アドビ システムズがWeb制作者向けに開催した「Create The Web」の基調講演に、同社Webプラットフォーム・オーサリング担当シニアディレクターのアロノ ゴルド氏が登壇した。

アロノ ゴルド氏

「Adobe Edge」を無料提供

この基調講演では、Flashの操作感でHTML5アニメーションを作成できるソフトウェア「Adobe Edge Animate」を含む「Adobe Edge」ブランドのソフトウェアならびにツール群について、「Adobe Creative Cloud」に無料登録するだけで使用できることがトピックスとして挙げられた。終始英語でプレゼンテーションをしていた同氏は、このアナウンスについてのみ「無料です!」と日本語で声を張り上げた。

「Adobe Edge」ブランドのソフトウェアならびにツール群

「Creative Cloud」を通じた新たな提供方法

2012年4月から始まった「Creative Cloud」は、同社のソフトウェアの新たな提供方法だ。これまで、ユーザーはパッケージを購入し、バージョンが変わる場合はアップグレードを行っていた。その際、前バージョンを所有していれば価格面で優待されるものの、新たにソフトウェアを購入する必要があった。

だが、「Creative Cloud」ではソフトウェアの購入方法が一新され、月額支払いでソフトウェアの使用権を得るサブスクリプション形式になっている。そのため、毎月支払いをしていれば、常に最新のバージョンが使用できる。今回、「Adobe Edge」は「Creative Cloud」に追加される形でリリースされており、「Creative Cloud」には有償アカウントだけでなく無料アカウントもあるため、「Adobe Edge」ブランドのソフトウェアやツール群の初回バージョンなどについては、無料アカウントに登録するだけで使用可能となるのだ。

「Adobe Edge」ブランドの理念

ドキュメンテーションプロジェクト「webplatform.org」始動

この基調講演で発表されたトピックの中でも重要なもののひとつに、「webplatform.org」が挙げられる。

Web制作において、クリエイターは様々なドキュメントを参照しなければいけないが、それらのドキュメントはWeb上の様々な場所に散らばっている。しかも、すでに古くなってしまったものもあれば、はじめから間違っているものも存在する。Web制作における多くの時間が、正しいドキュメントを探すことに費やされている現状を打開するために立ち上げられたプロジェクトが、この「webplatform.org」だ。

Web制作における最新かつ正しい情報の集積場となるべく立ち上げられたプロジェクト「webplatform.org」

ゴルド氏は同プロジェクトについて、「Web制作に必要なすべての情報が、正しく新しい状態で集められる場所」だと表現した。壮大なプロジェクトであるが、参加している企業の顔ぶれを見ると、決して夢物語ではないのではないかと感じた。標準化団体としてW3Cが、企業として同社やFacebook、Google、hp、Microsoft、NOKIA、Opera、そしてFirefoxを開発するmozillaが参加しているからだ。

コミュニティ・ユーザーと対話する姿勢

基調講演を通して何度も強調されたこととして、「コミュニティの貢献」ということがある。「webplatform.org」はユーザーが編集できる「Wikipedia」と同様のシステムを利用している。また、「Adobe Edge Code」はオープンソースプロジェクトの「Brackets」を元にしているし、そのほかにも「GitHub」でホスティングされ、ユーザーが提案できる状態にされているプロジェクトがいくつも存在する。また、「Creative Cloud」自体の仕組みも、ユーザーのフィードバックを得やすいようになっている。

アドビはWebをさらに進歩させる

アドビはこれまでも、Web制作において重要なソフトウェアを提供してきた。ゴルド氏は、これからのアドビはWebというプラットフォームに対して働きかけていき、よりよいものにしていくと語った。

オープンソース化も、「Adobe Edge」の無償での提供も、そしてフィードバックやコミュニティへの貢献も、ひとえにWebプラットフォームをより良くしていくという方針に沿ったものである。「Webplatform.org」はそれがひとつの形になったものといえるだろう。

これから、同社がどのようにWebを進化させていこうとするのか、注目されるところだ。

取材・執筆:赤澤仁士