(昨日のエントリご覧の)司書のみなさん、大丈夫ですかー?

お詫びと開き直り

日ごろ当ブログをご覧いただいて、ありがとうございます。
12月3日づけ、本ブログ“図書館員にとって資料費はそれほど大事なのか?”については、Twitterやブクマで、感想を述べていただいたのは、実にありがたいことです。
私は、この不況下、「資料費削減」に対処する現役司書の方々に、
“がんばれよ!!”
という、激励をおくろうとしたことは、本当のハナシです。
ただし、現役司書のみなさまには、けだし、目の前の問題〜資料費削減〜にとらわれ、視野狭窄や、将来のことを考えていない方も多いのではないかと思い、あちこちに「トラップ」や「気づき」を入れておきました(そのために、ワザとへんてこな文章になってしまいました)。ほとんどの方が、やはりというか、それに気がつきませんでしたね。正規(?)コメントを下さった、nemurigame様以外、少しばかり頭に血が上ってしまった方が多いような感じです。

資料費より自分たちの方がコストかかっている!

まぁ、“図書館員にとって資料費はそれほど大事なのか?”という、チョーハツをしてしまったのは、私でしたが、多くの方が、あたかも注文の多い理髪店で、チョーハツ(調髪)してもらったあと、洗髪もブローもしてもらってない、毛だらけのような感じになったと思います。
そこで、もう少し、デティールを細かくリアルにモデルを設定して考えてみます。

あなたは、人口8万人、蔵書冊数9万冊の市立図書館の主任司書です。私は、市の総務部長として、あなたに資料費予算を800万円から500万円に削減する旨、査定結果を告げたところです。
司書:「この削減は、絶対に無理です。これでは、サービスを維持できません。」
部長:「気持ちはわかるが、市も財政難だ。ぜひ協力してくれと話しているんだがねぇ…」
司書:「図書館は、資料が命です。」
部長:「そこを、創意工夫してやり繰りするのが、キミらの仕事ではないかね?」
司書:「やり繰りならば、部長、あなたも同じです。ほんの300万円、なんとかならないでしょうか?」
部長:「ヨシ、わかった資料費予算は、要求どおり800万円出そう。ただし、キミには来年度、図書館から税務課に異動してもらう。かわりにはアルバイトを入れる。」
司書:「えっ、そんな…」
部長:「キミの仕事をアルバイトにすれば、300万円以上節減できる。これが“やり繰り”というものだよ。ついでに、キミには税務課で税金の取り立てにご苦労願おう。キミのいう“ほんの300万円”とやらを集めるのが、どんなに大変なことか、経験してもらおう…」

おわかりでしょうか? 自治体にとって、図書館は“カネ喰い虫”のハコモノです。その中でもっともお金がかかるのは、「資料費」でもなければ「電子組織の賃貸借及び保守にかかる費用」でもない、「人件費」にお金がかかるのです。
私は前回エントリを
“モノ(資料)”や“カネ(資料)”よりも、とにかく自分自身を大事にしてくださいね。
と締めくくりました。その言葉には、もちろん励ましやご自愛いただくことを願って、本心から記した言葉です。それが八割ぐらいでしょうか。同時に、
「あなたがたには、多額の税金がかかっているのです。だから、それにふさわしい仕事ぶりをしてもらわなくては困ります」
という気持ちが1割ほどあります(残り1割は後述)。

まぁ、ここで、安定した身分である正規司書の職を辞して、「時給自足」の生活に足を踏み入れる司書がいれば、それこそ、尊敬の名に恥じないと思いますが…

資料費には余裕も必要だが、それ以上に司書は「余裕」を持ってほしい

資料費には、本当に必要な資料を買うだけではない、“余裕”というか遊びの部分が必要です。
この点では、ツッコミをいれてもらうため、「注釈」に次のボケを入れました。

“オレの右に出る者はいねぇ。”と言うつもりでしたが、高速自動車道では、もっぱら「左=走行車線」を走り「右=追い越し車線」のクルマに抜かされていますので、いわないことにする。しかし、200キロ以上の性能のクルマで軽に抜かれるとは…

実にムダな話です。巡航速度200キロで設計された車両で100キロ制限が上限のわが国高速道路を走るというのは…
でも、200キロまで走れるクルマであれば、そのための車体剛性・加速・減速力は至って安心感に満ちています。その安心感というものが“余裕”なのです。そして、資料費についても“余裕”なのです。このあたり、ツッコミが入らないために、自分でボケツッコミする羽目になりました。

これからは、「保存」を考えるより「長尾構想」を考えないと…

「資料の保存には一定の水準の資料が必要」
との声もいただきました。よくぞ、ご指摘くださいました。図書館の機能は「収集・保存・提供」にあることは論をまたないことです。私の前エントリには(ワザと)「保存」を入れておりません。
“保存のための資料費の必要性”
ここの穴をズバリ指摘した方は、昨年までは、百点満点中、200点を差し上げたい、「超A級」の司書です。
うん、昨年までは…
なぜ、昨年までに限定しての優等生かと申しますと、

  • 2007年、長尾真氏が国立国会図書館(=NDL)の長に就任し
  • 2008年、日本出版学会春季研究発表集会特別シンポジウムで“長尾構想”をブチあげ
  • 2009年、著作権法を改正し、NDLが書物のディジタル収集・保存が可能になった

ことによるものです。
おそらく、現在の公共図書館が資料費を投入し、“保存”を目的として“収集”しようとする資料は、数年内に9割は減らせる計算になります。おめでとうございます。極論ですが、“長尾構想”のアフターでは、たいていの図書館において「保存」に重きをおかなくてもすむわけです
しかしながら、それは司書の皆さんを“楽”にさせるものではありません。
さしあたり、体制の入れ替え(書籍の電子化)には、両者が併存すること、ギャップの差を埋める、という仕事があります。
自分の館所蔵資料を、燃やせなくなった(電子化された)資料群と、燃やせるままの(非電子化)資料とに分けて、前者“燃やせなくなった(電子化された)資料群”を燃やす(なんだか、ややこしいな)仕事もありますし、ってか、“長尾構想”を自分の図書館でどう“活用”するか、どれだけの図書館(司書)が考えているのか、気になることです。
まぁ、何を今更感もありますが

ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系

ブックビジネス2.0 - ウェブ時代の新しい本の生態系

を紹介しておきます。
あわせて、ARGメルマガ(http://archive.mag2.com/0000005669/20101201104050000.html)からの請け売りで、もうすでに直接会場は申し込みも満了しているかと思いますが、12月8日は、同書をテキストにした「ソーシャルリーディング研究会」も開催されるようです。とかく、新しいものには、難色をしめす方が司書には多いように感じますが、あからさまな拒絶ではなく、正面から向き合っていただきたいものです。

「これから」を考えていますか〜

最近、八代亜紀さん堀北真希さんのCMで流れていますが

富士フイルムの「グルコサミン&コラーゲン」
 http://shop-healthcare.fujifilm.jp/products/supplement/glucosamine/gluco/index.html?link=newsrelease

カメラのフイルムの一大メーカーである、富士フイルムが、このような健康サプリメントを売り出すとは、おそらく四半世紀前は誰も想像だにしなかったことでしょう。
私は、30年前、学生でした。ゼミの教授が当時の富士フイルムの社長と昵懇で、そこからきいた話ですが…
社長いわく
「今の写真フイルムの製造・現像・プリントを中心とした事業では、近い将来、必ず滅亡が訪れる。それを期して、わが社の得意分野を活用し、どのような新しいことができるか、いま若いものに研究させている。その彼らこそがわが社の期待の星であり、死活問題を担っているのだ」
と。
その後の展開は、みなさまご存じのとおり。ディジタルの普及で、従来の光学フイルムは、いまやマニアだけの存在になってしまいました。
それでも、企業は死活問題がかかっていますので、生態系にあわせて変化・進化していくのです。遠い将来を見据えながら…
いま、日本の公共図書館の中心となって活躍されている方、特に「認定司書」候補生の方々に、20年後、30年後の図書館像を自分なりに設計している方がどれだけいるのでしょうか?

それでも、司書には期待します。

おそらく、これまでの内容をご覧になって、たいていの司書は私のことを嫌悪したでしょう。
でも、そのあたりを承知のうえでいいます。いちばん、大切なことは謙虚になることです。過去の自分と向い合い、将来の自分を見据える
というのは、なかなか大変なことです。
でも、AKB48の「名曲」

RIVER

RIVER

にもありますが、

  • 自分に言い訳するんじゃねえ!
  • 言い訳したって始まらねぇ!

世の中にいるのです。
最後にもう一度いいます。
“モノ(資料)”や“カネ(資料)”よりも、とにかく自分自身を大事にしてくださいね。