでした。また、このレポートでは、画面が大きいほうが特定のタスクの生産性は向上する、とあり、この向上はネイティブ解像度が2560x1440以上の26インチ~30インチでピークを迎える、としています。

これが何を意味するのかを自分なりに分析してみたところ、タスクを終了させるに当たり、最適なピクセル数、というのがあり、心配するべきはモニターの台数ではなく最適なピクセル値である、という結論に至ったのです。

この最適な数値とは、たいていの人の場合、大体2500x1400くらいだと言われています。ワイドスクリーンが普及していなかった2003年以前にこのピクセル数を実現しようとした場合、17~20インチの液晶スクリーンを2台置く、というのが最も現実的な方法だったのです。

それが今日では、2560x1440ピクセルの27インチディスプレイが、パソコン本体込みでもかなり安く手に入るようになりました。このピクセル数で作業を行えば、作業内容がコード書きであろうと、デバッグであろうと、ブログの記事を書く作業であろうと、エクセルデータの修正だろうと、生産性は自然と向上しているはずです。

なので、マルチモニター環境を設定するのか、または十分なピクセル数を持った大画面を一つにするのか、のどちらがよいか、というのは特に最適なピクセル環境が設定された後では甲乙付けがたい問題です

ピクセル管理は生産性に直結しているといっても過言ではないです。マルチモニター環境の利点は、マルチウィンドウ管理が簡単に出来る、ということです。同時に二つのウィンドウを最大化しておけるので、それほど深く考えなくても簡単にウィンドウ管理が出来てしまいます。

しかし、15インチのノートパソコンで作業するにしても、24インチのワイドスクリーンが4台ある環境で作業するにしても、ウィンドウ管理というのはおのずと必要となってくるスキルです。Macでは『Divvy』というツールがとても便利です。『Divvy』はウィンドウポジションを作成し、設定しておくことが出来、ホットキーで配置させることが可能です。自分の場合は、Qキーでウィンドウを画面の上部25%に表示させ、Wで画面の上半分Eで右25%Aで画面左Dで右、Z、X、Cで画面下、左でコードを書きながらターミナルウィンドウを右に複数走らせることが出来るようにR、F、Vで右を3分の1ずつに区切るようにしています。

編集部より: Windowsユーザの方は『WinSplit Revolution』や『Window Manager』あたりの似たようなツールを試してみてください。Macユーザの方でフリーツールを探している方はオープンソースツール『ShiftIt』をどうぞ。

集中力を持続させるための秘訣は、邪魔となりえる要素を可能な限り排除していくことです。スペースは大きいほうが良い場合も多々ありますが、スペースが大きいとその分、作業の邪魔になるものが入り込むスペースにもなりえます

別のモニターにメール、Twitter、IMなどが表示されている状態で完全に集中して作業をしている、と言えるでしょうか? To-doリストを表示させている、というのも関係あるようでいて、実は今目の前にある作業の生産性について考えた場合、邪魔な要素であるといえます。

マルチモニターでマルチタスク、といえば確かになんとなくかっこいいですが、結局はかっこ悪くてもシングルタスクで完全に集中して作業した方が生産性アップにつながりやすいです。

Clayさんからのコメントはこんな感じでした。タスクの種類によっても、もちろん変わってくるとは思いますが、画面が大きくなった=生産性アップ、とは直結しないということを覚えておくと良いかも知れません。結局、環境がどうなろうと、やらなくてはいけないことの内容および作業は何一つ変わりはしない、というのも悲しいかな真実なわけです。

というわけで、モニターが一つしかないことを生産性が上がらない理由にする前に、一つ一つの仕事をいかに上手に片付けて行くかを考えてみると良いかも知れません。

こんな感じで返答になっているでしょうか?

ほかにも疑問点などがありましたらコメントで教えてください。

ライフハッカー編集部より

Manage Pixels, not Monitors [InfoVegan]

Clay Johnson (原文/まいるす・ゑびす)