バッチサイズ

ロットサイズで述べたのとほぼ同じことが、エリヤフ・ゴールドラットの「ザ・ゴール

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

にも述べられています。(「ザ・ゴール」の「Ⅶ 報告書」)

「・・・ところで昨日の晩、ジョナとまた話をしたよ」
「ずいぶん改善できたって報告されたんですか」
「ああ。そうしたら次のステップを試すように言われたよ。ジョナは『論理的ステップ』って呼んでいたがね」
 ステーシーの顔が少し曇った。「何ですか、その論理的ステップというのは」
「非ボトルネックのバッチサイズを半分にするんだ」
 ステーシーは考え込みながら、一歩後ろに下がった。「でも、どうしてですか」
「そのほうが、もっとお金が儲かるからだよ」私は、ニヤリと笑いながら答えた。
(中略)
 昨夜ジョナと電話で話したとき、資材が工場を通過する時間について彼からいろいろと説明を受けた。つまり資材が工場に入ったときから完成品の一部として工場から出て行くまでの時間のことだが、そのトータル時間を四つの段階に分けることが出来るというのだ。
 まずはセットアップ、つまり段取りで、機械や装置などのリソースの準備を行っている間だ。
 次はプロセスタイム、つまり処理時間だ。機械や装置などのリソースを使って部品への作業を行う時間で、これを経て部品はその形を変え、付加価値が高まる。
 三つ目はキュータイム、つまり部品の処理に必要な機械や装置などのリソースがほかの部品の処理を行っている間、その機械の前で列を作って待っている時間のことだ。
 四つ目はウェイトタイム。三つ目のキュータイムと同じ待ち時間なのだが、こちらはリソースを待っているのではなく、完成品に組み立てるのに必要なほかの部品が届けられるのを待っている時間だ。

まず、ここで切りますが、ここで述べられている内容は、「Factory Physics」の定義(ステーション・サイクルタイム)で述べている

  • サイクルタイム=搬送時間+キュー時間+セットアップ時間+処理時間+バッチ待ち時間+バッチ内待ち時間+部品待ち時間

と同様の内容です。しかし、若干異同があります。そのうちいくつかは翻訳の仕方で出てきた違いです。(左が「ザ・ゴール」、右が「Factory Physics」)

  • セットアップ⇔セットアップ時間
  • プロセスタイム⇔処理時間
  • キュータイム⇔キュー時間

しかし、次のは翻訳による違いには帰せられません。

  • ウェイトタイム⇔部品待ち時間(Factory Physicsの原文では「wait-to-match time」なので直訳は「マッチするのを待つ時間」です。私はこれを「部品待ち時間」と意訳しました。)

さらに本質的な違いとして、以下を指摘します。

  • 「ザ・ゴール」では搬送時間とバッチ待ち時間とバッチ内待ち時間が考慮されていない。しかし、このあと引用する文章を読めば、処理時間の中にバッチ待ち時間とバッチ内待ち時間を含めていることが分かります。(引用中の「バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間も半分になる」)

まとめますと、

  • 「ザ・ゴール」の方では搬送時間を考慮していない、バッチ待ち時間とバッチ内待ち時間の扱いが不十分である

ということになります。

引用を続けます。

 ジョナの説明では、どの部品でもそうなのだが、セットアップと処理時間に必要な時間は少なく、キュータイムとウエイトタイムの時間が長い。つまり部品が工場を通過するトータルな時間における、この二つの待ち時間の比重が大きい。(中略)そこでジョナは、現在のバッチサイズを半分の量にしろと言ったのだった。
 バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間も半分になる。つまりキュータイムとウエイトタイムも半分になり、結果、部品の工場通過時間も約半分に減らすことができる。通過時間が半分に減れば・・・。
「リードタイムの合計が圧縮され、仕掛りなどの在庫の待機時間が減ることで、部品の流れもスピードアップされる」と、私は集まったみんなに説明した。

ここで言っている「リードタイム」はFactory Physicsでいう「サイクルタイムのことです。基本的にFactory Physics法則(搬送バッチの構成)で言っていることと同じことを言っていることが分かると思います。

  • しかし、よく読むとここには不明確な点があると思います(きっとゴールドラットには自明のことだったのでしょうが)。それは
    • 「バッチサイズを半分にすれば、各バッチの処理時間も半分になる。つまりキュータイムとウエイトタイムも半分になり」
  • いうくだりです。どうしてバッチサイズを半分にすればキュータイムとウエイトタイムも半分になる、と言えるのでしょうか? これは、私の今後の今後の宿題のようです。

議論の継続