ホテルの忘年会はベンチャーっぽくない。社内コミュはスナックで

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freeeは6月中旬、五反田のスナックで、社内の交流イベントを企画。写真は、1日マスターを務めた共同創業者の横路隆CTO。看板やコースターは、オリジナルアイテムを作った。

出典:freee

急成長中のフィンテック企業「freee」は社内コミュニケーションに課題を感じたときに、スナックに目をつけた。

freeeの佐々木大輔CEOは、Business Insider Japan主催のスナックイベントに登壇。会場となった東京・赤坂の「スナック玉ちゃん」オーナーの玉ちゃん(玉袋筋太郎さん)との異色のコンビで、スナックの可能性を語った。

Tシャツ、短パン、ビーサンの佐々木さんと、柄シャツと黒ズボンの玉ちゃん、対照的な2人だが、実は、ビジネスとスナックは相性が良い。

スナックでクリームソーダ

スナックのイメージと程遠い起業家の佐々木さん。まずはアウェイな場所での自己紹介から。

「中小企業の経理を自動化できるシステムを全国で100万件以上、導入しています。先ほど、スナックのママたちがガラケーを使っていると聞いて、まだまだ営業できていないなと思いました」

すると、玉ちゃんは「スナックは、手付かずの自然ですよ」と合いの手を入れた。

佐々木さん

社員が続々と増える成長中のベンチャーには、社内コミュニケーションが課題だ。スナックに目をつけた理由を話す佐々木さん(右)。

そして、佐々木さんは自身のスナックデビューについて、語った。

佐々木さん(以下、佐々木)幼稚園ぐらいのときに、おじいちゃんは必ず夕方ぐらいから、スナックか雀荘に行っていました。夕飯が近くと、大輔、おじいちゃんを迎えに行きなさい』と家族に言われて、スナックや雀荘に探しに行っていました。

玉ちゃん:佐々木さんの血液に、スナックと雀荘が入っているんですね。子どもながらに「怖い世界だな」と思ったんですか。

佐々木:それが、毎日クリームソーダをくれるんですよ。

玉ちゃん:完全に餌付けされているじゃないですか。その一杯が嬉しいよね。雇われ店長のチェーン店じゃ出せないから。

佐々木:次は新卒で会社に入ったとき、上司の行きつけのスナックのママが、骨折したから、お店を手伝ってくるように言われました。残業しなくていいからと、1週間、お店に入って手伝いました。面白かったです。

玉ちゃん:さっき言った社員教育に合いますね(*)。

社員教育(*):「新入社員を合宿に連れていくよりも、2週間、スナックでバイトをした方が、人間のステージが上がる。いろんなお客さんがくるから、前後左右、ボクシングのようにできる。経験すれば、受付だって、何でもできる」(玉ちゃん、イベント冒頭の発言)。

地元五反田の資産を生かす

freee

freeeの臨時スナック。客は新入社員ら、マスターは役員。これからは毎月、開く。

提供:freee

浜田編集長(以下、浜田):ここ数年、スナックが注目され、SHOWROOMの前田裕二さんを取材すると、ビジネスモデルとしてスナックを研究したと。

そして、今、若い女性たちもスナックに行ってみたいという人が増えてます。

関連記事:スナック女子急増中

オフィスでスナックを導入して、コミュニケーションを取るなど、手段として注目する企業も増えてきました。freeeが注目した理由は何ですか。

freeeは6月中旬、五反田のスナックで、CTOの横路隆さんが1日マスターを務め、客として社員をもてなした。(関連記事:都心のスナックは最高のビジネス活性化装置である )

佐々木:会社が約500人の組織になり、社内のコミュニケーションを活性化しようと、スナックを企画しました。会社は五反田にあります。

玉ちゃん:言ってみれば、スナックの聖地ですよ。

佐々木:(自社が)五反田に3年前に引っ越して来て、その後、ベンチャー企業が五反田に集まってくるようになりました(街は盛り上がっているけれど、)五反田の資産を生かせているんだろうか、と。ローカル色を出した企画を考えた時に、そうだ、スナックだと思いついたんです。

玉ちゃん:商店街の会長たちに聞かせたいよ。

「ホテルの忘年会はベンチャー企業感がない」

スナック

スナックとビジネスの可能性を質問する浜田編集長(左)。

佐々木:昨年、会社の忘年会の会場を探したとき、広い会場がなかなか見つからないんですよ。それで、苦渋の選択でホテルで開いたんです。これがちょっとね、ベンチャー企業感がなくなってきたなと。ホテルは、お客様向けイベントには良いのですが、社内向けには密着感が足りなかった。

玉ちゃん:わっしょいわっしょいがないね。

佐々木:私は毎月、新しく入社する社員と飲み会をしていますが、例えば15人で居酒屋に行くと、話せない人もいて、席替えも大変。新しいフォーマットを探しているときに、社内でスナックという意見が出たんです。五反田らしいし、キラキラ感がない。今の課題感にマッチしているなと思いました。

玉ちゃん:全日本スナック連盟を立ち上げた身としては、やっと時代が追いついたという感じだね肝臓を傷めてもね。

カウンターをはさんでマスターは役員、客は社員

freee

会社のマークのツバメにちなんで、「燕」ボトルを手にする横路隆CTO。6月中旬のスナック企画で。

提供:freee

佐々木:横路はエンジニアなので、普段は、すごく集中してPCに向かっています。(1日マスターをして)面白いのが、社員がばっちりお客さんモードになるんです。「最近、横路さん、成長したよね」とか、会社で言わないようなことを言ったり。ツッコミが入れやすいんじゃないかと。

玉ちゃん:カウンターに並ぶと、みんな脇が甘くなって、ツッコミやすくなっちゃう。(役員も)意外とツッコマれた方が楽になるんですよ。ガチガチな人だと思われるのも損じゃないですか。

佐々木:カウンターの隣の人がマスターに話しているのも聞こえるから、聞いた人が、自分もこんなこと言っても、“あり”なんだと。(居酒屋などの)別々のテーブルだと、隣の会話は伝わりませんから。スナックは今後も、毎月開催したいと思います。

玉ちゃん:今月は社員の誰かがママをするとか、順番にやるのも面白いよね。売上票を作ったりして、そこで大出世する人も出てくるかもしれない。

佐々木:看板まで作っちゃいました。会社のマークがツバメなので、スナック燕です。

玉ちゃん:うれしいね、こういう社長がいて、日本は安泰だよ。

freeeがスナックとM&A!?

M&A

「ブルーオーシャン」のスナックで、ビジネスの開拓なるか。「M&Aを結んでね」と玉ちゃん(左)。拍手を交わす佐々木さん(右)。

玉ちゃん:俺の夢は、キッザニアにスナックを持っていくことなんだ。子どもたちがスナックごっこをする中で、ママになったり、お客さんになったり。「あんたは、オレンジジュース、あんたブドウね」と。人との譲り合いも分かる。ただ、キッザニアは大手企業が、たくさん入っているから、入れないんだ。佐々木社長、ここは一つ、よろしくお願いします。

浜田:佐々木さんは、スナックを社内コミュニケーションに使うだけじゃなく、これから全国に7万軒あるスナックに営業もできますね。まずは、ガラケーのママにスマホに変えてもらって。そう考えると、スナックは、すごいブルーオーシャンですよ。

玉ちゃん:ぜひ、日本スナック連盟とね、freeeがM&Aを結んで、進めていきましょう(笑)。

(文・撮影、木許はるみ)

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