先日「 被災者も、免れた人も、今だからこそして欲しいメンタルケア」を書きましたが、ボランティアをしているホスピスで、子供に対してはさらに注意が必要という話を聞きました。これも被災したかどうかに関わらず、おそらく日本中の多くの子供たちに関わる話だと思うので、ご紹介します。

 まずは、大人の場合と同様、子供も怒りや不安などを表現することが大切です。ただ、子供は自分の感情をうまく言葉にできないことがあるので、そこは大人が助けてあげましょう。「こわかったね、つらかったね」と共感するのはもちろん、大人が自分の気持ちを子供に話すことで、子供は「ああ震災の話をしてもいいんだ」と気づきます。

私も子を持つ親なので、子供を安心させたいがために、極力震災の話はせずに楽しい時間を過ごさせてあげようとする親心はよくわかります。しかし、気持ちを吐き出す許可を与えてあげないと、子供はネガティブな気持ちを溜め込んでしまいます。ある程度大きい子供の場合、親を安心させるために平気を装うこともあるのです。

子供たちの気持ちをほぐしてあげると、会えなくなってしまったあの人たちは、天国にいるの? どうして死ななければいけなかったの? など、答えられない質問も出てくることでしょう。ホスピスでのガイドラインでは、周囲の大人はそこに無理矢理答えを出す必要はないとしています。「どうしてだろうね、わからないね」と子供たちと寄り添い、「どうしてだと思う?」と逆に尋ねてみるのも一つの方法です。その結果、子供が出す答えが非現実的なものでも、考える過程が子供にとっては現状を理解する助けになります

ではここで、年齢グループ別に、子供たちにどのような変化が起こりうるかを見ていきましょう。

  • 0~2歳:
    ミルクを飲まなくなったり、食欲がなくなったり、寝付きが悪くなったりします。トイレトレーニングのできていた子供が、おもらしをしてしまうこともあります。
  • 2~6歳
    既出の答えにくい質問をしてくる年代です。指しゃぶりなど、赤ちゃん返りすることもあるでしょう。理由なく大泣きするなど、感情が不安定になります。
  • 6~9歳
    想像力が豊かなこの年代は、災害はモンスターが起こしたものだとか、いい子にしていないとまたモンスターがやってくるかもしれない、などとおびえ、既に自室で一人で寝られていたのに、親のベッドに入りこんでくることもあります。
  • 9~12歳
    何が起こっているか理解できる年齢。死について深く考えることも出てきます。静かに物思いに耽っているように見えたら、スピリチュアルな世界に興味を持ち始めているかもしれません。大人の助けが必要に見えたときだけ、手を差し伸べましょう。
  • ティーンエイジャー
    「命って何だろう」と引き続き考える年代です。また、周囲からは大人と見られるために、子供のように甘えたり、怖がったりしてはいけないと強がってしまうこともあります。時には小さな子供のように泣いたっていいと、大人が包み込んであげましょう。


震災をどう受け止めるかは、子供一人一人によって違います。上記の年齢別の枠を超えた反応もあることでしょう。被災者の方々のご苦労はもちろん、直接被災していなくても、放射性物質を子供の口に入れないために必死になっている方々の気持ち、お察しします。今日よりいい明日が迎えられるように精一杯なお気持ちはわかりますが、今この瞬間、あなたのそばにいる子供たちの様子を、よく観察してみてください。なにかメッセージを出していたら、受け止めてあげてください。そして、こんな状況でも自分は守られているんだ、と気づかせてあげてください。

(山内純子)