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3冊の本から考える、9つのブログの心得

By: Mike LichtCC BY 2.0


倉下忠憲最近読んだ三冊の本が、どれも「個人」の情報発信を考える上で役に立つ内容でした。

一冊ずつ取り上げて詳しく紹介したい気持ちでいっぱいですが、年内に紹介しきれないことが確定してしまったので、簡単にそれぞれの本から3つだけトピックスを紹介してみることにします。

ちなみに三冊の本は以下。

  • 『メディア化する企業はなぜ強いのか?』
  • 『だから、僕らはこの働き方を選んだ』
  • 『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』

『メディア化する企業はなぜ強いのか?』

※現代のマーケティングはどのように行えばよいのかを「メディア化戦略」というキーワードを使いながら、消費者との関係性やコンテンツの生み出し方を紹介していく一冊です。

1.「情熱」が鍵

多くのデジタル・マーケティング系の解説書には書かれていませんが、優先順位として、コミュニケートする内容と発信者の情熱こそが最重要です。何を、なぜ、誰に、どうやって伝えたいのか、そんな伝えたい主体の想いがほかの類似情報との違いを作っていきます。

これを多くの人に知ってほしい、これだけは伝えたい、そういう想いの大きさがその他のコンテンツとの差別化につながります。書きたい気持ちが湧いてこない内容を無理して書くのは、単に苦痛だけでなく、そもそもコンテンツとして際立つポイントがないということにもつながってしまうわけです。

2.「伝達」を意識する

それに、どんなに高度なことを述べていても、それを理解・咀嚼し、相手によって翻訳し、伝達することが重要です。

内容そのものももちろん重要ですが、それを人に伝えるという一つの「結果」もまた重要です。難しいことを書いて「この人は難しいことを書く人だ」という認知を生むのが目的でないとすれば、読む人がわかりやすい形でコンテンツを提供することを意識しておいた方がよいでしょう。情報は「伝わってナンボ」です。

3.「継続」が大切

実はメディア化戦略でもっとも大切なことは、情報発信とコミュニケーションを継続させる努力です。

これはBlog界隈では何度も語られていることです。続けなければ意味ある効果を生み出すことはないでしょう。しかし、続けるのはなかなか難しいです。「不屈の意志」というレアなスキルを有していない限り、普通の人は継続の途中で挫折してしまう可能性は非常に高いと思います。逆に考えると、単に続けているだけでも、(続いていないBlogに対して)それなりに差別化できるとも言えます。

『だから、僕らはこの働き方を選んだ』

※「東京R不動産」というサイトの運営方式である「フリーエージェント・スタイル」が紹介されている一冊。この新しい働き方についてだけではなく、東京R不動産がどのような「哲学」を持って運営されているのかも併せて紹介されています。

4.「手間」を惜しまない

僕らは、物件のいい部分も悪い部分もフェアに誠実に伝えていく。「眺望はいいけど、設備はかなり古いです」といった具合にコメントし、写真をつけて説明する。そして、コメントは時として笑いを誘うような気軽なトーンで書いていく。
不動産屋の先輩たちには「そんな手間をかけたら割に合わないよ」と言われたけれど、僕らはその「体験そのもの」を伝えるために、一見面倒なことを続けている。

これは「無駄なことでもをやれ」というのとはちょっと違います。たとえばiPhoneのアプリの紹介の場合、画面をキャプチャーして、操作手順に詰まりそうな部分をきっちりとフォローしてあるような「丁寧」な記事と、単にテキストだけで説明してある記事を比べてみればわかります。どちらがより「読みたく」なるでしょうか。

もちろん、何でもかんでも丁寧にやればそれで良いということではなく、本当に重要なことには手間を惜しまない、という姿勢がコンテンツの魅力につながるのかもしれません。

5.「厳選」してみる

だから、オーナーさんや管理会社からの情報掲載の依頼に対しても、サイトに合わない場合はお断りすることになる。普通の不動産屋ではありえないことだから、たまに「偉そうに」と思われることもあるけれど、それこそが僕らのこだわりの生命線であり、頑固でなければいけないのだ。

なんでもかんでも受け入れると、どんどん「個性」が消え去っていきます。あえて書かないことを選ぶ、そういう姿勢もまた大切なのでしょう。

6.「目標」を二つ持つ

東京R不動産では毎年目標を設定するが、それはまったく違う二つの軸で決めている。

一つ目の軸が「おもしろさ」。「おもしろい物件があってこその東京R不動産なのだ」とも書かれていますが、この軸がぶれると、一体何のためにやっているのかが曖昧になってしまいます。

もう一つの軸が「数字」。こちらは単純に売り上げのことのようです。どれだけおもしろいことをやっていても売り上げがついてこなければ、事業として継続することはできません。

この両方の軸で、自分たちの活動を評価しておけば、マニアックになりすぎず、かといって義務的に仕事をする状況に陥ることもありません。

ブログでは、自分の興味・関心とアクセス数という二つの軸になるでしょうか。

『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』

※ロックバンド「グレイトフル・デッド」が行っていた活動から、現代でも使えるマーケティングの技法を紹介していく一冊。見た目はインパクトありますが、実用的なビジネス書です。

7.「観察」するが、追随しない

ほかの企業がやっていることに追随してビジネスモデルをまねするのは、革新をおこすよりもはるかに簡単だ。だが、それではダメだ。ライバルは観察すべきだが、ライバルと同じことをしたくなる誘惑には、全力で逆らわなければならない。

「パクる」というのは大切ですが、「丸パクリ」は避けた方がよいでしょう。そもそも「パクる」ためには相手を観察することが必要です。その観察から得られた洞察を自分のブログに適応するのはアリでしょうが、どんな意図があるのかもわからないまま、形だけまねしても先行きがありません。

8.「実験」し続ける

だが、出来の悪い演奏をしたとしても、保守的になることなく、新しい試みを繰り返した。挑戦し続けながらも、常に失敗から学んでいたのだ。

これは自分のおもしろさを追求することに関連しているかもしれません。新しい試みに挑戦しないと、きっと「飽きて」きます。おもしろさの追求と、「実験」感覚でいろいろやってみるというのはセットになっているかもしれません。

9.「変人」でOK

そして、ファンにとって最も重要なのが、自分と考え方の似た人々が集まる場の居心地の良さだった。

不特定多数の人__つまり顔の見えない誰か__に迎合するよりも、個性的な自分(つまりちょっと変わっている自分)をそのまま出していくのが一番の差別化につながるのでしょう。そしてそれは、似たような「個性的な他人」(つまりちょっと変わっているあの人)に強い共感を感じてもらえることもなります。

おわりに

ものすごい駆け足で三冊からトピックスを紹介してみました。

それぞれの本のテーマだけでなく、そこから「自分の情報発信にはどう使えるだろうか」という視点で読んでも得ることの多い本たちです。

全然紹介し足りない気持ちでいっぱいなので、詳しい話は実際に本を読んでみてください。

▼編集後記:
倉下忠憲



いよいよ年末ですね。そういう年の瀬の動きとはまったく関係なく淡々と毎日原稿を書いております。そういえば、MacBookAirが13に成長しました(買い換えただけです)。かなり画面が大きく感じられます。作業自体はやりやすくなったのですが、どうも「持ち歩こう」という気分が少し減ったような気がします。一長一短ですね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。