「東京オリンピック返上」という選択を真面目に考えてみる

実は前例もあった!

「あと3年半」なんて、ウソでしょ? と言いたくなるほど、課題山積の東京オリンピック。このままでは、招致した時には思ってもみなかった、莫大な額のカネが必要だ。決断の日が迫っている。

森にだけは負けたくない

「小池さんは、振り上げた拳の落としどころを、今年の年末、遅くても来年の2月ごろまでには見つけないといけない。『本番』までは、もうあと3年半しかないんですから」

こう指摘するのは、元神奈川県知事で参議院議員(無所属)の松沢成文氏である。

3兆円超——小池百合子東京都知事と、都政改革本部調査チーム、通称「チーム小池」が見積もった、東京オリンピックの総費用だ。昨年10月、舛添要一前都知事が、「大まかに言って」と前置きした上で口にした額も、同じ3兆円だった。1年が経ち、都知事が替わっても、事態は好転していない。

小池氏にはもう、時間がない。どうしたら、この天文学的な費用を削ることができるのか。

「東京オリンピックの予算を徹底的に見直す」とぶち上げて都知事選に圧勝した手前、数百億円を浮かせたくらいでは、都民が、そして国民も納得しないだろう。

 

オリンピックは、自民党、そして組織委員会会長として居座り続ける森喜朗氏にとっては、決して譲ることのできない手柄であり、利権の塊だ。豊洲新市場の問題追及では向かうところ敵なしだった小池氏も、ほぼ完封されている。東京都議会の野党議員が明かす。

「11月末には、ボート・カヌー競技の会場が予定通り『海の森』(水上競技場。江東区の東京湾岸に建設中)に決まる見込みです〔後注:11月29日に正式決定〕。小池さんは復興支援と予算の削減を名目に、宮城県の長沼ボート場へ会場を移す算段でしたが、結局、自民党側に押し切られてしまったわけです。

小池さんにとっては大ダメージです。東北の人は、『小池さんなら、オリンピックを東京と東北の共催にしてくれる』と期待していたのに、肩すかしをくらうことになる。今は親小池ムード一色のマスコミも、ここから潮目が変わりかねない」

水泳種目の会場も、規模の問題から、既存の辰巳国際水泳場が使えず、新たな施設を作らなければならないことを「チーム小池」が認めている。

「あとはバレーボール会場の有明アリーナを新設するかどうかですが、ここは小池さんとしては、何とか既存の横浜アリーナに誘導したい。そうしないと、これまで焦点になっていたボート、水泳、バレーボールの3つで『全敗』ということになりかねませんから」(前出・都議会野党議員)

小池氏がいくら奮闘しても、これらの改革で削ることができる額は、せいぜい400億円程度。

しかし前述したように、都民と国民はすっかり、彼女ならば「3兆円」が「2兆円」に減らせるはずだ、と期待してしまっている。小池氏がどうあがこうと、この「見直し路線」を続ける以上は、勝ち目がないのだ。

ワイドショーをジャックし、女性を中心に圧倒的な支持を集めてきた小池氏の「神通力」にも陰りが見え始めた。別の都議会野党議員が言う。

「このまま立ち往生して決断が先延ばしになったうえ、改革の効果も大して上がっていないとなれば、遠からず世論は小池批判に転じるでしょう。目先を変えるために、小池さんとしては一刻も早く、次のネタを出さなければいけない」

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