「Nexus 7」ファーストインプレッション

軽快な動作、高いコストパフォーマンスのAndroidタブレット


本体前面

 Nexus 7は、Google自ら展開するAndroid端末のブランド「Nexus」シリーズの最新モデルであり、シリーズ初のタブレット端末。最新OSであるAndroid 4.1を搭載し、電子書籍や音楽、動画といったコンテンツを楽しむためのモデルとして位置付けられている。

 端末自体は2012年6月27日に米サンフランシスコで開催されたGoogleの開発者向けイベント「Google I/O」で発表されており、9月25日から日本でも正式に発売されることになった。

 端末の価格は1万9800円で、Googleの配信サービス「Google Play」からオンラインで購入できるほか、エディオン、ケーズデンキ、コジマ、上新電機、ビックカメラ、ベスト電器、ヨドバシカメラといった店舗でも10月2日に発売。また、ISP各社での取り扱いも行われる。ただし、内蔵メモリは通常販売モデルが16GBで、ISP各社が取り扱うモデルは8GBと容量が異なる。

 

7インチで標準的なサイズ、クアッドコアのTegra 3は十分な速度

 本体サイズは120×198.5×10.45mm(幅×高×厚)、重量は340g。同じ7インチのタブレット「GALAXY Tab 7.7 Plus SC-01E」は本体サイズが133×197×7.9mm、重量は約345gで、7インチタブレットとしてはほぼ標準的なスペック。超軽量を誇る「MEDIAS TAB UL N-08D」と比べるとさすがに手にずっしりと重みを感じるが、7インチタブレットとして使うには標準的なサイズと言えるだろう。

 物理ボタンは本体右側面の上部に電源ボタン、音量ボタンを備えるのみで、「ホーム」「戻る」「マルチタスク」は画面下部にソフトボタンを搭載。外部接続インターフェイスは本体下部にイヤフォンジャックとmicroUSBポートを備え、microSDカードスロットは非対応。バッテリーも取り外しできない一体型とシンプルな作りになっている。バッテリー容量は4325mAh。


右側面に電源ボタン、音量ボタン本体下部にイヤフォンジャックとmicroUSBポート

 

 背面は下部にスピーカーを搭載するが、カメラは本体前面に120万画素のインカメラを備えるのみで背面カメラは非搭載。通信はIEEE802.11b/g/n準拠の無線LANのみで、3G通信は非対応。ワイヤレス機能としてはGPS、Bluetooth 3.0+EDR、NFCもサポートする。


本体背面。カメラは非搭載付属の充電アダプタ

 

 CPUはNVIDIAのTegra 3(T30L)で、1.3GHz駆動。クアッドコア動作時は1.2GHzで駆動する。ディスプレイの解像度は1280×800ドット(WXGA)、216ppi。傷に強いというCorningのFit Glassを採用し、10点を認識するマルチタッチとなっている。

 「Quadrant Professional Edition」のベンチマーク測定結果は3671で、同じクアッドコアのTegra 3を搭載している「ASUS Eee Pad TF201」をやや下回る程度の結果となった。一方、「AnTuTu Benchmark」のトータルスコアも1万を超えており、クアッドコア搭載Androidとしてはまずまずの数値だ。


Quadrantの測定結果

 

「AnTuTu Benchmark」V2.9.2 測定結果
 RAMパフォーマンス2087
 CPUの整数性能3598
 CPUの浮動小数点演算性能2697
 2D描画298
 3D描画1245
 データベースのIO545
 SDカードの書込速度150
 SDカードの読込速度193
 トータルスコア10813

 

キビキビと快適に操作が可能

 実際の操作感は後述するAndroid 4.1の効果もあって非常にキビキビと快適な操作が可能。ホーム画面の切り替えやアプリケーション一覧表示、ブラウザ動作なども非常にレスポンスがよく気持ちよい操作が可能だ。

 Nexus 7の特徴の1つは、Android OSの最新バージョンである「4.1(Jelly Bean)」を搭載していること。現行のAndroidスマートフォンやタブレットで多く採用されている4.0(Ice Cream Sandwich)に比べると小数点第1位のバージョンアップのため見た目で大きな変化はないが、実際に利用すると細かな点で使い勝手の向上が図られている。

 ホーム画面ではアプリの新着情報などを表示する通知トレイをリニューアル。通知トレイでメールの本文や本体に保存した画像、Google+で投稿された写真をプレビュー表示するなど情報の表示量が向上している。なお、4.1では通知トレイから不在着信に電話をする機能も搭載されているが、電話機能を持たないNexus 7では試すことができなかった。このほか縦横回転のロック機能、設定画面へのショートカットも通知トレイに搭載されている。


Nexus 7のホーム画面通知トレイはメール本文のプレビュー表示が可能に

 

 ウィジェットも改善が図られた。これまでホーム画面にウィジェットを配置する場合は、ウィジェットのサイズに合わせてホーム画面のスペースを予め確保しておく必要があったが、4.1では新規に設置したいウィジェットの大きさや動きに合わせて既存のウィジェットが動くようになっており、あらかじめスペースを確保する必要がない。また、ウィジェットのサイズよりも設置できるスペースが小さい時は、ウィジェットを自動的に縮小して設置できる。縮小されたサイズ次第では表示エリアが小さすぎて利便性が下がる可能性もあるが、限られたホーム画面の中でウィジェットのサイズを自由に変更できるのは嬉しい改善だ。


設置したいウィジェットに合わせて既存のウィジェットが移動右が自動で縮小されたカレンダー。表示領域を小さくできる

 

 4.1では「Project Butter」というプロジェクトの元、タッチ操作自体も改善が図られており、画面の描画処理が60fpsに向上、画面描画のVsync同期処理や描画パイプラインのトリプルバッファリングによって、より滑らかな操作が可能になったとしている。

 4.1の新機能として「Google Now」も搭載された。Google Nowはユーザーの行動に合わせて天気や混雑情報、電車情報などを自動で通知する機能。Googleの検索窓をタップしたり、ホームボタン表示エリアを長押しして上方向にスワイプしたりすることでGoogle Nowを起動できる。


Google Now設定画面

 

 Google NowをオンにしたGoogle マップで目的地を検索すると、位置情報を利用して目的地までのアクセス時間や乗換え候補を表示。駅に近づくと駅の時刻表が表示され、電車での移動中は周辺で上映されている映画情報が配信されるなど、ユーザーの行動に合わせて情報が「降ってくる」イメージだ。


位置情報に合わせて自動的に関連情報を表示

 

 取得する情報は「交通状況」「天気」「次の予定」などカテゴリごとに設定が可能。「スポーツ」などはまだ日本未対応で設定できるチームに日本名はなかったが、スポーツファンにとっては便利に感じるユーザーもいるだろう。また、平日昼間に一定時間いた場所を自動的に勤務地として認識するようで、翌日には自宅から勤務地までのルートも自動でサジェストされた。正しい勤務地を自分で設定することもでき、これも非常に面白い機能だ。


Google Nowで設定できる項目

 

 Android 4.0およびそれ以前に搭載された機能も向上が図られた。NFCを利用してAndroid端末間でデータをやりとりできるAndroid Beamは、画面をタップするだけで写真や動画の共有が可能になった。顔認証によるフェイス アンロックも解除時にまばたきを要求することができるようになり、写真でのロック解除を防ぐなどセキュリティ向上が図られている。


地図情報をAndroid Beamで送信。タッチ操作で相手に情報を送ることができるフェイス アンロックでまばたきの要求が可能に

 

 地図アプリは、特定のエリアでパノラマ写真を端末の向きに合わせて表示できる機能を搭載。地図検索時に「中を見る」と表示される店舗などは、設定画面から「コンパスモード」を選択すると、端末を動かすことでまるで店舗内にいるような感覚でパノラマ写真を表示できる。


「中を見る」で店舗内の画像を閲覧できる「コンパスモード」をオンにすることで端末の向きに合わせて画像がアニメーションする

 

 Nexus 7の発売に合わせてGoogleのコンテンツ配信サービスも拡充。新たに電子書籍サービスとして「Google Play ブックス」が日本国内で利用可能になったほか、動画配信サービス「Google Play ムービー」はレンタル方式に加えてコンテンツの購入が可能になった。


Google Playでは書籍も購入できるようになった

 

 Nexus 7には夏目漱石の「こころ」、芥川龍之介の「藪の中」、太宰治の「人間失格」のほか、英語の書籍として「Frankenstein, or, The Modern Prometheus」「Pride and Prejudice」「Wonderful Stories for Children」などプリインストール。そのほかの書籍についてはGoogle Playの「書籍」カテゴリからダウンロードできる。

 書籍の閲覧はNexus 7のスペックも手伝って非常に快適。ページをめくるアニメーションも非常にレスポンスが早く、本を読んでいる以上のスピードで読み進められる。メニューからフォントサイズや行の高さ、書体なども変更可能で、画面右上をタッチすることでしおりを設定できるなど、基本的な電子書籍リーダーの機能は備えていると感じた。


プリインストールされていた書籍書籍を開いたところ
めくるアニメーションもスムーズフォントサイズなどを設定できる

 

 ただし、電子書籍サービスとしての「Google Play ブックス」はまだ始まったばかりという段階。取り扱う書籍は無料だけでなく有料のものもあるが、現状の冊数はきわめて少なく、話題の映画作品「ハンガー・ゲーム」上下巻が用意されているものの、それ以外は有料書籍はコミックやビジネス書などが中心で点数も少ない。現状のラインアップはまだサンプルレベルといった印象だ。


Google Playの取扱書籍

 

 対応フォーマットはPDFとEPUBだが、別のサービスでダウンロードしたEPUBは開くことができなかった。また、Google Playで販売されているにもかかわらず、ダウンロードすると画面が真っ白で読めない書籍があるなど、現時点では、細かいところでまだまだと感じさせられる。

 動画コンテンツも「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」をプリインストール。これらの動画サービスはレンタル方式で以前から展開していたこともありコンテンツのラインアップは豊富で、洋画はもちろん「仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ」「機動戦士ガンダムUC」といった特撮・アニメ系もラインナップしている。動画配信サービスとして基本的なコンテンツは取りそろえているという印象だ。

 プリインストールアプリもGoogleが展開するアプリが中心で、7インチの1画面に収まる程度とシンプル。なお、ブラウザについてはAndroid 4.0以上ということもあり、Chromeがプリインストールされている。


プリインストールされている「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」プリインストールされているアプリ一覧

 

 日本語文字入力はGoogle日本語入力ではなくiWnnを搭載。フリック入力や日本語の予測変換機能に加え、英語の予測変換機能も利用できる。キーボードもQWERTYとテンキーを縦画面、横画面に応じて設定でき、どの向きどの文字種でも常にテンキーを使う、という設定も可能だ。


文字入力はiWnniWnn設定画面
iWnn入力画面

 

高いコストパフォーマンス、OSバージョンアップへの追従も期待

 1万9800円という2万円を切る価格ながらクアッドコアCPUや最新のAndroid 4.1を搭載するNexus 7。動作も非常に軽快で使いやすく、この値段でこの性能は非常にコストパフォーマンスが高いと感じる。キャリア経由の端末ではなくGoogleが自ら販売するということで、OSのバージョンアップもキャリアの対応を待たずに利用できるだろう。

 一方で、同時に始まった電子書籍サービスはまだまだ始まったばかりで、実際に利用するにはまだ厳しい段階。Nexus 7がこうしたコンテンツを楽しむタブレットとして位置付けられているだけに、電子書籍サービスの充実も合わせて望みたい。

 




(甲斐祐樹)

2012/10/1 17:11