グーグル、マイクロソフト、Yahoo!、Facebookらが新しいネットワーキング技術の実現へ「Open Networking Foundation」を結成

2011年3月28日

サーバの仮想化やクラウドが普及したことで、「サーバを用意すること」の意味が、物理的なサーバを調達することから、サーバのインスタンスを立ち上げることへと変わろうとしています。いまではAPIを叩けば、CPUの性能やメモリ容量を指定し、いくつインスタンスを立ち上げ、いつシャットダウンするのか、すべてAPIから指定できる環境が広まっています。

Open Networking Foundation

同じことがネットワークでも起ころうとしています。現在のところ「ネットワークを構築する」こととは、ケーブルを引いてルータやスイッチの設定画面からルーティングやVLANを設定することです。設定されたネットワークは基本的にスタティックなものであり、構成を変えるには再びルータやスイッチの設定画面を開いて設定をやりなおすことを意味しています。

グーグル、マイクロソフト、Yahoo!、ドイツテレコム、ベライゾン、Facebookという世界最大規模のデータセンターを運用する企業が中心となって3月21日に立ち上げた団体「Open Networking Foudation」は、ネットワーク構築をプログラマブルに行うというコンセプト「Sotware-Defined Networking」の実現を促進するとしています。

Software-Defined Networkingが実現すれば、ネットワークはいちいちルータやスイッチを個別に設定することなく、すべてソフトウェアから制御できるようになります。しかもトラフィックの状態やインスタンスの稼働場所に応じて経路のダイナミックな変更も可能です。Software-Defined Networkingによって、「ネットワークを構築する」という意味も変わろうとしているのです。

新しいネットワーク技術「OpenFlow」

Open Networking FoundationがSoftware-Defined Networkingを実現するために用いる技術が「OpenFlow」です。OpenFlowについては、IPAの記事「OpenFlowによるネットワーク分離」に分かりやすい説明があります。簡単にいえば、OpenFlow対応機器としてのスイッチ/ルータがあり、それらの機器をまとめて制御できるコントローラがあり(おそらくコントローラはソフトウェアで実装されサーバ上で実行される)、機器とコントローラはOpenFlowプロトコルによってやりとりを行います。

ネットワークを流れるパケットは、入力スイッチポート、VLANID、送信元/宛先MACアドレス、送信元/宛先IPアドレス、プロトコル、送信元/宛先ポートなどによって識別される「フロー」をベースに経路制御が行われます。

ニューヨークタイムズ誌の記事「Open Networking Foundation Pursues New Standards」(新しい標準を求めるOpen Networking Foundation)では、これをトラディショナルなインターネットからの旅立ちだと、次のように書いています。

The effort is a departure from the traditional way the Internet works. As designed by military and academic experts in the 1960s, the Internet has been based on interconnected computers that send and receive packets of data,

これはトラディショナルなインターネットの仕組みからの旅立ちだ。1960年代に軍と大学によってデザインされたとき、インターネットはパケットをやりとりするコンピュータの接続だった。

インターネットは自律分散のネットワークを特徴として始まりました。ところが特に最近のデータセンターでは、効率よくかつダイナミックにネットワークを利用するニーズが高まり、そのためにネットワーク全体を集中管理し、きめ細かなトラフィックの制御が求められるようになったのです。それがSoftware-Defined Networkというコンセプトを実現しようとするOpen Networking Foundationの目的です。

Open Networking Foundationには、ブロケード、シスコ、ジュニパーネットワークス、ヒューレット・パッカード、IBM、デルなど多くのネットワーク機器ベンダ、サーバベンダなどが参加しており、VMware、シトリックスなど仮想化ソフトウェアベンダ、日本からはNTTやNECも参加メンバーとなっています。

3月9日、NECは国内で「世界初、新ネットワーク制御技術「OpenFlow」に対応したネットワーク製品を販売開始」という発表をしました。今後OpenFlowに対応した機器、ソフトウェア、それらを用いたデータセンターなどが登場してくることでしょう。

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Junichi Niino(jniino)
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