リピートがすべて

最近ホテルはもちろん、レストランでも「お客様の声をお聞かせください」という紙をよく見ます。いわゆる「顧客満足度アンケート」ですね。


ちきりんがこれ系のアンケートを見ていつも思うのは、まず最初に聞くべきは
「このサービス(施設、商品など)を利用されるのは何度目ですか?」

「次回も(or○年以内に)このサービス(施設、商品など)をもう一度利用しようと思いますか?」
という質問だと思うのだけど、案外見ないもんです。


2番目の問いはたまに載ってるのもあるけど、大半のアンケートは機能やサービス、価格など様々な項目について「とても満足した」から「とても不満」までの5段階で評価しろという形式が多く、最後に「総合点では?」と聞かれます。

確かに個別の機能やサービス項目ごとに満足度を聞けば、結果が出たとき「何を改善すればいいか」が明確になるので、アンケートの作り方として悪くはないと思います。

けれど、実際には「満足した」からといって再度使ってもらえるとは限らないし、いろいろ「不満」をもちながら、再び使ってくれる客もいます。

将来の売上は後者の客から上がるのだから、ちきりんに言わせれば、大事なのは「今回の購買経験に満足したかどうか」ではなく、「リピートしてもらえるかどうか」です。


★★★


実はコレ、人も同じです。就活では「もう一回会いたい」と思わせた学生だけが次のステップに進めます。立場が逆転していて、学生側がどこに就職しようか決められる場合も、企業側は「この会社の人にもう一回会いたい」と学生に思わせられなければ選んでもらえません。

仕事でも同じ。最初に会った時に「もう一回会いたい」と思ってもらえて初めて仕事がつながります。これは、就活にせよ仕事の顔合わせにしろ、さらにいえば男女や将来の友人との出会いも同じ。誰か新しい人と会った後は、「自分が相手側の立場だったら、今日の自分にもう一回会いたいと思うだろうか?」と考えてみればいいんです。

その後の話が進展するかどうかは、「いい人だった」「充実していた」「おもしろい話が聞けた」ではなく、「もう一回会いたい」と思ってもらえるかどうか、つまり「リピートがすべて」なのです。


ちなみに、このことは
「供給過剰で競争が熾烈な市場」
「高いモノ、必要不可欠ではない贅沢品やサービス」
に関して特に重要です。


供給過剰な市場においては、消費者は「満足した!」場合でも「別のものも試して見よう!」と考えるので、相当のインパクトを与えないとリピートしてくれません。反対に駅前に1軒しかない食堂なら、満足度はたいして高くなくてもリピートされます。

また、高いモノ、贅沢品(必需品ではないモノ)ほど、リピート率が顧客満足度より重要です。ひとり2万円するレストランでは「大満足」した顧客でも、多くは二度とやってきません。

人間にとっては食事は必須ですから、誰でもどこかで食事をします。家で作るか外食か、中食か。その場合、どの店か。平日のランチなど必需品としての食事の場合は、人は「少なくとも一つは選ぶ」のです。

しかし、2万円の食事は生きるための食事ではなく「贅沢品」であり「エンターテイメント」です。こういう「必ずしも必要不可欠でないもの」については、まず(1)リピートする必要性を感じさせ、(2)加えて、同じ店でリピートしてもらう、という2段階の動機付けが必要です。「食べる必要がある食事」では(1)が不要なので、リピート実現の容易さが全く異なるのです。


ちなみにブログだって、一度「おもしろい!」と思われても、継続的に読んでもらえるかどうかは別問題です。毎回毎回「ヒドイ内容だ! とんでもない!」とか言われながらも、更新するたびに読みにきてもらえるブログもあります。当然ですが後者の方がアクセス数も伸び、マネタイズも容易で、「人気ブログ」に育ちます。

ネット上の文章もすごい数なので、「供給過剰で競争が熾烈な市場」です。だから「おもしろかった!」と「もう一度読みに来てもらえる」の間には大きな差があるわけです。


★★★


ところで、楽天市場にはそれを買った人のレビューがついていますが、その中でよく「リピ」という言葉がでてきます。
「うーん、たぶんリピはないです」とか
「リピします!」「もう何度もリピしてます!」
などという表現が頻繁にでてきます。

ここでの「リピ」とは「リピート」のことで、再度買うか、何度も買っているか、ということを表しています。


これを読む度にちきりんは「消費者って本当にエライよね!」と思うのです。

アンケートを作る店側はリピート率より各項目の満足度ばかり気にしていますが、レビューを書いている消費者は「何を伝えれば、この商品のお勧め度合いを最も巧く伝えられるか」ということを、直感的に理解しているんです。

くだくだと値段がどーの、味がどーの、使い勝手がどーの、と書くよりも、「リピするかどうか、リピしているかどうか」を書いた方が、圧倒的に自分の評価が伝えやすい!と彼女ら(彼ら)はわかっています。

だから「リピはたぶんないです」「リピしました!」って書くのです。


消費者ってホントにエライ。


そんじゃーね!






<追記ツイート>