「パネルクイズ

 アタック25」は今年4月で、放送スタートから37年目に突入する長寿番組。俳優・児玉清(77)の司会ぶりがお笑い芸人・博多華丸にモノマネされるなど、国民的人気を誇るが、番組の成り立ちはいくつかの偶然が重なった結果でもあった。

 児玉清

 それまで私は、ABCのライバル・毎日放送で「クイズ・イエス・ノー」というクイズの司会をしていたんです。でも、正直なところ成功したとは言えなかった。解答者をいじることが不得手な司会の私に問題があるとも言われてました。そんな時に“腸捻転”の解消がやってきたのです。

 現在はテレビ朝日(東京)とABC(大阪)がネットワークを組んでいるが、1975年(昭50)3月まで、ABCはTBSと、テレビ朝日は毎日放送と系列だった。4月からABC―テレ朝、毎日―TBSと現行のスタイルに改められたが、これを機に「ABCで新しいクイズ番組を」との企画があがったのだ。

 児玉

 関係者の方々が児玉清の司会で新番組を、と働きかけてくれたのですが「クイズ・イエス・ノー」がうまくいかなかったため、私はお断りしました。にもかかわらず、再度「そんな固いこと言わんと」と大阪弁で説得されて、ようやく決まったのが「アタック25」だったのです。

 ライバル局での苦い経験、スポンサーやスタッフの粘り強さ、そして何より腸捻転の解消がなければ、生まれていなかった番組だった。4人の解答者が25枚のパネルを取り合い、勝者を決めるユニークなクイズはやがて人気上昇。36年間でわずか2回、病気のため欠席したことはあったが、児玉にとってのライフワークとなる。司会の仕事が俳優人生にも大きなプラスを与え、いくつもの壁を乗り越えられたという。

 AD、ディレクター、プロデューサーとして番組に関わった岩城正良(48)は、児玉の持つ公正さ、紳士的な態度が人気の秘密だと証言する。

 岩城

 バラエティーに走ることなく、クイズ本来の姿をぶれずに守っている姿が視聴者に支持されているものと思います。だからこそ、年間2万人、3万人もの方が「私も出場したい」と応募されるんです。

 公正さ、紳士的…。それは一般的な児玉のイメージでもあるのだが、彼自身の考えはやや違っている。

 児玉

 40歳から「アタック25」の司会を続けてるんですが、まだ“勝利の方程式”は見つからない。収録後は毎回、反省ばかりです。この番組が「よくできているなあ」と感心するのは、それぞれの人間が表れるからだと思うんです。だから、4人の解答者の誰かに肩入れしてしまったり、逆にダメ出しすることもあったりと、実は結構わがままな司会者なんですよ。家ではカミさん(元女優の北川町子)に「ほら、顔に出ている」と叱られてるんです(笑い)。まだまだ未熟ですよ。【三宅敏】

 ※2011年2月19日

 日刊スポーツ大阪版より