非国民通信

ノーモア・コイズミ

何が小泉や橋下の同類を当選させるのか

2009-05-26 23:02:22 | 編集雑記・小ネタ

 今日は他所様のブログを引き合いに、ちょっと思ったことを書いてみます。

「河村たかしと鳩山由紀夫」…THE FACTSと憲法審査会容認と九条と - dr.stoneflyの戯れ言

 名古屋市長選では民主推薦の河村たかしが開票前当確をはたし、ぼちぼちと市政をしているが、市長選最中ワタシはエントリーで「居酒屋談議のような公約をしている」ことと、「THE FACTSに署名している歴史修正主義者」であること、さらには「新自由主義」だろうことを書き、牽制した。さらには、民主と言うだけでFACTS河村を推す全国のブロガーを批判した。そしてFACTSが許せず、ワタシ自身はやはり「死に票」を投じた。

 ……私もまぁ、思うところは大体同じ様なものです。もっとも私は名古屋市民ではないので、河村たかし本人よりも専ら「民主と言うだけでFACTS河村を推す全国のブロガー」を論じる文脈でしか取り上げていないわけですが。

 で、ツレでありお客様であるW氏に何を叱られたかというと、名古屋市政と今直接関係ないFACTSにこだわるのはおかしい、官僚のためと箱物と大企業べったりのアホ市政を打破できるのは河村しかいない。自分も別に河村は好きではないが、とにかく今、アホ松原の金をドブに捨てるアホ市政を崩壊させなければならない、FACTSという一面もあるかもしれないが、人は変われるんだ、……と叱られたのね。う~~ん、毒をもってドクを制す、かぁ~。

 赤の他人である私が、公人でも何でもないdr.stonefly氏の知人を論じるのもナンですが、このW氏の見解には少なからず問題があります。要するにW氏の言っていることはアレですよね、今の政治状況を「どげんかせんといかん」から、その状態を「改革」するための「痛み」には目を瞑れ、と。こういう考え方が小泉を生み、東国原を生み、橋下を生み、そして同類である河村たかしを当選させたわけです。この手の「考え方」が変わらないことには、それこそどうにもならないような気がします。

 先日は手段が目的化している云々という話を書きましたが、また別の問題として「目的が手段を正当化する」パターンもあるでしょうか。構造改革が必要なのだから、その目的を達成するためには「痛みを伴う」方法論=手段もやむを得ないものとして受け容れられるべき等々ですね。しかし「目的」に正当性、必然性があったとしても、その目的を果たすためならば諸々の犠牲も許される、「犠牲」を省みないことが許されるのでしょうか? 仮にその犠牲が避けられないものであったとしても、「犠牲」を生まないように努力することは当然、求められてしかるべきです。

 ところが、しばしば起ることですが「目的」に対する熱狂は人々を盲目にします。「目的」を果たすことが最優先であり、そのための手段は問わない、いかに目的を実行できるかが全てになってしまう。そして「目的」を実現するための手段の是非を語ると、往々にして「目的」に反対しているのかと論難されるものです。例えば政権交代を目的とする場合――政権交代のための最短経路として民主党に票を集めろ、共産党は民主党に道を譲れと、こうした「手段」が説かれるわけです。そこで共産党/支持層は「手段」に対して異議を唱えます――その方法はどうだろうか?と。すると返ってくる答えはこうです――「お前達は政権交代に反対しているのか!」

 その辺まで至ると、おそらく「目的が手段を正当化する」というより「目的を掲げることで手段を正当化する」と呼んだ方が良さそうです。小泉/竹中の構造改革だってそんなものではなかったでしょうか。何でもかんでも「構造改革」のためと称して、無理を押し通していたものです。その「無理」に反対の声を上げれば、改革に反対する「抵抗勢力」と呼ばれたわけですから。錦の御旗で異論を封じ込める、そうやって「敵」を排除して権力を確立する、それも改革の一種なのでしょう。

・・・・・・

 後は細かいことになりますが、W氏の「名古屋市政と今直接関係ないFACTSにこだわるのはおかしい」というのも、ちょっと都合のいい発言ですよね。歴史修正主義者であっても、それを隠しているような人物であれば、市長在任中も継続して隠し通すかも知れませんが、河村の場合は歴史修正主義者であることを世界に公言しているわけであり、決してそれを改めていないわけですから。そして歴史修正主義者であることは、その人物が知的に誠実であると「期待できない」ことを保証するはずです。起ったことをありのままに受け止める人物であれば歴史修正主義者ではいられない、そうではなく、起ったことを「自分に都合良く解釈し、自分に都合良く塗り替える」人物だからこそ歴史修正主義者なのです。過去に目を閉ざす人であれば当然、眼前に展開される「現在」に対しても、歪んだ目でしか見ることができないわけです。「知的で誠実であればナチでは無い」「知的でナチであれば誠実では無い」「誠実でナチであれば知的では無い」という小ネタは哲学者のヤスパースが語った、あるいはドイツのジョークだとか、元はソ連のアネクドートの変形だとか言われますが、いずれにせよナチではなく歴史修正主義者にも当て嵌まるでしょう。

 それから「~を打破できるのは河村しかいない」というのもまた、小泉や橋下を歓迎した時と全く同じ言い分です。まず「とにかく現状はダメなんだ」という非常事態宣言から始まります。橋下の時は顕著でしたね。橋下や支持層だけではなく、メディアも一斉に「大阪の危機」を演出しました。そして「非常事態」であるからには「普通の人(政治家)ではダメ」→「多少の問題がある人物でも、何か型破りなタイプではないと危機を乗り越えられない」となるわけです。実際のところ、政治に特効薬があるはずもなく地道に問題を一つ一つ片付けていくしかないと思いますが、しかるに煽られた危機に狂奔する人々は、弱い薬ではもうダメだと特効薬に手を伸ばすのでしょう。そうして、劇薬を掴むわけです。それで失敗したら? いつものことです。「官僚(抵抗勢力)が悪い!」と。そうやって自分の選択基準など省みないわけです。

 

 ←応援よろしくお願いします


コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 仕事が上手く運べば暇になる... | トップ | お金を動かせ、お金は疲れない »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB感謝 (dr.stonefly)
2009-05-27 10:18:54
 おはようございます。
 拙エントリーを取り上げ思索して頂き感謝です。ワタシのエントリーの舌足らずの部分を解り易く丁寧に書いて頂き、ありがとうございました。
 ただ、W氏が、これを読んだとしたら、何を言われるかドキドキしていますが…(笑)。(たのむから仕事はくれ~、爆!! あ、すみません、取り乱しました、失礼)。
 まあ、たまたまW氏が言ったこととしてクローズアップされていますが、むしろW氏の言った事がマジョリティであり、その大勢に異を唱えたと解釈します。
 マジョリティどころか、あれだけコイズミを批判したブロガーが、、、、という思いはあり、さらには護憲を掲げるブロガーはどう考えているのか、と考えていますが、繰り返しになるのでやめます。

 ただ、ひとつW氏の言った「人は変われるんだ」という言葉。これを忘れてはいけないと考えます。ワタシたちは「排除」を「目的」として、語っているのではありませんよね。


 貴エントリー「社会的には強毒性」には、ワタシの捜査ミスで貴記事の内容と関係の薄いエントリーをTBしてしまいました。すみませんでした。
Unknown (貝枝五郎)
2009-05-27 19:21:10
たぶん『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版)だったとおもうんですが、マインドコントロールに関する本において、目的は手段を正当化するという主張が破壊的カルトの論理として例示されていたと記憶しています。参考までにどうぞ。
Unknown (こねこ)
2009-05-27 22:27:42
「抵抗勢力が悪い!」

「カイカクだ!」

「あれ?仕事ないよ?年金下りないよ?なんかやばくね?」

「抵抗勢力が悪い!」

(以下略)

この無限ループ自体が目的化してるんじゃないでしょうか(苦笑)。いつまでも政治ごっこをしていたいお年頃なのかもしれませんね。
Unknown (非国民通信管理人)
2009-05-27 23:34:25
>dr.stoneflyさん

 そうなんですよね、私などは民主党よりもむしろ、民主党を推してきたブロガーに失望させられることが多いくらいでして…… 「人は変われるんだ」というのは間違いではないのでしょうけれど、時にはより悪い方向に変わることもありますし、河村たかしが「変わる」かどうかは、何か兆しでもないと期待しにくいところでもあります。歴史修正主義を「誤りであった」と認めて公式に撤回するなどすれば、「変わる」ことに期待の余地も出てくるのでしょうけれど。「民主党であれば」「官僚と対立していれば」歴史修正主義者であろうと構わない、こういう世論が続くうちは河村が「変わる」動機は出てこないわけで、私としては世論の側に「変わる」ことを期待したいところです。

 TBの件は、お気になさらないで下さい。(ブログ上の関係とはいえ)お互いに見知らぬ相手、というわけでもないですから。関連性は緩く考えていただいて結構です。

>貝枝五郎さん

 目的は手段を正当化する、まぁ古典的な言い回しであり、常套手段でもあるのでしょうね。それがカルトに止まっているようならまだマシなのですが。

>こねこさん

 それはありますね。日本人の戦争に対する感覚もそれに近いと感じるのですが、どうも当事者というより評論家気分で、何かと「戦う」つもりになるのが好きなのでしょうか。犯人(悪者)を捜して、それを叩く、何かのためにそうするというより、叩くことをそのものを楽しんでいるような……
Unknown (GX)
2009-05-28 18:02:38
>それで失敗したら? いつものことです。「官僚(抵抗勢力)が悪い!」と。
 「改革者」が無茶な案を出そうとも通すよう働きかける上に、その過程で「抵抗勢力」の力を弱体化させてしまった結果にかかわらずこれですからね。こんなことが繰り返された結果、日本が滅んでしまったとしても「抵抗勢力」が原因とされそうです。
Unknown (非国民通信管理人)
2009-05-28 22:39:24
>GXさん

 ある意味「人のせいにする」文化なのかも知れません。いつも結局は「悪者」を犯人に仕立て上げるばかり、脳内で作り上げた「敵」と戦うばかりで、「自分」は変わろうとしないようですから。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

編集雑記・小ネタ」カテゴリの最新記事