SAP、4600億件のデータを数秒で分析可能なBIアプライアンス全データをメモリ上に展開することで実現

» 2010年12月07日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 SAPジャパンは12月7日、リアルタイム分析アプライアンス製品「SAP High-Performance Analytic Appliance」(HANA)の出荷を開始したと発表した。SAPジャパン Co-innovation Lab Tokyo イノベーションデザイン&デベロップメント担当 馬場渉氏は、「10倍〜数十倍にデータを圧縮した後にすべてのデータをメモリ上に展開することで、高速な検索・分析スピードを実現した。米国の事例では4600億件の実データを数秒で検索・分析できており、なおかつそのハードウェアコストは4000万円程度だと聞いている。これは従来の数分の1に収まるコストで、圧倒的なROIを実現できる点が特徴だ」と説明した。

イルグ氏写真 SAPジャパン 代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏

 HANAは、独SAPが5月に発表したリアルタイム分析を可能にするアプライアンス製品。SAPがアプリケーションや分析エンジンなどを提供し、HPやIBMなどパートナー企業がハードウェアを提供し、SAP認定のアプライアンス製品として出荷する。標準構成では、「インテル Xeonプロセッサー 7500番台」を64コア、メモリを2テラバイト搭載。インメモリおよび超並列処理技術によって、従来製品と比較して高速な検索・分析能力を提供するという。

 具体的にHANAは、サイベースのレプリケーションエンジン、SAPのインメモリエンジン、ビジネスオブジェクツのリアルタイム検索・分析エンジン、サイベースのモバイルエンジンを組み合わせて構成されている。

 SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部長 兼 プロセス・製造産業営業本部長 福田譲氏は、「HANAは最初からHDDを排除し、インメモリだけでの分析を念頭に開発したアプライアンス。最近では、競合他社もメモリ上にキャッシュを置いて高速化を図るケースなど、さまざまな手法で高速化を図っている。しかし、HANAは全データをメモリ上に展開しており、メモリ上で検索・分析する点が異なる。メモリを並列的に追加することで、超大量データにも問題なく対応可能だ。米国の事例では、4600億件の実データで稼働している実績がある。日本の場合、1億件のデータを超えるユーザーは少ない。HANAで十分にリアルタイム分析を実現できるはずだ」とコメントした。

イメージ写真 HANAのアーキテクチャ。今後、他社製品にも公開されていく

 今回リリースされた「HANA 1.0」では、SAP ERPのデータベースをHANAでレプリケーションし、そのままインメモリ化することでリアルタイム処理機能を提供する。次バージョンの「HANA 2.0」では対応範囲を広げ、BIやDWHの範囲においてもインメモリ技術を提供する予定。

 SAPジャパン 代表取締役社長 ギャレット・イルグ氏は、「HANAのインメモリ技術は、ソフトウェアとハードウェアが融合する歴史的転換点だ。当社は、インメモリコンピューティングやオンデマンド、モビリティなどの新事業を伸ばし、現在の売上高1100億ドルから、2015年には2200億ドルまで伸ばしたい。まずは、当社のERP既存ユーザーを対象に営業・販売を開始し、来年度に30社導入を目指す。そして、数年後には既存ユーザーの大半をHANA化したい」と語り、抱負を示した。

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