〈なんとかしないと、プリズムフラワーが見つかっちゃうニャ!〉
〈なんとかって、どないすればいいんや!〉
〈そうナツ! いいこと、思いついたナツ!〉

上からシリーズ最新作「スイートプリキュア♪」のハミィ、「フレッシュプリキュア!」のタルト、「Yes!プリキュア5GoGo!」のナッツ。プリキュアをサポートする妖精たちだ。

21人のプリキュアだけでなく、17人の妖精も全員集合! みんな特徴的な語尾なので、文章だけでも誰が誰だかよくわかる。でも、プリキュアたちはそうはいかない。「タコはいやベリー!」とかしゃべらせるわけにもいかないからねえ。キュアベリーファンが泣いちゃうよ。
〈メロディに、サーロイン、ムシバーンのキックがせまる! あまりの速さに、よけきれそうにないメロディ……と、ピーチ、ブロッサムがメロディの前にバッと飛び出て、2人のキックをガードした。
「はぁっ!」
つづいて、ブラックのパンチがムシバーンに、ブルームのキックがサーロインに決まる〉
おお、入り乱れてのアクションシーン! 映像が浮かんでくるよ。


「映画 プリキュアオールスターズDX3 未来にとどけ!世界をつなぐ☆虹色の花」小説版だ。「プリキュア」シリーズ初のノベライズで、著者は「DX」シリーズで脚本家を務めている村山功。映画の脚本家が書いているから、ここまで鮮明にシーンが浮かんでくるんだな。

「スイートプリキュア♪」の響(キュアメロディ)と奏(キュアリズム)が歴代プリキュアたちと出会い、よみがえった歴代劇場版のボスキャラクターたちと戦うためにプリキュアに変身。と、物語は映画とほぼ同じ展開になっている。
小説として読んでもひき込まれる。
でも、映画を見終わったあとに読むと、あのキャラはこう思っていたのかって確認できて一層楽しめるかも。

例えば冒頭では、響と奏がショッピングモールにやってきた理由が細かく語られている。
プリキュアたちがメンバーを、主人公中心のピンクチーム、サポートメンバー中心のブルーチーム、個性派ぞろいのイエローチームにシャッフルされて敵たちと戦っていくストーリーだから、当然響と奏はバラバラになる。響って、映画だとハミィ(語尾に「ニャ」ってつける妖精)とはじゃれあっていたけど、奏とは実はそこまで絡んでないんだよね。でも、敵の策略によって、バラバラになったプリキュアたちが攻撃をかいくぐり、なんとか合流したあとにはこんなシーンがある。
〈そして、響が、すわりこんでいる奏に手をさしのべる。

「奏、まだ、力は残ってるんだから……!」
「そうね、響! 私たちがなんとかしないと!」
ほほえみあう奏と響。ハミィが、響の手を取る〉
『小説 プリキュアオールスターズDX3』は文章によるオーディオコメンタリーなのだ。

そして、「DX3」レビューでも言ったことだけど、あえてもう一度言いたい。
キュアルージュの活躍っぷりが映画以上!
ルージュがいるのはイエローチーム。止まったマス目に書いてある条件をクリアしないと先に進めないスゴロクエリアに飛ばされたイエローチームは、敵のズルにも負けずに乗り越えていく。
映画ではルージュは、敵のインチキゲームに付き合わされ、「仕方ないから全部クリアしてやろうじゃないの!」というスタンスなのだが、小説版では、〈この完璧なゲーム運び……今の私たちってメチャクチャいい感じ! もしかしてこの波に乗ってスゴロククリアしたほうが、ここから出るの早いんじゃ!?〉とノリノリ。

野球対決のシーンでルージュがバッターのとき、〈持っていたバットを投げすてて、ボールをキック、大ホームラン!〉ええー!? たしかにルージュの必殺技は火の玉を蹴り出すファイヤーストライクだけど、そこまでやるかー!
〈だれがバットで打てって言ったのよ!〉だって。映画本編や、「5GoGo」36話で敵が用意した罠ゲームに対して、インチキであることに怒っていたのはもう昔。すっかり応用が利くようになって……俺はうれしいよ!

最後に虹の力で戦うシーンを読んでいるとき、本に貼っていたカラーふせんがちょうど虹のように見えて、「俺もいまいっしょに戦っているんだ!」と目頭が熱くなってしまった。劇場ではミラクルライトでプリキュアを応援できるけど、小説だとそういうギミックはないよなあって思っていたから、この展開は不意打ちだよー、自分でやったんだけどね……。(加藤レイズナ)

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