電力制限、除外・緩和対象30分野の全容発表
15%使用制限、7月1日から 経産省
経済産業省は25日、東京電力と東北電力の管内で、瞬間最大使用電力の制限を7月1日に始めると発表した。工場など大口需要家に対し、昨夏ピーク時に比べ原則15%の節電を求める。ただ被災地の市民生活や企業活動への影響を抑えるため、企業のデータセンターや旅館・ホテル、病院など約30分野は例外として節電幅の縮小を認める。
使用制限は契約電力500キロワット以上の工場など合計2万の大口需要家が対象になる。東電管内は9月22日、東北電管内は9月9日まで、平日午前9時~午後8時に実施する。海江田万里経産相は25日、記者団に「産業界に迷惑をかけるが、節電の工夫をしてもらい、日本経済の活性化を維持してほしい」と述べた。
制限違反には100万円以下の罰金を科す。テナントビルでは家主が使用制限の対象になるが、入居者の節電が不十分で15%削減が達成できない懸念もある。経産省は「家主が故意に違反したと認められない場合は、罰金の対象にならない」と解釈している。
緊急患者の治療に当たっている病院や避難所は制限の対象から外す。節電幅の縮小を認めるのは(1)病院など生命・身体の安全確保に必要な施設(2)鉄道やデータセンターなど経済・社会生活に必要な施設(3)自治体庁舎など被災地の復旧・復興に不可欠な施設――の3種類。
電力使用制限の緩和対象となる施設の節電幅は0%、5%、10%の3段階とする。0%は最大使用電力を昨夏のピーク時以下に抑えるという意味で、無制限に電力を使えるわけではない。企業の工場と本社などで使用電力を合算し、合計15%減れば節電を達成したとみなす仕組みも導入する。
経産省は6月1日に電力制限の対象事業所に、最大使用電力の削減幅などを通知する。制限緩和の適用を求めたり、他の事業所と共同で節電を達成しようとするなどの場合は、6月17日までに申請する必要がある。
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電力使用制限令の除外・緩和対象一覧(適用除外以外は0%でも申請が必要)
(1)適用除外
救急患者を治療する医療施設
災害救助法で設置された避難所
東京電力福島第1原子力発電所事故の警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域内
(2)生命・身体の安全確保に不可欠な施設
医療施設…0%
医薬品・医療機器関連…0%
老人福祉施設、介護施設、障害者施設…0%
補助金により地方自治体が実施する抗排水処理事業…0%
上下水道施設など…5%
産業廃棄物処理施設…5%
火葬場、とちく場…10%
(3)安定的な経済活動・社会生活に不可欠な施設
データセンター、金融機関など情報処理システム…0~10%
クリーンルームや電解施設を持つ工場…0~10%
交通 鉄道 12~15時…15%、それ以外…0%
東北・長野・上越・東海道新幹線、青函トンネル…0%
ローカル路線 片道3本/時…0%、片道4.5本/時…5%
航空 航空保安施設、ターミナルビル…5%
物流 定温・冷蔵倉庫、貯蔵槽倉庫、冷蔵室を持つ飲食料卸売業…5%
中央・地方卸売市場…5%
港湾運送施設…5%
宿泊 ホテル・旅館…10%
エネルギー供給 発電に必要なガス供給施設…0%
発電所に送水する工業用水…5%
その他 一般紙の夕刊印刷工場 12~15時…0%
夕刊紙の印刷工場 10時~12時…0%
(4)被災地の復旧・復興に不可欠な施設
被災地の公共機関、地方公共団体の庁舎、県警本部…0%
被災地の鉄道路線…0%
被災者支援にあたる郵便局、金融機関など…0%
がれきなど災害廃棄物を処理する施設…契約電力上限
失業した被災者を5名以上雇用する事業所…0%
原子力災害の分析事業のための施設…5%
(5)その他
一括受電マンション…契約電力上限
▽3月11日以降、今夏の電力使用抑制のために東京電力・東北電力管外に移転した需要設備について、同一法人の他の需要設備の削減量に考慮
▽設備の検査等により基準期間・時間帯の使用最大電力の値が契約電力に比して著しく低い場合の基準電力値を契約電力とする緩和措置
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