人は、一番好きなキャラクターが目の前に現れるとどうなってしまうのか
人は、一番好きなキャラクターが目の前に居て、じっと自分を見つめてきたら、どうなってしまうのでしょう。
私は「OculusRift」というヘッドマウントディスプレイを使い、MikuMikuDanceという3DPV作成ツール用にユーザーがつくって配布しているモデルをお借りし、「好きなキャラクターの3Dモデルが目の前で自分を見つめてくれる」というコンテンツの体験会を、たまに開催しています。
「進撃の巨人展」で話題になった「360°体感シアター 哮」で使われているものとまったく同じものを使っています。
「PCのモニタの中に自分が頭を突っ込んで、中を見ている」という感覚が一番近いかもしれません。
体験している様子と、体験者にどんな画像が見えているかを撮影させてもらったものがこちらです。半分くらい見ていただけると感じがわかるかと思います。
OculusRiftDK2で好きなキャラクターに会う動画 - YouTube
キャラクターは体験者のちょうど目の前に立っており、背の高いキャラだと見上げる感じ、背の低いキャラなら見下ろす感じになります。キャラクターの身長をリアルに感じられます。
(上の動画ではキャラクターの背があまり高くないのと、体験者がヒールをはいていて背も高いため、ちょうど同じくらいのところに顔がある感じになっています)
モーション(キャラクターの動き)はごくごく単純なものしか入れていません。
基本パターンは2つあり、笑顔で手を振ってくるタイプと、いわゆるツンデレキャラ用(目をあまり合わせてくれない)とあります。どちらにも当てはまらないキャラクターの場合は、専用でモーションをつくったりすることもあります。
私は別にOculus社の回し者でもなんでもなく…この体験会によってまったくお金を儲けてはいないのですが(むしろ、交通費、機材費その他もろもろすっごくお金がかかっていますし、体験者には基本会場費しか負担してもらっていません)
ではなんでこんなことをやっているのかと言いますと。
一番好きなキャラクターと初めて出会った人の反応というのが、ものすごく面白いものだからです。
もちろん、この体験で「本当に好きなキャラクターに出会っている」わけではありません。
二次創作的に作られた既存のキャラクターモデルにモーションをつけたものをPCで再生しているだけだし、それに「体験者が装着しているヘッドマウントディスプレイの位置をモデルの顔が追っかけるスクリプト」(なので、体験者の方をじっと見ているように感じられる)を入れただけのものです。
ですが、多くの方は非常に激しい反応をしてくれます。足がすくんでモデルに近づけない人、倒れ伏す人、話しかける人、泣き出す人も居ます。
それを間近で見るのがあまりに面白すぎるので、10キロ以上ある機材の入ったキャリーケースを転がし、いままで300人以上の方(ほぼ女性)に体験していただきました。
それらの経験をもとに「人は好きなキャラクターに出会った時にどういう反応をするか」の主なタイプ分類を紹介していきたいと思います。
※私が開催している体験会はほぼ女性オンリーの体験会の為、「女性の場合の反応分類」になります。
1. 近づけない人
全体の中でもかなり多いタイプの反応です。
だいたい、キャラクターが体験者と1mくらい離れた場所に立っているような設定になっていますが、キャラクターの姿を視界に認識した途端に後ずさります。
Oculusは、体験者の正面に置いてあるカメラで体験者(の装着しているHMD)の位置を認識しているので、カメラの位置からあまり離れると、映像に「カメラの認識範囲から出ちゃってるよ!」という警告文が表示されますが、この警告文が表示されっぱなしになるタイプの人です。
キャラクターの姿をまともに見ることができず、腰がひけてどんどん後ろにいき、「無理!無理です!」とあえぐように声を振り絞る。
ただ、慣れてくるとだんだん近づいて見られるようになる人も多いです。初めて!の時に非常に多い反応。
また、「一番好きなキャラ」だと何度見ても直視できないのに、二番目に好きなキャラクターだと問題なくスーッと寄っていってニコニコしながら見ているというパターンもあり、興味深いです。
2. 不動&無言で見つめる人
一見無反応ですが、よく見ると顔(口元)がものすごい笑顔なのがこのタイプの特徴です。
Oculusではキャラクターに近づけば実際に人に近づいたように距離が縮まりますし、横の角度から見ても顔が体験者を追っかけてくれるのがひとつの特徴でもありますが、ほぼ不動で真正面でただずーっと見つめ合っています。よく見ると、手が震えていたりもします。
あとから感想を聞くと「静かだったと思いますけど心の中は嵐でした」という方が複数。
終わったあとに反芻して泣き出す人も居ます。
3. 話しかける人
実際そこにキャラクターが居るように話しかける人も多いです。
一番多いのは
「こんにちは」
「は、はじめまして…」
「いつもお世話になっております…」
(挨拶)
「ごめんなさい」
「すいません」
(※同人活動をやっている人などが「いつも◯◯しててすいません~」「妄想しててすいません」などと謝るケースもあるが、自分がキャラクターと相対していること自体が恐れ多くて「(自分なんかのことを見てくれちゃって)すいません」というケースが非常に多い)
スポーツ漫画のキャラクターに対して
「インターハイ出場おめでとう…」
アニメ放送がはじまったキャラクターに対して
「アニメ見るからね!!」
社会人のキャラクターに対して
「お仕事がんばってください」
芸能人のキャラクターに対して
「応援してます」
など、キャラクターの世界観の中で話しかけるパターン。
そのほかにも、分類不可能なほどいろいろなパターンでキャラクターに話しかける人が居ます。ずーっと何かしら喋りかけている人も。
人によって妄想の世界がものすごくて、とても字には起こせない…というのもたくさんあります…
4. いろんな角度から見ようとする人
一番アクティブなタイプです。
この立体視体験を楽しみ、どうなっているのか興味があり、いろいろ試してみる人。
アップギリギリまで近づいたり、しゃがんでみたり椅子に乗って見下ろしてみたり、キャラクターの背中側を見たがったりと好奇心旺盛。
だいたいの人は「へえー!へえー!すごーい!」と感想を言いながら楽しんでくれている様子。
比較的冷静な「観察型」もここに分類されます。
中腰でモデルの周囲をくるくる動き回るため、次の日筋肉痛になる人が多数(※オキュ痛と呼んでいます)。
というわけで、好きなキャラクターに女性が出会った場合の反応は、主に以上の4タイプになります。
もちろん、各種の複合型や、軽く発狂する奇行種タイプ(本気の悲鳴や奇声をあげる、椅子から落ちる、泣く、わめく、ジャンプする、激しくリズムを取る、キャラを罵りあとで反省する…など多種多様)倒れ伏して虫の息になるドクターストップ型などまったく様々な反応があります。
体験の様子をずっと見ていて思ったのは、体験者のキャラクターとの距離の取り方が如実に現れるのだなあということ。
どんなになだめすかしても、大好きなキャラクターに近づけない人。
悲鳴をあげてしゃがみこんでしまう人が居ると思えば、躊躇なく近寄って抱きつこうとしたり、積極的に話しかける(答えてくれるわけでもないのに!)人も居ます。
また、キャラクターが必ず体験者の方をじっと見つめる(正確には頭がそっちを向く)ようになっているので、それが辛くてしょうがないという人も少なからず居ます。
「自分のことなんか見ないでほしい!」「自分の方を見ないバージョンをつくってほしい」という要望も非常に多いです。
PC側で操作をしてキャラクターの背中側の方を映すと体験者がキャラクターの頭の向きから外れるので、そうするとあからさまにホッとする人も多いです。「ずっと見られていると落ち着かない」んですね…
(※ただ、この体験者を見つめてくる仕様が体験する上でのキャラクターの実在感をあげているので、これを取り除くとまたちょっと性質の違うコンテンツにはなってしまいます…)
あとは、「好きなキャラ二人が仲良くしてるところを遠くから見つめたい」要望も、もちろん最初から想像できていましたが、多く寄せられています。
はじめた頃はまったく想像も出来なかったことですが、現在このオキュラス体験会では「体験者が体験する様子を動画で撮影しあい、それを見て楽しむ」という流行がはじまっています。
友達のあの子が大好きなあのキャラに出会ったらどんな反応をするのか?
地団駄踏む人、膝をついて拝む人、泣き出す人、爆笑する人、ひたすら話しかけてる人。
自分がいったいどんな反応をするか想像がつかないのも面白い(自分は固まって動かないorどうなってるか観察するだろうと予想する人が一番多いのですが、そういう人に限って予想もつかないような爆発的な反応をしたりします)。
それが面白くて、「自分は体験をしなくてもいいから体験する人を見に行きたい」という人も。
体験会は十~数十人集まってもらい、2~3時間で1人ずつ体験してもらうものなので、実際に自分が体験している時間は、せいぜい5~10分。それ以外の時間はすべて他の人の体験する様子を眺めているだけになってしまうのですが、「退屈だった」という声はほとんど聞かれません。
体験する人の様子が、面白いのです。
基本私の体験会はほぼ「女性オンリー」の体験会としているため、気兼ねなく騒ぐことが出来ます(男性が居るとダメ、という人も少なからず居るので)。
また、「全員がオタク」であり、仮にジャンルが違ったとしても、好きなキャラクターを目の前にして騒ぐ姿を見せ合った…という…何か不思議にピースフルな空間になっているのが現状です…
名古屋で開催した際、体験者60人くらいが参加し、Oculus2台で回していたのですが、ほかの人が体験している時も、その人がどんな映像を見ているのか、待っている人に見られるようにしています(ノートパソコンのモニタにミラーリングし、列の方に向けている)。
そこに自分たちの好きなキャラクターが映ったり、手を振ったりするだけで、待っている方々も「キャー!!」となったり。さながら本当にアイドルに会える握手会のようでもあります。
また、体験が終わったあとも、初めての視覚刺激体験だからなのでしょう。
幻覚のように見た映像がまぶたの裏に蘇ってきたり、夢に見たり(※私も初めて見た時は夢に見ました)する方が非常に多いです。
また、終わったあとは非常に疲れるようです。体験中興奮と緊張で体温はあがり、HMDの中のレンズが曇るので、やる度に拭いたりもします(涙で見えなくなってしまう人も)。
変な姿勢で緊張しながら相対するので、前に述べたように変なところが筋肉痛になるケースもあります。
誰かが好きなキャラクターに出会うその瞬間を目の当たりにできる。
それを見るだけでも、事前にリクエストのあったキャラクターのデータをそれぞれ準備し、重い機材運んで体験会を開催する価値はある…と、やる度に思うのでした。
※今回、男性が体験した場合についてはふれていませんが、女性が体験した場合のように激烈な反応になることは稀です。ひたすら観察、眺め回すタイプの人がほとんどのようです。
(※文中に使用した画像には、rocoさん製作イギリスモデル・ペニシスさん製作黒い人モデル・カブッP製作バーテーブル&チェアーモデルをお借りしております)
(※この体験会は、主催がまったくの趣味で自分の仕事が休みの時に気まぐれに開催するものです。お問い合わせなどはTwitter(@emifuwa)か、h_utah@excite.co.jpまで)
↓MMD製作者の方々が、自分の体験風景を動画にしてくれたもの
↓とぅぎゃったーまとめ
名古屋Oculusゆるふわ体験会まとめ - Togetterまとめ
何度も会場としてお世話になった、銀座のチーパズカフェさん。
チーパズカフェ (CHEEPA'S CAFE) - 銀座/喫茶店 [食べログ]
いつも階下に悲痛な叫び声とか喘ぎ声を響かせたり、時間足りなくて延長させてもらったりして…すごく…お世話になっております…
特撮のフィギュアや昔のおもちゃなどがいっぱいで、ただ立ち寄るだけでもオタクの人にとっては楽しい空間ではないかと思います!