ナイジェリア人男性の再審請求、高裁が審理差し戻し 姫路の郵便局強盗事件

 兵庫県姫路市で平成13年に起きた郵便局強盗事件で強盗罪に問われ、懲役6年の実刑が確定したナイジェリア人男性(39)が服役後に申し立てた再審請求の即時抗告審で、大阪高裁(笹野明義裁判長)は15日、請求を棄却した神戸地裁姫路支部の決定を取り消し、審理を同地裁に差し戻す決定をした。姫路支部はこれまでの争点になかった認定をしており、「男性に主張、立証の機会が与えられず、審理が尽くされていない」と判断した。

 男性は13年6月にナイジェリア人の親族男性=実刑確定=と共謀して郵便局に押し入り、職員に模造拳銃を突きつけて現金2275万円を奪ったとして逮捕、起訴され、18年4月に最高裁で有罪が確定。出所後の24年3月に再審請求した。

 男性は一貫して無罪を主張。犯行を認めた親族男性も「共犯者は別のナイジェリア人だ」と証言し、目出し帽をかぶって郵便局を襲った実行犯2人のうち、もう1人が男性かどうかが最大の争点だった。

 弁護団は再審請求審で、2つの目出し帽に付着したDNAが、いずれも男性のものと一致しなかったとする鑑定結果を新証拠として提出。「実行犯は別人」と改めて訴えたが、姫路支部は26年3月、男性が管理する倉庫から被害金や犯行車両が見つかった点を重視。「男性が実行犯でないとしても、共犯の1人だと強く推認される」として請求を棄却していた。

 大阪高裁の決定理由で笹野裁判長は、これまで一度も争点になっていなかったにもかかわらず、姫路支部が実行犯以外の共犯の可能性に突如言及したと指摘。「主張、立証の機会を与えない不意打ちで、男性の防御権を侵害する違法なものだ」とした。さらに、再審請求審で弁護側が提出した新証拠について信用性などの検討も行われておらず、審理が尽くされていないと結論づけた。

 即時抗告審で弁護側は、ただちに再審開始決定に至らなくても、少なくとも審理を差し戻すべきだと要請していた。弁護人の山下潔弁護士は会見で「シンプルに再審開始としてもらいたかった」としつつも、「妥当な決定」と一定の評価をした。差し戻しの一報を聞いた男性は「ありがとう」と話したという。

 大阪高検の北川健太郎次席検事の話「決定内容を検討し、適切に対処する」

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