焦点:日銀は国債買い入れ5─10兆円増額、基金買い入れ期限延長へ

焦点:日銀は国債買い入れ5─10兆円増額、基金買い入れ期限延長へ
4月25日、日銀は27日に開く金融政策決定会合で、デフレ脱却に向けた動きを加速させるため、追加の金融緩和を実施する。写真は都内の日銀本店前で満開を迎えたサクラ。10日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 25日 ロイター] 日銀は27日に開く金融政策決定会合で、デフレ脱却に向けた動きを加速させるため、追加の金融緩和を実施する。長期国債を中心に資産買入基金を5─10兆円増額し、基金の残高目標を70─75兆円に拡大する公算が大きい。
日銀は2月、消費者物価指数の前年比上昇率について当面1%を目指す事実上のインフレ目標を導入しており、緩やかな上昇基調にある物価の流れを追加緩和で後押しする。2012年末としている基金の買い入れ期限を増額規模に応じて最大で半年間延長する見込みだ。
今回の会合で日銀は、今後2年間の経済・物価見通しを示す「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)を公表する。その中で2013年度までの消費者物価指数(除く生鮮、CPI)の見通しを示す。12年度は今年1月に示した前年度比プラス0.1%から0.3ポイント程度上方修正する公算が大きいが、13年度は同プラス0.5%から小幅上昇のプラス0.6%程度にとどまる公算が大きく、プラス1%には届かない見込み。ただ、物価は2009年以降緩やかに上昇基調にあり、欧州債務問題が金融システム不安を招く懸念が足元で後退し、国内では東日本大震災からの復興需要が顕在化するなど前向きな動きが見え始める中で、追加の金融緩和で経済・物価を後押しする。
会合直前の24─25日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、今後の追加緩和策を示唆するメッセージで市場が大きく変動する可能性があり、日銀は市場動向をギリギリまで見極めて増額規模を判断する。基金増額に伴い、残高目標を確実に達成するため、買い入れる長期国債の残存期間を3年以下に1年延長する議論も浮上している。
展望リポートでは、「中長期的な物価安定の目途」の導入を踏まえ、デフレ脱却に向けた日銀の強い決意をあらためて示すとともに、成長力の強化に向けた官民の努力の必要性も指摘する見通し。日本経済については、新興国を中心とした世界経済の成長の高まりや、震災の復興需要の強まりによって2012年度前半にも「緩やかな回復経路に復していく」との成長シナリオを維持する。一方、先行きリスクとして、欧州債務問題が今後の世界経済に与える影響や、イラン情勢など地政学リスクが根強い国際商品市況、原子力発電所の全停止が見込まれる中での電力需給の問題などを指摘する見込みだ。2012年度、2013年度の実質国内総生産(GDP)見通しは、国際通貨基金(IMF)が17日に世界経済見通しを上方修正したことなどもあり、小幅の改善となる可能性があるが、大きな変更にはならないとみられている。
(ロイターニュース 伊藤純夫 竹本能文;編集 石田仁志)

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