グルーポンで倒産詐欺的案件

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倒産詐欺というものがある。金を集めるだけ集めて倒産し、それを返さずに済ませるという詐欺だ。グルーポンで、一歩間違えればこの倒産詐欺になりかねない出来事があったようなので、その経緯をメモ。

クーポン販売店舗、突然の閉店

舞台は日本GROUPONで、問題のクーポンは2010年9月に販売された『厳選京野菜や玄界灘の旬魚7品+ドリンク2杯』。提供は京都市下京区の「幕末維新館」という土産物屋と和風創作ダイニングを併設した店。クーポンの内容は2名で5700円のコースが半額の2800円になるというもの。購入者は165人だった。 このクーポン、当初設定された使用期間は9月28日から12月31日までだった。ところが11月9日に、GROUPON上で幕末維新館が11月28日で閉店するので、クーポンの使用期限も11月28日までに変更されるとの告知が行われる。

【ご購入のお客様へ 重要なお知らせ】(2010年11月09日) クーポンをご購入いただきまして、誠にありがとうございました。 この度、幕末維新館の事業転換に伴い2010年11月28日(日)をもって、 閉店することとなりました。 そのため、ご購入いただいたクーポンの利用期限が11月28日(日)迄となります。 ご購入していただいたにも関わらず、このような事態になってしまい、 誠に申し訳ございませんでした。 まだ、クーポンをご利用でないお客様で11月28日までに ご利用いただけない場合は、お問い合わせフォームより、 お客様サポートまでメールにてご連絡くださいませ。

販売済みクーポンの使用期間が後から短縮される時点で問題だが、告知から4日後、事態はさらに悪化する。13日、幕末維新館は翌14日で閉店し、クーポンを使った利用予約も既に受け付けていないと発表された。つまり、この時点でクーポンをまだ使っていなかった購入者は、手元にあるクーポンが紙切れになってしまったということだ。 GROUPON側の対応は素早く、また問題のないものだった。クーポンをまだ利用していない購入者に対して、全面的にキャンセル・返金を行うと決定、購入者全員にそのことを知らせるメールを送ったようだ。

【ご購入のお客様へ 重要なお知らせ】(2010年11月13日) 上記クーポン提供会社「幕末維新館」が2010年11月14日(日)をもって急遽閉店致します。 本クーポンのご利用予約は既に受付を終了しております。 本件を受け、未だクーポンを利用されていないお客様を対象に、弊社にて、全面的にキャンセル・返金対応をさせて頂くことが決定致しました。 詳細に関しましては、対象のお客様、皆様のご登録アドレスにお送り致しました、お知らせメールにてご確認頂けますと幸いでございます。

GROUPONと幕末維新館のあいだで何があったのか?

GROUPONと幕末維新館のあいだで何があったかは推測するほかないが、状況から見て、幕末維新館の資金繰りが悪化し、営業を続けられなくなった可能性も考えられる。9日に月末で閉店すると告知があり、その4日後には翌日の閉店に変更された経緯がそうした状況を予想させる。 仮にそうであれば、クーポンが販売された9月末の時点で、幕末維新館の経営状況がどうなっていたかが気にかかる。9月にクーポン販売が行われたということは、GROUPONと幕末維新館の間でクーポン販売契約が結ばれたのは8月から9月にかけて。11月に飛んだのだとすれば、その時点で、すでに幕末維新館の資金繰りは相当に悪化していたと思われる。経営立て直しのテコ入れとしてグルーポンに頼ったが、果たせなかったということだろう。 未使用クーポンの払い戻しによる損失額はたいしたものではないだろう。クーポンの使用開始からは1カ月以上たっているため、既に使ってしまった人が大半だと思われる。普通に考えれば幕末維新館側が返金費用を用意せねばならない状況だろうが、はたしてそうなっているかどうか。場合によっては、GROUPON側が全額立て替えているかもしれない。

事前の予想と今後に起こるだろうこと

共同購入クーポンサービス、いわゆるグルーポン系サービスは、ユーザーから先にお金を受け取り、実際のサービス提供はその後という仕組みとなっている。クーポンを提供する店舗は、一時的にキャッシュフローが大きく改善する。このあたりのことは以前にも書いた。 また、最近見かけたグルーポン系サービスでテレアポ営業をしていると名乗る方によるブログでも、キャッシュフローに焦点を当てた解説を行っていた。このエントリは今回の事態を予見したものになっていて興味深い。以下はその部分の引用。

フラッシュマーケティングサイトを使うと一瞬にして数十人から数百人分の売上が転がり込んでくるのでこれは毎月月末にヒイヒイ言いながら帳尻をあわせている飲食店にとってはまさに天から降りる蜘蛛の糸かのようにありがたい存在なのです。

そうするとこの形態ならではの問題も発生してくることになります。例えばこうした一時金を目当てにした店舗が計画倒産をするといった事例も今後出てくるかもしれません。

特に日本では尋常じゃないくらい飲食店がいっぱいあります。当然バックがヤバいお店もたくさんあるわけです。

そうなってきたときにどのような対応をするか、というのがこのモデルのビジネスを成功に導く一つの境目かもしれだと思います。

このエントリが書かれたのは11月8日。幕末維新館のクーポンで初めの告知が出る前日である。書いた翌日には予想したことが起きたわけだ。 今回の件は、「一時金を目当てにした店舗が計画倒産」というケースではないと思われる。ただ、それに近い事態が起きたことには変わりがなく、似たようなトラブルは今後も起こるだろう。そして、中には本当に初めから詐欺目的というケースも出てくるだろう。 グルーポン系サービスの乱立は歯止めがかからない状況だが、今回の出来事や、リクルートの野放図な運営などで、そろそろ市場を取り巻く環境も変わってくるのではないか。 ユーザー側の視点としては購入したクーポンが毀損した際に、サービス運営者がきちんとした対応を採ってくれるかどうかの見極めが必要になってきたと言える。繰り返しになるが、今回のような事態はいずれ起こるだろうと予想されていたし、今後も起きるだろう。そうしたなか、GROUPONは、ユーザー側の損失とならないよう責任ある行動をとった。市場のリーダーとして、それに相応しい姿勢を見せたといえ、そのことを賞賛したい。
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