【3月11日 AFP】6月に始まる2010年サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)のマスコット・グッズを委託製造していた中国の工場が、労働搾取を行っているとして、委託元の監査に基づいて製造承認を取り消された。工場側は生産を中止したものの、労働基準は中国の現状から見れば良いほうだと反論している。

 この工場は、上海(Shanghai)にある企業、「上海華声塑胶工芸礼品(Shanghai Fashion Plastic Products)」の工場。2010年W杯マスコットで「ザクミ(Zakumi)」と名づけられたヒョウのキャラクター・グッズを製造していた。

■3ドルで13時間労働、児童労働

 しかし、この工場で13時間労働や児童労働が行われ、日給は1日3ドルしか支払われていないなどの報道があったことから、国際サッカー連盟(FIFA)との契約で2010年W杯のマスターライセンスを保有している英系ブランドビジネス企業、グローバル・ブランズ・グループ(Global Brands Group)が工場を監査。9日、同社が定めるCSR(企業の社会的責任)基準に達していない点があったとして、同工場に対する製造承認を取り消したことを明らかにした。

 グローバル・ブランズによると、生産を中止している間に開催地南アフリカのサブライセンシー企業から労働倫理基準に準拠するよう工場を指導し、その後で再度評価を行うという。

 一方、上海華声塑胶工芸礼品の関係者は10日、AFPの取材に対し匿名で「中国の現状を考慮すれば、わが社の工場の状態はかなり優良だ」と自社の立場を弁護した。玩具製造などを主に手がける同社は、2008年の北京五輪や、今年行われる「2010年上海万博(Shanghai World Expo)」のマスコット・グッズ製造なども請け負っている。

■中国での委託製造に南ア労組は怒り

 上海華声塑胶工芸礼品にマスコット・グッズの製造を委託したのは、サブライセンスを保有する南ア企業で、与党アフリカ民族会議(ANC)の国会議員がオーナー。

 報道を受け、南ア最大の労組連合、南アフリカ労働組合会議(Cosatu)は憤りを表明するとともに、アフリカ大陸初開催である同大会関連グッズの製造は、南ア国内に発注すべきだと主張。「第一に中国に製造を発注すべきではなかった。雇用創出政策に取り組むべきANCの議員自らが、南アの労働者から雇用を奪うような、こうした無神経な決定をするとは言語道断だ」と非難した。(c)AFP