ソーシャル化を進めない企業は衰退化する・3 - @ogawakazuhiro

Google+は既に全世界で2000万人以上のユーザーを集めていますが、日本国内においては まだまだギークの玩具的な使い方にとどまっているかのように見えます。いえ、見えていました。

ところが、2011年8月9日 Google+は初の炎上事例とともに、やはり有力なソーシャルメディアであり強力なクチコミ発生源として注目を集めてしまいました。多くの読者は既にご存じであろうと思いますが、ポイント発行サイトのパイオニア企業であるネットマイルの社員がGoogle+を使って架空の人事面接実況を行い、その内容が対象者(実在はしていないとはいえ)の人格や境遇への嘲弄に終始していたことから、同社に対してネットユーザーからの抗議が集中した、というものです。
(詳細は 日経新聞のサイトの記事

本件は、同社の本業とは関係がなく、一社員の(常識では考えられないほど悪質な)悪ふざけによる「事故」であり、その社員個人の責任に帰結する問題ですが、やはり企業としては社会責任上および その社員の採用や従前の教育のあり方に関する道義的責任を免れません。そこでネットマイルは、問題発生後ほとんど時間を置かず、社長自ら調査報告と今後の具体機な対策についてのプレスリリースを行いました。
その対処の早さは、実に見事であり、真摯な対応であったと思います。

今回の事故は、G+から発生しました。G+はTwitter同様、クチコミの拡散=トラフィックの送出に力を置いて設計されているメディアです。当該社員はG+がまだまだ小さなコミュニティであると勘違いしたのかもしれませんが、インターネットはもはやカラオケボックスでも自分の家の風呂場でもなく、そこで歌えばありとあらゆる人に声が届きかねない開かれた公衆の場になっています。テレビ中継されている日比谷公園みたいなものです。

ホテルの従業員がTwitterで嵐の桜井翔さんの宿泊を暴露したり、フジテレビの韓流推しをBlogで批判した芸能人が事務所を解雇されたりと、最近ソーシャルメディア上の発言が物議を醸し出す事件が多発しています。企業がいくら情報管理をしようとしても社員のモラルやリテラシーが低く、ソーシャルメディアを不用意に利用してしまえば、その不始末の尻拭いは企業そのものがしなければならなくなります。

つまり、保守的な企業がソーシャルメディアを使う使わないと悩んでいても、ソーシャルというトレンドが持つ脅威(と、同じように大きなビジネスチャンス)の前に既にさらされているわけです。ソーシャルメディアに企業としてどう向き合うかを一刻も早く決めなければならないし、経営者も社員も、ソーシャルメディアに対する正当な感覚を身につけなければならない。もはや待ったなしなのです。

僕たちは、ソーシャルメディアを企業が使う上でまず重要なことは承認ワークフローだと考えて、SM3というツールを開発しました。ソーシャルメディアへの不用意な発言が企業の信用リスクに関わるからです。しかし、社員が自分自身のソーシャルネットワークに書き込むことを止めることは難しい。企業全体のカルチャーとして、いかにソーシャル化をするかを考えていくうえで、最も困難なエリアと言わざるをえませんが、同様の事故の対処法をいまから想定範囲内にしておかないかぎり、経営者としてはゆっくり枕を高くして寝られない時代になったと言えるでしょう・・・。

最後に。
起業家同士として、同時に友人としての発言ですが、ネットマイルの畑野社長は明るく誰に対しても偏見のない好人物です。彼は顧客と社員を非常に大事にする優秀な経営者であり、感覚的ではなく論理的に仕事を進めながらも重要な決断を素早く行える 大胆な起業家の一人です。その畑野社長にしても避け得なかった今回の事故は、すべての経営者に降り掛かる恐ろしいリスクであり、対岸の火事ではないと思っています。
逆に、今回の事故をどう切り抜けて、雨降って地固まるかのように さらなる自社の成長に結びつけていくかの畑野さんの手腕を、学ぶつもりでウォッチしていきたいと思っています。