年末年始、ネット通販活況 帰省中も携帯で購入
故郷で「カニ」、年明けはダイエット商品
百貨店、スーパー、専門店、ショッピングセンターなどの年末年始商戦は「節約疲れ」を反映してか、久しぶりの活況を呈したようだった。だが前年同期比で見た伸び率たるや数%増。1桁の世界をよそに2桁の伸びを示しているのがインターネットの世界だ。知られざる年末年始のネット商戦をのぞいてみよう。
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ヤフーのショッピングサイト。昨年12月28日から1月4日までの売上高は前年同期比40%増を記録した。福袋を12月中旬から売り出したり、ポイントサービスを手厚くしたり消費者の買い気をそそる販促が奏功した。
コンシューマ事業統括本部の北見典子氏が目を丸くしたのがカニの売れ行きだ。年末年始の分野別販売ランキングを作成したところ、鍋部門では「カニ」が上位を占拠。「ズワイ」「タラバ」「カニ味噌」など、まさにカニづくし。価格帯は5000円から1万円前後が目立った。
「こんなに日本人がカニ好きだとは知りませんでした」と北見氏。もっと調べていくと注文主の住所と届け先が違うことに気がついた。食べる場所は帰省先と推察する。
鮮度管理が必要でカニが入った包装容器を手にして電車や飛行機に乗るのは大変だ。翌日到着など配送体制が整備されてきており、帰省先に商品を送ってしまえば煩わしさから解放される。
帰省先や行楽地でもネットでの買い物は盛んなようだ。自宅や会社などで使い慣れたネット環境ではないが、携帯電話やスマートフォン(高機能携帯端末)などのモバイル系が補ってくれる。ヤフーによると通常はネット通販に占めるモバイル系の割合は20%だが、年末年始だと30%に跳ね上がった。
年末年始に「ネットの"売り場"ががらりと変わる」と指摘するのは楽天のマーケティング部、菊地俊介氏だ。年末にはCD、DVD、書籍が通常よりも1.5倍の売り上げとなった。時間の余裕のある時期に音楽・映画鑑賞、読書を楽しみたいと考えるからだ。
一方、年が明けて売り上げが伸びるのがダイエット関連商品。おせち料理の食べ過ぎか、一年の計をダイエットとする消費者が多いとみる。
百貨店を中心に購入単価が上がる「節約疲れ現象」があったが、ネット通販ではあまり見られない。「安くてよい商品を上手に探す人が増えている」(楽天、ヤフー)。節約疲れでなく節約を楽しんでいる様子だ。
佐川急便では、昨年12月21日から1月5日までの「e―コレクト」の扱い個数が590万と前年同期比で8.8%増だった。配送と同時に代金引換業務も受託するサービスはネット通販での利用が主体。年末年始のネット通販の盛り上がりが扱い個数を押し上げた。
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ネット通販では遅配などのトラブルも散見されたが、"24時間営業"の便利さは無視できない。ネットを含め幅広い販売チャネルを持つセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は「買い物の仕方がものすごいスピードで変わっている」と語る。昔の年末年始とは様変わりの商いの風景に驚きを隠さない。
(編集委員 田中陽)
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