資料館
─中世の物価─

中世の物価(というよりルネサンス期ですが)
*「モンテーニュの旅日記」(1580年頃)に出て来る物価を
抜き出して円換算してみました。地域によって相場が違うので
おおよその参考としてご覧下さい。
「モンテーニュの旅日記」では旧貨幣の単位の価値を
1957年当時のアメリカ通貨に置き直しているため、
円に換算するにあたっては、現在のレートと1957年当時の
レートで換算し、幅を持たせて表示しました。

品 目 価 格 換 算(円) 備 考
樽1個 6ジュリオ 500〜1600 ピサでの買物
樽用銀のたが 3スクード 2700〜8100 同上
藤(とう)のステッキ 6ジュリオ 500〜1600 同上
壺とココナッツのコップ 8ジュリオ 700〜2100 同上
富くじ(リッファ) 50スー 900〜2700 当たりは地元の役者の衣裳類
薬泥(疥癬に塗る) 10スー 200円ぐらい
むく鳥1羽 1バイオッコ 10〜30 スズメより大きめ体長24cm
子牛の肉1リーヴル 3ソル 54〜162 1リーヴル=約450g
小兎 6ソル 108〜324
白鳥の羽(羽毛付の皮) 1.5スクード 1400〜4000 4枚で布団1枚分
香水1瓶 0.5エキュ 600〜1800 ヴィチェンツァの僧院が営業
宅配(荷馬車で20日間・重さ100リーヴルにつき) 4バイオッコ 4000〜10000 カプラローラ〜ミラノ400km強
1リーヴル=約450g
宅配100リーヴルにつき 1エキュ 1200〜3600 リモージュ〜ボルドー約200km
修行の支度金 43スクード 38000〜120000 ローマで5日間の剣術の修行
家賃(1ヶ月) 20ジュリオ 1800〜5400 ローマ、一人住まい
宿泊代(1ヶ月) 8スクード 7200〜21600 寝室4〜5室と台所付
宿泊代(1泊) 1エキュ 1200〜3600 馬の飼料別途130円程度
食事代(1回) 5バッツェン 200 ドイツ
風呂代(1回) 1.5バッツェン 60 ドイツ
薪10000ピエ 50ソル 900〜2700 1ピエは約30cm
ゴンドラ1艘(一昼夜) 17ソル 306〜918
馬(レンタル代)1頭 20ジュリオ 1800〜5400 ローマ〜ルッカ300km弱
馬(レンタル代)1頭1日 5ジュリオ 450〜1350 シェナ
馬(レンタル代)1頭1丁場 2ジュリオ 180〜540 1丁場8マイル、10〜13km程度
馬(レンタル代)1頭1駅 2〜5ジュリオ 180〜450 1駅50kmほど
荷車レンタル(1日) 3エキュ 3600〜10800
駕籠かき(1人引き) 1テストン 300〜800 モン・スニ峠から下り4km
駕籠かき(8人引き) 2エキュ 2400〜7200 同上
馬1頭 50エキュ 60000〜180000
連隊長の俸禄(1ヶ月) 16エキュ 19200〜57600
司教の収入 17000エキュ 1800万 年収か?(不確定)
枢機卿の収入(コンスタンツ) 40000エキュ 4800万 同上
修道院長の年金 50000フロリン 3600万〜1億
司教の城 100000エキュ 1億2000万程度 枢機卿クレシウス
オーストリア大公の年収 300000フロリン 2億程度

*「モンテーニュの旅日記」
「随想録」の著者モンテーニュ(1533-92)が
持病の治療のために、パリを発端としてスイス、ドイツ、イタリアへ
湯治の旅に出た際の克明な記録。1580年ボルドーで初版発行。

その他の資料「中世の食卓」「中世ヨーロッパの女性史」から
(物価修正しました。詳しくはこのページの下の方をご覧下さい)
品 目 価 格 換 算(円) 備 考
ローストマトンの肩肉又は脚 2.5ペンス 150円くらい1500円 1360年頃テムズ川流域
雄鳥を詰めたパイ 7〜8ペンス 550〜620円
5500〜6200円
同上
焼いたガチョウ1羽 7ペンス 550円くらい
5500円
同上
豚の丸焼き1頭 8ペンス 600円くらい
6000円
同上
焼き鳥10羽 8ペンス 600円くらい
6000円
同上
ローストピジョン(鳩)3羽 2.5ペンス 150円くらい
1500円
同上
牛1頭 10シリング 9000円くらい
90000円
=120ペンス。1440年頃
羊皮紙240枚 10シリング 9000円くらい
90000円
同上
労働者の日当 4ペンス 300円くらい
3000円
1440年頃
職人の一日の賃金 6ペンス 470円ぐらい
4700円
騎士の日当 2シリング 1800円程度
18000円
=24ペンス。1440年頃
砂糖1ポンド 18〜36ペンス 1400〜2800円
14000〜28000円
15世紀終わり頃
レモン240個 18〜36ペンス 1400〜2800円
14000〜28000円
15世紀終わり頃
*下記の資料とほぼ同時代なので同じく1ペンスを7.8円として換算した

中世の軍隊の報酬
(イングランド1170年、1340年、1416年の記録)
西洋騎士道辞典(原書房)236pより
品 目 価 格 換 算(円) 備 考
1170年の騎士の日給 8ペンス 600円
6000円
当時のペンス=今の40倍相当
今の1ペンス=1.95〜1.96円なので1ペンスを7.8円として換算

下記の注釈参照
1200年の騎士の日給 24〜30ペンス 1800〜2400円
18000〜24000円
この30年程で高騰した
リチャード1世(1157-99)時代の歩兵の日給 2〜3ペンス 160〜240円
1600〜2400円
同上 騎兵の日給 4〜6ペンス 320〜480円
3200〜4800円
1340年の騎馬弓兵の日給 6ペンス 480円
4800円
自分で馬を用意する場合
同上(馬を持っていない場合) 3ペンス 240円
2400円
1340年の平騎士の日給 2シリング 1900円
19000円
1シリング=12ペンス
1340年頃:6人の騎士と20人の武装兵、24人の弓兵で40日につき払っていた契約俸給→76ポンド 約60万円/40日
600万円
1416年ヘンリー5世がカレーの町の守備隊に払った報酬の明細
(ちなみに構成人数は守備隊長1人、騎士3人、騎兵26人、騎馬弓兵30人、いしゆみ兵40人、大工20人、
石工15人、鉛管工1人、瓦職人1人、砲手1人、その助手1人であり、下記の値段は一人当たりのもの)
守備隊長の日給 6シリング8ペンス 8100円
81000円
特別報酬100マルク/3ヶ月
年間313万円
騎士の日給 2シリング 1900円
19000円
特別報酬5マルク/3ヶ月
騎兵の日給 12ペンス 940円
9400円
騎馬の弓兵の日給 6ペンス 470円
4700円
いしゆみ兵の日給 8〜10ペンス 620〜780円
6200〜7800円
大工、石工、鉛管工、瓦職人、砲手のそれぞれの日給 12ペンス 940円
9400円
砲手の助手 6ペンス 470円
4700円

【ペンス→日本円レート変換の修正について】

イギリス中世の物価について、しらかわ様よりご指摘をいただきました(下記の枠内)。

吉田は、参考文献「西洋騎士道辞典」236pに、「今日の価値に換算するならば、
これらの金額は40倍に数える必要がある」という記述があったので40倍のレートで換算しましたが、
この時1ポンド=100ペンスで計算していました。1970年以前は1ポンド=240ペンスでした。
「西洋騎士道辞典」の初版発行が1968年で、翻訳の底本としたのは1977年の第三版ということで、
ちょうど1971年をまたいでおり、どちらの比率を加味した数字なのかわかりません。そこで、
しらかわ様のご意見(の下線の部分)を参考に算出した物価相場を赤い文字で併記することにしました。
この経緯を明らかにするために、吉田の算出した物価も残しました。
しらかわ様のHP「コインの散歩道」が大変参考になりますのでご覧下さい。

参考までに、How much is That Worth Today? に数値入力して調べたところ、
「1340年の1ペンスは1960年の3シリング10ペンス(46ペンス)」に相当し、また
「1340年の1ペンスは2002年の2.69ポンド(269ペンス)」に相当すると出ました。
「西洋騎士道辞典」出版の頃と現在の50年の間にもペンスの価値が激動していまして、
中世と現代のペンスと比較する上に日本円に換算するというのは
もともと難しい問題をいくつも含んでいることをご承知おきください。
他にもお気づきの点や参考資料がありましたら吉田までご一報ください。
ご指摘くださったしらかわ様、ありがとうございました。 (2004.5.8吉田)


■■■しらかわ様よりご指摘■■■(抜粋)
---------------(略)--------------------
……ところで、貴HPの中で、当時の1ペンス=今の40倍相当、とございますが、
私の調べましたところでは、このころと現在では消費者物価指数は約1000倍近く
になっております


http://www1.u-netsurf.ne.jp/~sirakawa/E014.htm
の最後にグラフで表示しています。

当時は1£=240ペンス、現在は1£=100ペンスであることを考慮しますと、
ペニーの価値は約400倍
です。
何か、1桁違うように思えますが、いかがでしょうか。
私の間違いでしたらご指摘お願いいたします。
兵士たちの日当が数百円では、あまりにも不自然ではないでしょうか。

私は、昔の物価を計るとき、庶民の収入で計るようにしています。
現代の収入は日雇い労働者で1日1万円、都会の大工さんで2万円が相場です。
これを元に、例えば当時の職人の日当が6ペンスであれば、1ペニーは現代の
3000円くらいかな、と推定しています。
当時の人たちの感覚を現代人の感覚と比べるにはこれが最適と考えております。いか
がでしょうか。