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2011年9月9日10時32分
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「川上未映子 おめかしの引力」

ブラジャー革命、その後

川上未映子

 前回、わたしは当コラムで、欧米諸国の女性たちが夏場などけっこう自由に乳首を解放しているのに比して日本女性のかたくななまでの乳首保守、それに先立つあらゆる方面の抑圧を憂うべき事実として「日本同時ノーブラ革命」を叫んだわけなのだが気づけば夏も終了し、もう少しすると「ブラジャーって冬とか暖かくて重宝するよね!」みたいなことになるはずで、つまり今年の夏も革命は成就されなかったのであった。なむ。

 しかし「あ、あなたたちは乳首のことしか考えていないのですか」と突っ込みたくなるほどの大反響をいただき、多くの男性の感想は「そんなの女性が自意識過剰になってるだけ、もっと堂々とすればいい」とか、まあ推して知るべしの内容が多かったのだけれど、女性からの反応はまことに励みになりかつ力強く、分析力と実践力に富むもので、乳首の価値論から状況論、ブラジャーの起源と歴史に触れつつ今後の対策を示唆するものなど頼もしい限り。

 やはり夏場のブラジャーの半ば義務化した装着は多くの女性の問題であったのだという思いを強くし、現在は欧米に住んでいる友人たちにもリサーチして「いかにしてノーブラは可能か」を練ってるところ。そして隗(かい)より始めよ&地味に実践もしていて、例えばコンビニなどにはノーブラで出かけるようになったのである! しかし刷りこまれた保守精神はしぶといもので胸のところで組んだ腕を外すことができず歯ぎしりしながら店内を一周して帰ってくるだけ、という何とも情けない現状ではあるのだった。今後については別途の報告を待たれたい。

 しかしネットでのあまりの伝言ゲームっぷりには驚き仰天。「まずはわたしが率先してやらねばならないのか」がいつのまにか「透け透け乳首で講演とかしよっかなあ!」とかになっててマジでどんだけー(←死語だね)。ご意見お待ちしてます!(作家)

プロフィール

川上未映子(かわかみ・みえこ)

作家。76年生まれ。08年「乳と卵」で芥川賞受賞。歌手としても活動する。

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