見えているように写真を撮るのが難しい理由。

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    見えているように写真を撮るのが難しい理由。

    よくカメラの説明をする時に、人間の目を例に説明しますよね。

    例えば、絞りをしぼることは目を細めることと一緒!とか。

    カメラと人間の目の仕組みってどの程度一緒で、どこが決定的に違うんでしょうか?

    Pixiqというサイトに記事があったのでご紹介します。

    カメラの部品を人間の目の器官に対応させると、こんな感じです。

    • 角膜→レンズ
    • 虹彩、瞳孔→絞り
    • 網膜→デジタルカメラの撮影素子

    仕組み的に同じ所と違う所を見てみます。

    同じ所

    像を結ぶ:カメラはフィルムかセンサーチップ上に、目は網膜上にという違いはありますが、像を結びます。調光:カメラも目も入ってくる光の量を調節します。カメラでは絞りを調節することで、目では虹彩を調節することで、入ってくる光の量を調節します。

    違う所

    決定的に異なるのは、人間は主観的に光を扱うということです。

    目は脳と協力して、我々が知覚するイメージを作りだします。

    目は焦点を絶えず動かして脳に情報を送ります。

    そして脳ではそれぞれのカラーバランスなどを随時調節して再構築します。

    簡単に言えば、私達の目と脳はそうであるべき画像を知覚しています。

    一方でカメラはレンズの焦点、光感度など全てが規定されています。

    デジタルカメラの撮影素子は、1画素あたりの光感度に変化をつけることができませんが、人間の網膜ではそれを行っています。

    目とカメラの違いを際立たせるために、ISO感度について考えてみましょう。

    ISO感度とは。

    カメラがどの程度弱い光までを記録できるかを示す値です。

    ISO200などと表記されます。数字が大きくなればなる程、暗い場所での撮影が短いシャッタースピードで可能です。同じ明るさの場合、ISOを400に設定すると、ISO100に設定した場合の1/4のシャッタースピードで撮影することができます。

    ということは、大きい方が良い?とも思いますが、感度が大きくなればなるほど、ノイズが生じます

    ISO感度の概念を人間に適用すると?

    カメラと違って、人間の目にはISOレベルのように定義された数字がありません。

    ただ人間の目もカメラと同じように光感度の調節を行い、対象物を見ています。

    15秒間暗い環境にいると、目の感度は上がります。実験によると、夜には昼の600倍も光感度があるそうです。

    また、人間は星の光や太陽の光のまぶしさを感じることができます。太陽光は新月の夜の明かりに比べて10億倍も明るいのですが、我々はそれに対応することができるのです。

    カメラでISO感度について考えるときは、シャッタースピードと連動しています。人間はどうでしょうか?

    人間の目におけるシャッタースピードについて考えることは非常に難しいですが、とりあえずアニメーションについて考えるところから始めることにしましょう。

    絵が足りないアニメーションを見た人なら誰でも、つっかえながら動いているというのを感じた事があるでしょう。

    例えば、1秒間に1つの絵(1fps)の動画を見たら、それは上手く動いているように見えないはずです。つまり人間の目のシャッタースピードは1秒よりは短いのです。

    この問題について、より深く知りたい方は、How many frames per second can the human eye see(1秒間に人間が見る事ができるフレーム数は何枚か)という記事にいってください。

    何枚か?という問いではありますが、この記事の中には結論は書いてありません。何枚知覚できるかは人それぞれだからです。

    私達は真っ暗な森の中で1時間半もの間、じっとして何かを凝視していても、何も見えません

    しかしカメラなら何か映るでしょう。(もちろん1時間半では十分ではない可能性もありますが。)

    カメラでは露光を必要なだけ長くすることができます

    110202eyeandcamera2.jpg

    これは6ケ月間シャッターを開いて撮った写真です。

    これは人間の目ではできないことです。

    つまり、人間はわずかな光を長時間にわたって捉え1つのイメージに統合することはできません

    目について話す時、シャッタースピードというのは動画には関係しますが、個々のイメージという観点からはあまり意味がありません。

    ということで、光感度についてのみ考えることにしましょう。

    人間の目は、光感度については格段に良い性能を放ちます。

    ノイズについて考える必要もありません。

    これは目が荒い映像を送らないからではなく、脳が映像をカバーするからです。(盲点が知覚できないのと同じです。)

    どのくらい格段によいのか、試しに人間の光感度を数字で表してみることにします。

    カメラのISOで一番低いものは25ですから、明るい太陽光で人間の目のISOを25とするなら、ちょっと暗いときには600倍でISO15000。最大に暗い時には15000倍なので、ISO375000になります。

    高感度な高級カメラNikonD3Sの最大ISOは12800です。(しかもこのカメラの最低ISOは200です。)

    光感度に関して、いかに人間の目がカメラの遥か上をいっているか分かると思います。

    またダイナミックレンジについても人間の目と脳は素晴らしい働きをします。

    人間の脳は目が捉えた情報をその都度再構築できるので、カメラでいうところのHDR合成(ハイダイナミックレンジ合成)を行うことができるからです。

    光感度とダイナミックレンジに関して、カメラが人間の目を超えるのは難しいでしょう。

    つまり、目の光感度の調節域はカメラとは比べ物にならない。

    加えて、目は脳と連動しているからデジカメ+パソコン処理みたいな感じだということですね。

    見たままを写真に撮るのが難しい理由が分かった気がします。

    でも一方で、露光を長くして、見えないものを写真に撮れる面白さもありますよね。

    そして視力が0.1未満の私にとっては、焦点を合わせるのはカメラの方が圧倒的に上手だったりもします。

    [Pixiq]

    mio(米版